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[読書感想文]「カフェをやってみたい」憧れがあるなら必読。カフェへの愛情が詰まった『カフェという場のつくり方』

2017.09.03 06:43

祖父母が残した田舎の空き家の活用を模索中・・・と話したら、知人が「大阪に”common cafe"って日替わり店主のお店があるよ。大阪ガスに勤めながら運営している店主さん。」と教えてくれた。

これは、その「common cafe」を始めとして、10年以上、複数の人間でシェアするカフェやバーの運営に関わってきた方が書いた本。

 出会いの場所として、表現の場所として、また新しいアイデアやプロジェクトを生み出す場として、カフェという空間は、大いなる可能性を持っています。その魅力に惹かれて、僕はもう10年以上もカフェやバーの運営に関わってきました。


 本当の意味での「コモンカフェ=みんなで共有するカフェ」とは、どういう形であるべきなのか。僕自身はお店を経営するかたわら、いろんな店に足を運びながら、自問し続けてきました。
 その過程で見えてきたことを、今回一冊の本にまとめてみました。

 

2001年に日替わりマスターのバーをオープンさせてからいくつもの場づくりに関わってきた著者は「コミュニティカフェの草分け」と言える存在・・・なのかもしれない。

二章には「カフェを開業したにも関わらず、長続きせずやめてしまった人たちの事情を知るところから、カフェを続けていくためのポイント」が綴られる。

お客さんから受けるストレス、仲間との共同経営の難しさ、物件・地域をめぐる想定外、「やりたいこと」と「お客さんが望むことのバランス」・・・その内容はどれも「なるほど」と頷けて実践的・実用的でタメになることばかり。

冷静に語ることが出来るのは、この著者が会社勤めの傍らコミュニティカフェ運営、というバックグラウンドがあることで、ある種の「第三者」の目線を持っているからかもしれない、と思った。


「カフェいいな・・やってみたい♪」人はこの本は必読だと思う。

カフェの経営をしたい=「飲食店の経営がしたい」と「人が集える場をつくりたい」の2種類に分けられるという。ビジネス志向の前者と文化性・公共性を志向する後者。

知人が私に勧めてくれたことからもわかるように、昨今、「地域創生」「コミュニティづくり」の文脈の中でもコミュニティスペースとして「カフェ」はよく登場する。肌感覚として、後者を志向する人や場の増加も感じる。

けれど、「場」さえつくればそれでコミュニティが盛り上がるかというと、そううまくいく話ばかりではないはず。

著者も「どこかもの足りない」と評しているけれど、私個人的にもなんだかどことなく行政色の強いくそだっさい(失礼・・)「コミュニティカフェ」を見ると切なくなることがある。

まして、収益性を考えると課題が多いのも現実。


筆者はその課題の解決策の一つとして日替わり店主のカフェバーを運営しているという。

 カフェを実際に開業するためには、今の仕事を辞め、不動産を借り、数百万もの開業費用を投じ、開店のための多くの準備作業をこなす必要がありますが、コモンカフェでは、それぞれの店主は仕事を辞めずに週1回、月1回というペースで自分のお店を持つことができます。そして営業を続けていくうちに、お店の具体的なイメージが固まり、自分の日に来てくれるお客さんが増え、十分自信が持てるようになったら、それから初めて自分のお店を持つ、という段階を踏むことができます。
 また、自分のお店を構えることを目標にせず、他の仕事をしながら定期的にカフェを開きたい、という人たちにとっては、フリーマーケットのように、自分のライフスタイルの一部としてカフェを開業することができます。お店を辞めることに対するハードルが低いので、自分がやりたい時期だけ、カフェに関わることができるというのもメリットです。

(この本を読んだあと、一度、行ってみたけれど、本当にとっても良いお店だった・・・!)

「甘くない」現実も紹介しつつ、それでもこの筆者は「カフェ」の可能性を信じている。「一度開業したらずっと続ける」ことを前提としていないのも特徴的。

 多くの人にとって、出会いの場を希求するのは人生の一色のことで、自分にとって大事な人、新たな可能性と出会えれば、そこから先、開かれた場に身を置き続ける必要はなくなります。それは店主も同じで、カフェを通じて得られた出会いや気づきから次の展望が見えてきて、その結果、お店を卒業するということもあり得るのです。

たしかに「コミュニティ」というものは、永続的に続くものではなくて、新陳代謝していくべきもの(そうしないと必ず停滞期がやってくるもの)なので、ビジネス目的の薄いカフェを始めたい人が多額の自己投資をして・・はあまり得策ではない。その点は、自分もこの本を読んでとても共感したところ。

 「カフェをやりたい」という人たちの思いが、人が集まる場を生み出し、そこでより多くの人たちが刺激を受け、自分を見つめ直し、新たな何かに取り組んでいく。そうした自己実現の連鎖を通じて、社会がより良い方向に向かっていく。
 僕自身は、そんな風に、少しロマンチックな形でカフェの可能性を信じています。
 そうしてこうした公共的な役割を果たすカフェを支えるための流儀を、これからも模索していきたいと思っています。

終章に書かれたこの文章を読んで、「カフェを始めたい」と考えている人に対しての深い愛情を感じたし、自分も少し背中を押された気がした。


★「働き方」「お仕事」それぞれ。

著者自身、サラリーマンとの二足のわらじ。カフェ志望でなくとも会社勤め以外に「何か初めたい」人が読んでみてもいいかも。実現できるノウハウはわりと詰まっていると思うので。

私自身は、専業で「カフェを開業したい!」と強く思っているわけではないけど、会社以外での場も欲しい欲張りなので、空き家を使って「日帰りカフェ」みたいなことができたらいいなあ・・・という夢を持っいるので、この本に出会えて良かった。