(ニューヨーク・マンハッタン『グランド・セントラル駅』)
なんだか通りすがりで、行きがけの駄賃のように、
池澤夏樹の『叡智の断片』をパラパラとめくっていたら、
飛び込んできたアフォリズム。〝読人知らず〟だという。
「正しいと思うホームを見つけてそこで待っている汽車に乗る。
でも走り出すと行方が違う。人生ってそんなものさ」
片頬に苦い笑いができたままで考えてみる。
果たして、そのときどき
──正しいと思ったのかどうか、
──ホームを見つけたのかどうか、
──行方があったのかどうか
それらさえも……分からない。
でもまあ、これだけは分かっている。
「他人の普通を演じるために、自分の人生があるわけじゃない」
これからも、そんな種類の汽車に乗ろう。