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とある冒険者の手記

V.一族の在り方

2021.12.29 12:22

里に戻ったヴァル。

祖父である族長に呼び出されたからである。


一体、何の用事なのか…


また、婿を取れと言う話なら張り倒してやろうと、不機嫌MAXで家へと入る。


「族長、ただいま戻りました」

「戻ったか、ヴァル。……そんなに不機嫌そうな顔をするでない」

「…なんの御用でしょうか?」

「アクの息子、アリスの事で聞きたいことがある」


その言葉に、不機嫌な顔から真剣な表情に変わるヴァル。

アリスが異例の存在であることは報告してあったが、それについて言及されたことはなかったからだ。


「今、アリスは何をしている?」

「…ヘラであるガウラと、エーテル体のヘリオと共に、2つの一族について調べているようです」

「その理由は?」

「ヘラが白き一族でありながら武力を持っていた事と、アリスが黒き一族でありながら魔力を有していた事で、その原因の究明…と言うのが理由です」

「ふむ…」


考え込む族長。

すると、そこに母親のヴィラが姿を現した。


「族長、これは時代の流れです。私も、常々この力の関係に疑問を持っていました。それに、白き一族は純血がヘラしかおらず、各地に残るは混血のみ。我々の掟も、考え直す時期に差し掛かっているのではないですか?」

「母上…」

「だがな、ヴィラ。この掟も、元々は一族が2つに分かたれた時に、その代表同士が決めたものだ。掟を変えるには、相手の族長との話し合いが必要なのだ」

「それは難しいのではないですか?白き一族の族長は、ヘラの儀式の時に行方が分からなくなっています。あの儀式の失敗以降、白き一族は崩壊したも同然なのでは?」


ピリピリとした空気が包む。


「我々の一族に伝わっている、始まりの祖の詩。その幾つかには、一族の転機を表していると思われるものも存在しているのはご存知でしょう」

「…それが、今だと申すか?」

「状況を考えれば、そう判断できます。本来であれば、ヘラの儀式の失敗の時点で考えなければならなかったと、私は思っています」


ヴィラの言葉に険しい顔をする族長。

すると、ヴィラは詩を唄い始めた。



白き花よ 咲き誇れ

咲き乱れよ 白き花

香りに踊れ 黒き蝶

黒き蝶よ 舞踊れ


二つは一つに

一つは二つに


巡る 巡る 命の営み


二つの色 一つに混ざり


光の嵐 それを巻き込み

花弁と羽 世界に解き放つ



「最後の世界に解き放つ、これはこれまでの暮らしから開放されると言う意味にも取れます。それに、光の嵐と言う言葉は、白き一族の集落跡で、アリスが始まりの祖の杖を使い、放った魔法に酷似しています」

「う~む………」


尚も煮え切らない族長に、ヴィラは口を開いた。


「どうしても族長同士で話をしたいと言うのであれば、族長の妻であったジシャ·リガンを族長代理とする事はどうです?」

「ジシャを?彼女は儀式の時に消えてしまったのではないのか?」

「運命のイタズラなのか、彼女のエーテルの1部が、ヘラのエーテル体の中に眠っていたそうです。今はミニオンにエーテルを移し、集落跡で遺品の整理をしています」


ヴィラの言葉に、"何故その事を報告しないのだ!"と憤慨する族長。


「報告する事では無いと、その時は判断したからです。事実、彼女の身体は消滅しています。今の彼女は残留思念に近い。ですが、どうしても向こうの族長との話がしたいのであれば、彼女の存在は必要でしょう」


苦虫を噛み潰したような顔をする族長。


「ジシャはニア様の直系であり、白き一族の歴史を管理するリガンの姓を持つ者。相手にとって不足はないでしょう?」


してやられたと言うように、不機嫌な族長を残して、ヴィラはヴァルを促し、2人で家を出た。


「母上、良かったのですか?」

「あぁ。いい加減、この古臭く時代に合っていない掟をどうにかしないとと思っていたからね」


ヴィラは更に続ける。


「私は、一族を崩壊させるかもしれない。でも、それでいいと思っている。ヴァル、お前には婿をとは思っているが、血を残すための義務で子を成して欲しくはない。自由になれば、視野も広がるだろう。そうすれば、お前は生きたいように生きれるんだ」


ヴァルはヴィラの顔を見る。

今まで見せた事がない、強い光を宿した瞳をしている母親に驚いた。


「ヴァル。お前はヘラと…ガウラと共に居たいのだろう?一族関係なく、隣にいたいのではないか?」

「……っ」


自分を理解していた母親の言葉に、瞳が潤む。


「…居たい…、あたいは、ガウラと…、一緒に…居たい…」


普段、クールに振舞っているヴァルはボロボロと涙を流す。

優しく頭を撫でるヴィラ。


「掟ゆえに、交わる事が出来なかった2つの一族だ。中には護っているうちに恋心を抱く者も少なくはなかった…。惹かれてしまうのは仕方ないことだと思う。私達は、白の祖に心惹かれた黒の祖の末裔なのだから…」


そして、ヴィラはヴァルに黒き一族に伝わっている詩を、ガウラとアリスに全て教える様に伝えた。


その詩が、2つの一族の解明に役立つことを願っての事だった。