XYZ
■この台本の全ての役は性別不問で演じていただけます。一人称や語尾も変えていただいて大丈夫です
■タイトルは
エックスワイジーと読みます
(※これ以上無い。究極の。至高のという意味です)
※性別不問にしましたので倫理上の観点からお披露目の台本と一部内容を変更しております
※上演目安は演者様の間のとり方やテンポによると思いますが、1時間ほどです
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
※全キャスト性別不問
【XYZ】
作︰七海あお
CAST
刑事···
探偵···
小説家···
ピアニスト···
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「人物紹介」
【登場人物】(演者様用裏設定)
◆刑事
⇒連続殺人事件の犯人。自分の犯行の発覚を恐れ刑事のふりをしてミスリードし、あわよくば別の人間を犯人にしようと企んでいる
◆探偵
⇒探偵のふりをしているが実は刑事。ここに殺人犯が潜伏しているという情報を入手し、潜入している。
◆小説家
⇒発売された本が全てベストセラーになる推理小説家。トリックを全て自分で考えており、警察の協力要請も受けるほど賢い。が、性格に少々難あり
◆ピアニスト
⇒チケットが即日完売するほどの有名人。が、才能をピアノに全フリしている為、割と発言がとぼけている
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【STORY】
※ここから本編です
刑事
「えー。みなさまにお集まりいただきましたのは他でもありません。
この屋敷にて昨晩、殺人が行われました。
よって今から犯行時刻の…」
ピアニスト
「ねえ?これってもしかして取り調べってやつ?本当にドラマと同じ様な台詞を言うんだなー
すごーい。
今から僕、アリバイとか聞かれちゃう感じ?
うわー…テンションあがってきたー」
小説家
「上の人間に言われた事しか出来ないからねー。
警察という人種は自ら頭を使って考えるって事が苦手だから、毎回テンプレの様な事しか言えないのさ…
もう同じ台詞ばかりでいい加減聞き飽きたな…」
探偵
「まあまあ…世の中はあなたの様に賢い方ばかりでは無いですから…
そこは大目に見てあげましょうよ」
刑事
「あのー。さっきから全部聞こえてますからね?
お二人のディスり、良い感じに刺さってますからね?
あーそうだ。アリバイを聞く前に…
先にみなさんの名前と職業を伺っても良いですか?私は、先ほどお伝えした通りです。では…あなたから」
探偵
「えっ?うっわー。冗談でしょ?
刑事さんテレビとか見ない人?
俺はともかく、そちらのお二人を知らない人なんている?あり得ないでしょ?」
刑事
「ええ。もちろん存じておりますよ?
ですが…規則ですから…」
小説家
「出た。
はい、テンプレ…
いっそ全部あらかじめ録音しておいた物
を再生でもすれば、効率もあがって、
検挙率も今よりだいぶマシに…
刑事(被せて)
「先生?今はあなたに伺ってませんよ?
順番、お守りいただけますか?
社会の基本的なルールですよね?
なんなら幼稚園からやり直しますか?
幼稚園児の方がまだマシですかね?」
小説家
「なんだと?もういっぺん言ってみろ!
ああ?」
ピアニスト
「あーもう!ケンカ反対!楽しくやろうよ!ね?」
小説家「……」
ピアニスト「ね?」
刑事「……」
ピアニスト
「えっとー。自己紹介すれば良いんだよね?
改めまして。桐生紫苑(きりゅう しおん)といいます。
ピアニストをやってる。
ツアーで全国周ったり、世界も飛び周ってる。
あと…」
探偵
「聞くものを魅了してやまないその音色にツアーは即日完売。
1回の講演を闇オークションでは100万円で販売しているという噂もありますよね?
俺!めっちゃファンなんですよ!
あの、もし良ければサインいただいても…」
ピアニスト
「ほんと?嬉しいなー。
どこに書く?
