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源法律研修所

法令の中の「御用納め」・「御用始め」

2021.12.29 00:59

 昨日12月28日は、御用納め。職員さんたちは、お布団でぬくぬく朝寝坊したいと思いつつ、いつもの習慣で早起きしてしまい、今頃は、家の大掃除をさせられているかも?笑


 さて、改めて述べるまでもないが、「御用」とは、宮中・幕府・藩などの「公の用務」をいう。「用務」とは、果たすべき仕事のことだ。


 国の省庁の場合、行政機関の休日に関する法律(昭和63年12月13日法律第91号)により、12月29日から1月3日までを行政機関の休日とし、原則として執務を行わないものとされている。


 そして、明治7年12月23日開拓使本庁第125号達が「御用納」という表現を初めて用いている。


https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/995333/153

 そのため、現代でも、慣習的に12月28日を「御用納め」と呼び、1月4日を「御用始め」と呼ぶ。民間企業と同様に、「仕事納め」・「仕事始め」と呼ぶ官僚もいる。

 いずれにせよ、現行の国の法令で、「御用納め」・「仕事納め」・「御用始め」・「仕事始め」を用いたものはない。


 下記のサイトには、「実は、行政機関の休日に関しては1873年(明治6年)に制定されていた年中祭日祝日ノ休暇日ヲ定ムという法律によって「官公庁は12月29日から1月3日までを休みとする」ことが決まっていました。」とある。

https://ruriyrsm.xyz/12-28-sigotoosame/

 他のサイトにも同様に書かれていたので、広く流布しているようだが、条文を見れば一目瞭然の嘘っぱちだ!

https://www.tokai-tv.com/kuugenzetsugo/20101224_takai04_7973.php

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/787953/335


 仕方がないので、自分で調べた。


 明治元年十二月二十二日(行政官)【第千百二十二】が「一(ひとつ) 来(きた)る廿六(にじゅうろく)日より正月三日迄(まで)休暇之(の)事」、「一(ひとつ) 四日より御用初(はじめ)に付(つき)出勤之(の)事」と定めたことに由来することが分かった(ひらがな・ルビ:久保)。

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/787948/257


 面白いのは、「御用始」ではなく「御用初」とあることだ。

 検索したら、ネット上では、「御用始め」が正しく、「御用初め」は誤りだとある。「初め」はfirst最初で、「始め」はstart開始であって、1月4日に人生初の仕事に取り組むのではなく、仕事を再び開始するのだから、「御用始め」が正しいのだそうだ。

 しかし、新年最初のお参りだから、「初詣」というわけだし、また、新年最初に文字を書くから、「書初め」というわけだから、必ずしも「御用初め」が間違いだとは言えないように思われる。


 では、自治体の場合は、どうなっているのだろうか。

 地方自治法第4条の2第1項により地方公共団体の休日を条例で定めるものとされており、同条第2項第3号で「年末又は年始における日で条例で定めるもの」と決められている。

 これを受けて、各自治体も、条例で、国に準じて、12月29日から1月3日までを休日にしている。


 世間ではほとんど知られていないと思うが、自治体職員さんが年末年始に出勤すると、休日勤務手当又は代休日が与えられる。

 土日は、労働基準法上の休日であって(週休日)、そもそも勤務義務がないので、土日に勤務すると、時間外勤務手当又は週休日の振替が与えられる。

 これに対して、国民の祝日や年末年始は、そもそも勤務義務があるので、国民の祝日や年末年始は勤務日であり、すでに給料額の算定の基礎に入っているため(国民の祝日や年末年始に働くことを前提に給料計算されている。)、国民の祝日や年末年始に勤務した場合に、給料とは別に、休日勤務手当又は代休日を与える必要はないはずなのだが、国民の祝日や年末年始に勤務を命じられていない大多数の職員とのバランスを取るために、休日勤務手当又は代休日が与えられているわけだ。

 つまり、休日勤務手当又は代休日は、給与の二重支給なのだ。公務員叩きを生き甲斐とする馬鹿なマスコミがこれを知ったら、激怒しそうだが、私は、目くじらを立てる必要はなかろうと思う。官民問わずみんな休んでいるのに、住民のために公務を遂行なさる職員さんに感謝こそすれ、非難するのはお門違いであって、給与面でちょっと優遇したって良いじゃないかと思うからだ。


 ちなみに、現行の例規で「御用納め」を用いているものが7本、「仕事納め」を用いている例規は、14本あった。

 そのほとんどが、御用納め式又は仕事納め式において、職員表彰をする旨の規定だった。


cf.1みどり市ながめ公園条例 (平成18年3月27日 条例第162号)

(休園日)

第5条 ながめ公園の休園日は、次のとおりとする。ただし、市長が特に必要があると認めたときは、この限りでない。

(1) 年末年始(御用納めの日から御用始めの日まで)

(2) 関東菊花大会の準備期間(会期前10日間)


cf.2吉備中央町職員の給与に関する条例 (平成16年10月1日 条例第62号)

(宿日直手当)

第22条 宿直勤務又は日直勤務を命ぜられた職員には、その勤務1回につき4,400円、年末年始(仕事納めの日から仕事始めの日まで)の宿日直勤務については、2,000円を加算した額を超えない範囲内において規則で定める額を宿直、日直手当として支給する。

2 前項の勤務は、第17条から第19条までの勤務には含まれないものとする。


 しかし、最近では、御用納め式・仕事納め式、御用始め式・仕事始め式という式典を取り止める自治体が増えているそうだ。

 気持ちを改める意味で、かかる式典があった方がけじめがついて良いと思う一方で、自分自身が当事者だったら、きっと「面倒臭い!」と思うだろうなぁ〜(笑)。