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7th heaven side B

Stay with me 完全版_3

2017.08.28 14:45

第2章 平次の秘密


漸く寝入った事を確認して、目の上に置いて

いたアイスノンを外し、冷やしたタオルに置

き換えた


「和葉ちゃん、寝た?」

「おぉ、何とかな」


部屋の灯りを最小限にして、オレはダイニン

グテーブルへ座った


やっぱり、オレは和葉に嘘はつけへん


どんなに上手に隠しても、親でさえも気付か

へん微妙なラインを、アイツはちゃんと読ん

でしまう


オレは、あの日の自分の行動は、正しかった

と思うてる


信じてへんけど、初めて神様に感謝した


あの日、和葉の家に様子を見に行ったんは、

嫌な予感がしたからやった

夜明けには電話に出た和葉が、まっ昼間やの

に電話に出えへんのは、おかしいと、思うた

からや


そのまま和葉の家で看病しても良かったんや

けど、意識を失っとる和葉の様子から、オカ

ンの手も借りんと無理と判断したんも、正解

やってん


まだ、和葉に言えへん事があんのや

そう、オレには秘密がある


あの日、遠山家にはあの僅か数十分後に強盗

が入った


目的は、盗難やない


家人(つまり、和葉)の拉致目的での侵入や

最近、おっちゃんが解決した大きな事件で、

逆恨みした犯人一味の残党が、逮捕されたボ

スや上層部の解放を要求するために、人質と

して和葉を襲う事が計画されてん


あの日、連中は下校途中の和葉を襲撃すべく

事前に調べとった通学路で待機しとったらし

いんや


ところが、和葉の姿が無いので、帰宅中の生

徒を捕まえて聞いたところ、休みやってわかって、急遽、遠山家へ侵入したらしい


が、既にもぬけの殻で、和葉は居らん

そうこうしとる間に、別のメンバーが、おっちゃんを見つけたらしく、奴らはそちらを急

襲したんや


遠山家に侵入したやつらは、腹立ち紛れに室内を荒らしまくったらしく、警報機が作動し

騒動になり、殆どが現行犯逮捕された


おっちゃんを見つけ、狙撃した奴らは、負傷

したおっちゃん自らが猛追中


その他の面々も、芋づる式に検挙され、府警は大騒動や


当然、親父は後始末に奔走しとって、帰るど

ころやない

オカンに、毎日、和葉の様子を確認しとるらしい


オレとオカンが和葉に騒動の話を伏せとんの

には、ちゃんと理由があんねん


和葉の、亡くなった母親との想い出の品も、

全部、破壊されたんや


ガラス製やった上、粉々にされ、復元不可能な状況やねん

それ以外にも、ガラス製を中心に破壊されて

とても見せられる状況や無いんや


オカンが一生懸命、何とか出来るもの、ダメ

なもの、仕分けたりしとんのやけど


家具も殆どアウトやねん


オレも、夜中に見に行って、あまりの惨状に絶句したんや


引っ越したばかりの部屋は、修理せんと無理

やろうと言う有様で、とても和葉に見せられ

る状況や無くて


おっちゃんのケガの事もあるんで、ショックが大きいやろ?


せやから、和葉が体調をある程度回復させるまでは、と、情報を隠す事にしてん


和葉は、携帯を隠された事にはきがついたん

やけど


新聞も、さり気なく仕舞われとるし、ラジオ

もテレビもタブレットも和葉の周囲には無い


そう、邸内に居る限りは、和葉が外部のニュ

ースに触れられんようになってん


オマケに、オレかオカンのどちらかが傍に居て、来客からも隠しとるからな


おっちゃんから、おっちゃんが犯人捕まえて服部邸に来るまでは、頼む、と言われてん


おばちゃんの遺影は、幸い写真立てを入れ替えで済んだから、オカンが自分の寝室に隠し

とんねん


「和葉ちゃん、ちょお時間かかりそうやな」

「あぁ、せやな」


今日の様子から考えても、体調が戻ったとして、あの惨状と自分がどんな形で狙われたん

かを知った時には、再び混乱するやろう事は

想定出来る


「何や、寝顔はまだ小ちゃい時のまんまや」

可愛ええなぁ


「せやな」


オカンは、和葉の額のタオルを交換しながら

顔にかかる髪を退けてやったりする


ホンマ、昔から寝顔、可愛いかったからなぁ


めっちゃガキで、めっちゃ素直やった頃は、密かに和葉は眠り姫か何かで、目が覚めたら何処かへ飛んで行ってしまうんや無いかって

心配した事もある


自慢や無いけど、オレかて素直に和葉が好きやって公言しとった時代かてちゃんとあるんやで?


いつからやろか

素直に言えんようになったんは


無邪気におっちゃんに、和葉をくれ、言うた事もある


誰にもやっちゃ嫌や

くれへんのやったら、オレが婿になったらええんやろ?言うて、


「こらっ、平次!ワシが静に殺される」


と親父を慌てさせた事も


和葉はこの事を知らん

子供ながらの配慮やったんか、和葉がオカンらと遊んどる時に、親父らに言うたんやから


おっちゃんは、反対はせえへんかった


オレが、勉強も剣道も頑張って、和葉を護れるくらい、強くなったら、もう一度言え、と

言うただけや


ん、待てや


先日の宴会での出来事を思い出す


和葉をえらく気に入った刑事が居って、和葉と付き合いたい、とゴネたんが居たんや

まぁ、珍しい話や無いんやけとな


でも、その時は、かなりしつこうて、親父もおっちゃんも苦笑しとって


和葉には、先約があるから、そいつの方を先に吟味せなアカンねん、とおっちゃんが言う

たんや


「せやから君は順番待ち、やな

まぁ、最後は和葉本人に決めさせるけど」


それまで、娘によからぬ事すんなやって言うて、和葉との直接の交流を禁じたんや


てっきり、いつもの断り文句やと思うてたけど、あれは、もしかして


「へぇ、アンタもそないな顔が出来るようになったんやなぁ」

「あ?」


クスクス笑い、部屋を出て行くオカン

オレは、和葉の布団を引き上げてやって、その寝顔を眺めた


この先も、ずっと独占して眺めていたい

そう思いながら、見つめていた


数日後、和葉が漸く、床上げするタイミング

で、おっちゃんが服部邸に現れて、事件の一

部始終を、和葉に説明して


おっちゃんの指名で、オレが付き添い、和葉をリフォーム中の遠山家に連れて行った


腰を抜かした和葉を抱き締めて、震えるその身体を支えた


「誰も居らん、泣いてええで」


顔を見えんように、しっかり抱き締めて、泣き噦る和葉の背をさすった


悲鳴のような泣き声は、血を流しとるようで

現実が和葉を深く、深く傷付けて行くのをオ

レも感じてん


和葉の首筋に顔を埋め、目を伏せた

火が付いたように熱い身体から、冷たい涙がポロポロと落ち続ける


悲鳴が止むまで、ぎゅっと抱き締めて、オレも耐えた


泣き疲れて、和葉が眠りに落ちるまで、じっ

とそのままで居た


どんな慰めの言葉も、届きはせんと思うたから、黙って傍に居って、その涙を片付けるんを手伝う事で、寄り添う事しか出来ひんと思

うたんや


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to be continued