あっ…マジック持ってる?」
探偵
「はい!もちろんです。
あっ…今日CD無いので…
今着ている服にでも…」
ピアニスト
「えー。そんなー。いいの?」
探偵「ぜひ!」
ピアニスト「じゃあ…」
小説家「(咳払い)」
探偵
「あーごめんなさい。今は自己紹介でしたね。嬉しくてつい…」
ピアニスト
「ご、ごめんなさい…
あの…お願いだから怒らないで…」
小説家
「私もあとでサインもらって良いか?」
ピアニスト「へっ?」
探偵「えっ?」
小説家
「聞く者を一瞬で魅了するその音色から
"天界のピアニスト"
"神の使い"
なんて呼ばれている唯一無二の才能。
彼の奏でる音には尊敬に値する確かな価
値がある。
執筆の息抜きの時にも聞いているし、作品のインスピレーションももらっている…
その…いつもありがとう」
ピアニスト
「 本当?
こんなに有名な推理小説家の先生に聞い
てもらえてたなんてすっごく嬉しい!
こちらこそ。いつも聞いてくれてありがとう。僕の方こそ、あの、あとでサインいただけたり…」
小説家
「もちろん。私で良ければ喜んで」
ピアニスト「やったー!」
刑事「あのー…えっとー…み、みなさん?」
探偵
「四条奏(しじょう かなで)。
推理小説家。
出す作品は全てベストセラー。
ドラマ化されれば高視聴率。
映画化された作品も軒並み歴代の興行収 入を塗り替えていく。
海外の某有名大学を飛び級、しかも主席で卒業。
作品のトリックの全てを自分で考えており、その優秀な頭脳を借りようと警察関係者の協力要請があとをたたない…なんて噂もある。ですよね?四条先生?」
小説家
「代わりにご紹介、どうもありがとう。
そんな君はあれかな?
その観察眼と記憶力、状況への適応能力の高さを考えると…
駆け出しの探偵。といったところかな?」
探偵
「さすが推理小説家の先生だ。先生の目はごまかせませんね。
はい。仰る通り、俺は探偵です。
ってことで…自己紹介はこんなとこでもう充分ですかねー?刑事さん?」
刑事
「あ、ああ。そうですね。
みなさまありがとうございました。
では!気を取り直して…
昨夜のみなさまのアリバイを教えていただけますか?」
ピアニスト
「えー!アリバイ聞かれるとかもうマジで
ドラマだー!
最高!ワクワクしてきたー!」
刑事
(大きく咳払い)
「では、気を取り直して…
まずは探偵さん。
あなたからお願いします」
小説家「しれっと編集点作ったな…」
刑事
(大きく咳払い)
「先生?私は探偵さんと言ったんですよ?
やはり幼稚園からやり直して…」
小説家
(被せて)
「馬鹿の1つ覚えみたいに…それしか言え
ないんだなー。
なるほど、IQが足らないとこうなるの
かー。心から同情するよ…」
刑事
「なんだと?公務執行妨害で今すぐここで
逮捕しても良いんだぞ?ああ?」
探偵
(被せて)
「あー!もう二人とも落ち着いて!
俺の昨夜のアリバイを話せば良いんです
よね?
えっとー…
昨夜は眠れなくて…部屋でゲームしてま
した」
刑事「なんのゲームですか?」
探偵「オンラインの対戦ゲームですね…」
刑事「それを証明してくれる人は?」
探偵
「ここのドアは全て防音だし、ヘッドホン
つけてたからここのみなさんには音は聞
こえてないと思いますよ?」
刑事「なるほどー」
探偵「あっ!でも…」
刑事「なんです?」
探偵「ゲームの対戦記録は残ってます。
そこに時間とか書いてあるから、
それが証拠になるなら…
もしかしたらアリバイ成立って事に なるのかな?
まあ…ゲームネームだからどこまで証拠能力があるかは正直わからないですけど…」
刑事
「ゲームの対戦履歴ですか…
わかりました。調べてみましょう。
では次は、ピアニストさん」
ピアニスト
「僕?僕はねーずっと作曲してたよ?
