恥をかけば成功に近づくアメリカ市場
日本は恥の文化と言われ、出来るだけ恥をかかないように行動します。
しかしアメリカでは恥をかいた分だけ成功に近づくように思えます。
日本企業の特徴として、会議に会議を重ね、失敗しないよう細心の注意を払いながら市場に製品を投入します。
多くの日本人は「自社の製品を世に出すときは出来る限り恥をかきたくない」と考えているからです。
これは、世界に誇る日本文化の良い一面であり、日本の製品が世界に誇る品質となった理由の一つと思われます。
しかし、アメリカ市場においては市場から文句を言われそうな段階の製品や、完成に至っていなくても市場に製品を投入します。
日本人から見ると「恥ずべきと考える行いを敢えて実施している」ように見えます。
実は無謀とも言えるこの行動力こそ、アメリカ市場で成功する方法であります。
■日本人の特徴
日本人は恥をかくことを極端に嫌います。
「恥をかくような死に方をするな」という武士道の精神にもみられるように、日本人は昔から恥をかかないようにするための配慮をし、行動に移します。
米国の文化人類学者ルース・ベネディクトによると、日本の文化を、内面に善悪の絶対の基準を持つ西洋の「罪の文化」とは対照的に、他者からの評価を基準として行動が律されている「恥の文化」として類型化しました。
日本人の行動様式に見られる、恥をかかないとか、恥をかかせるというように「恥」の道徳律が内面化されていて、この行動様式が日本人の文化を特色づけてます。
反対に西欧人は罪の内面的な自覚に基づいて善行をなすのであり,罪を犯した人間は、その罪を包まず告白することによって重荷をおろすことができるとした。つまり恥の文化と比べて,道徳の標準における個人の内在化の度合いが強いことを意味してます。
アメリカでは、もし新たな事にチャレンジし、失敗して会社に迷惑をかけたとしても、包まず周囲に告白することで心の重荷を降ろすことができます。
簡単に言うと、皆に「ごめんなさい」をすると、自分の気持ちが楽になり、直ぐに次の行動に移せるという事です。
日本では、周囲に迷惑をかけてしまいますと、謝罪しても気持ちが直ぐに楽になる事はありません。
なかなか次の行動に移せない状態に陥りかねません。
■恥の文化の良い面、悪い面
恥の文化は自分より他者からの評価を気にします。そのため、ものづくりにおいては、他者から喜ばれる製品を生み出そうという力が生まれます。
これには、他者からの評価を気にするあまり、新たなチャレンジが生まれにくいという一面もあります。
新しいことを行うというということは、失敗をして恥をかく可能性が高いという事です。
では、新たな製品を作るときに恥をかかない最も良い方法は何か?
これは、今までの製品をベースに機能を付加したり改良したりする方法で失敗するリスクを減らす事が出来ます。
これは日本人が最も得意とするやり方です。
どのやり方が正しいということはありません。どのやり方も正しいのです。
これは、アメリカで色々なメーカの方に触れていますと、正しいやり方という事にあまり拘っていないように感じます。
彼らは、どのやり方が正しいのかを選択するのではなく、どの行動を選択すると楽しいのかを常に考えています。
それは、先ほども記載したような罪の文化にみられるように、失敗しても御免なさいで気持ちが楽になるシステムを保有しているからです。
良い品質の製品を作る日本企業が、アメリカ市場でアメリカ企業をなかなか追い抜けないのは、この点が日本人と違うからかもしれません。
アメリカ企業は新しい製品を生み出し市場に投入する事を恐れず楽しみ、初期の段階で市場からクレームを受けることを、良い事だと捉えています。着実に成功に近づいていると・・・
■恥とは
恥は耳+心です。
耳は耳の形を象ったもので、説文解字には「聴くを主つかさどるものなり。象形。凡そ耳の属は皆な耳に従ふ」とあり、神声を聴くのに最も重要なものです。
また恥の意味は、自らのあり方を省みて足らざる自分を知る心です。
人は恥によって自らを律し、自らが敬する対象との差異を感じ、そこへと赴かんと欲します。
故に恥は人を人足らしめる重要な要素であります。
目指したいと想う位置との差を感じ、そこへ向かおうと想う事で目指す位置に近づきます。
自分の現在いる位置を知り、目標との差を知り、そこへ行くことを熱望する。
これが「恥をかく」との本質的な意味ではないでしょうか。
この本質的な意味を理解すると、「恥をかきたくない」と言うことは、向上したくないと言うことと同じであると言えます。
■アメリカ市場で成功する
アメリカ市場は失敗しても許される市場です。
恥をかきながら向上させる事が出来る市場です。
日本は恥を許さない市場ですが、アメリカは恥をかいてもよい市場です。
アメリカ市場に進出し始めの時期は、失敗したと感じる事が多々あります。
そのように感じる時は成功に近づいている状態です。
失敗を許してくれる市場だからこそ、失敗する度に成功に近づいていると言えるのです。
恥をかいてもよい市場を最大限活用するなら、恥をかけるだけかいて成功に近づく方法が、無駄がなく効率的で成功への近道になります。
アメリカ市場で失敗したと感じた時は成功に近づいていますので、足を止めることなく次の段階へ進むことをお勧めします。
失敗して途中で足を止めることは、成功に近づいている事に気づくことなく、プロジェクトを諦めてしまうという大変勿体ない状態です。
どれだけ市場が変化しようが、これがアメリカ市場で成功するための方法の一つと考えます。
日本人の思考と西洋的な思考を併せ持ってアメリカ市場に進出することで、欧米企業に勝る日本企業が数多くアメリカ市場に生まれるのではないかと考えます。