次のツアーの為の新曲と…あと、依頼曲とか色々」
刑事
「作曲…ですか…
音源とかは残ってますか?」
ピアニスト
「まだ完成してないからねー。
プロとして中途半端な物をこの世に残しておきたくないんだ。
だから録音したけど…全~部消しちゃいました。
データの復元とか出来るなら証拠になるかもだけど…んー。どうかなー」
刑事
「なるほど…データの復元はおそらくは可能だと思いますが…
今時点でははっきりしたアリバイは無しと…
では最後に…先生?あなたは昨晩は何をされてましたか?」
小説家
(おおげさにため息)
「わざわざ時間取って自己紹介をさせておいて、全員を職業で呼ぶあなたのセンス
ある意味感動してますよ、私…」
刑事
「それはどうも…」
小説家
「あなたが聞きたいアリバイという意味であれば…私も無いですよ?
部屋にこもって執筆してましたから。
ああ。そういえば…」
刑事
「なんですか?」
小説家
「途中で編集の人間から電話がかかってきたけど…
編集者が私に不利な証言はするはずがない前提を考えると…
証拠能力としては不十分ですよね?」
刑事
「さすがお詳しい…まあそうですね…
一応通話履歴は、あとで調べますね」
小説家
「ええ。お願いします」
刑事
「みなさんありがとうございました。
お聞きした限り、誰一人として確かなアリバイは無さそうですね…」
探偵
「普通に生活していて確かなアリバイがある方が、むしろ不自然ですからね」
小説家 「ああ。それもそうだ」
探偵
「だとしたら殺害の動悸から探るか…
それとも殺害方法から揺さぶって証拠を見つけるか·····」
刑事
「ここは山奥のコテージです
電話線は切られ、向こうへ渡る為の橋もご丁寧に壊されていました。
被害者を発見した時は、みなさんもご存知の通り部屋には内側から鍵がかかっていた。
そして1つしかない部屋のマスターキーはオーナーの部屋の保管庫の中に厳重に管理されていた
よって……これは、密室殺人という事になります」
探偵
「なるほど…
そうなると、今時点でたった一つだけわかっている事があるな…」
ピアニスト「えっ?なーに?」
探偵
「今回の殺人は、今ここにいる我々で無ければ犯行は不可能…
つまり…
犯人は…俺たち4人の中に…
犯人は、この中にいる!」
ピアニスト
「お決まりの台詞来たー!!!
さっすが探偵!」
小説家(ためいき)
「あーあ
言っちゃいましたねそのセリフ…
しかもどや顔で、とても気持ちよさそうに…」
探偵
「いやー…探偵になったからには1度はこのセリフ言ってみたかったんですよー」
小説家
「まあ、わからなくも無いな…私も何度か推理の時に言ってるからな…」
ピアニスト「僕も言ってみたい!」
探偵
「ぜひ!この台詞がぴったりのこんな機会、めったに無いですからね!」
ピアニスト
「はい!こんなピッタリの殺人現場めったに遭遇しないですからね。
はぁー。緊張するー」
探偵
「大丈夫!リラックスして思い切り楽しんでください!
自分が名探偵になったつもりで」
ピアニスト「はい!」
小説家
「頑張ってくださいね」
ピアニスト
「ありがとうございます!頑張ります!」
刑事
「あのー…みなさん?これはいったい何の時間…」
ピアニスト
(被せて)
「刑事さん!僕、気づいた事があるんです…」
刑事
「は、はい…なんでしょうか?」
ピアニスト
「犯行時、部屋は密室、橋も壊れて向こう側からこちらへ来る事は無理…」
刑事
「あれー?これさっき聞いたばかりの気が…おかしいな、気のせいかなー
俺一人別の次元にいるのかな?」
ピアニスト
「よって犯人は、こちら側にいた人間しかあり得ない…
つまり犯人は…この中にいる!」
探偵
(拍手して)
「桐生さん!最高!すっごくカッコ良かったです!
小説家
「初めてなのに圧倒的な存在感と個性も感じられました。さすが表現者は違うなー」
刑事
「あのー…みなさん?」
ピアニスト
「みんなの応援のおかげだよ。
いやーすっごく気持ち良かった。
応援してくれてありがとう
今度推理をテーマにして曲作ってみようかなー」
探偵
「 それはぜひ聞きたいですね!」
小説家
「その際はぜひ私の小説とコラボしましょう」
ピアニスト「はい!喜んで」
探偵
「うわー。
発売と同時にチケット完売するピアニストとベストセラー推理小説家の夢のコラボ
もしかして今、ものすごい瞬間に立ち会ってるんじゃないか?
えっ?やばくね?うわー、鳥肌たってきたー」
刑事
「あのーみなさん?これなんの時間です?」
探偵
「何って、見てわからないんですか?神コラボ誕生の歴史的瞬間ですよ!」
刑事
(ためいき)
「探偵さん。あなたが一番まともだと思ったのに。
どうやら私の見立て違いだった様だ…」
探偵
「ん?なにかおかしな事言いました?俺?」
~間~
小説家
「そういえば、1つ疑問に思っていた事があるんですが…」
刑事
「なんでしょうか?」
小説家
「あなたは昨夜の私たちのアリバイを聞いてきましたけど、
死亡推定時刻や死因はもうわかったんですか?」
刑事
「いえ…司法解剖にまわしてみない事には正直なんとも…」
小説家
(おおげさに大きくためいきをつく)
「あまりにも捜査がずさん過ぎてコメントのしようも無いな…」
刑事
「私は刑事です。法医学の知識もありませんし、科学もわかりません
今、ここに専門の人間がいない以上何もわかりません。
ただ、だからと言って捜査をしない訳にはいかないんですよ。
私は、刑事ですから」
小説家
「むだな正義感と責任感の行使ご苦労さま。
ざっと見ただけだが、殴られた跡と数か所の刺し傷があった」
ピアニスト
「あと、首に注射針を刺した跡が2個あった。血液を致死量まで抜き取ったのかもしくは毒殺か」
小説家
「注射針·····」
探偵
「まあー、人の命を奪う方法なんてそれこそ無数にありますからねー。
たった一人にそれだけの痕跡が残っているという事は」
刑事
「被害者が相当な恨みを持たれていたのか。
あるいは犯人が自信家で相当にIQが高いか…」
ピアニスト
「IQが高い?どうしてそう思うんです?」
刑事
「一般的に人というのは臆病な生き物です。
リスクが高い事には簡単に手を出さないし,逆に上手くいった事に固執する傾向があります。
よくゲン担ぎなんて言いますよね?まさにあれです」
探偵
「一度成功しているという安心感がありますからね。
それでたいてい犯罪を犯す人間は、再び犯罪を犯す時に同じ行動を繰り返す傾向が強い」
小説家「つまり、殺人方法の統一」
探偵
「そうです。
よく、小説やドラマでは連続殺人とかを描く時、綿密に計画を練ってトリックを駆使した上で、自分のアリバイを確保して犯行に及ぶ犯人がほとんどです。
ですが、現実はそうはいかない…」
ピアニスト
「そうか。殺人方法の種類を増やすほど、準備に時間がかかり、
それぞれに関する専門的な知識が必要になる」
刑事
「はい。それをたった一人に対して行えば、犯行時間が伸び、被害者との接触箇所も多くなる。
よって…」
ピアニスト
「圧倒的に証拠が残りやすくなるよね?
殺人を成功させたいなら被害者との接触時間を減らし、極力、自分に繋がりそうなヒントや証拠を減らす必要がある。
でも、この殺人犯がやっている事は真逆…
なるほど…それだけ自分の殺人に自信があるって事か…」
探偵
「はい。
通信も断たれ、外部からの応援も無い代わりに、犯人自身もここから出る事は出来なくなった。
もし自分が犯人だとバレれば3対1
本来なら勝ち目が無い」
小説家
「だが、そいつはここから逃げる事は選択せず、私たちを殺す事もせず、ここで共に推理を繰り広げている。まるでゲームでも楽しむかの様にね…」
ピアニスト「ゲーム…」
刑事「そうです。胸クソ悪い」
小説家
「刑事さん?私から1つ質問しても良いかな?」
刑事
「なんでしょうか?」
小説家
「最初に見せてくれた警察手帳を、もう一度見せてもらえますか?」
刑事
「ええ良いですよ。はい」
小説家
「触らせていただいても?」
刑事
「ええ。別に構いませんよ?」
小説家
「なるほど。そういう事か。探偵さん、あとはお任せします」
探偵
「え?ああ。では代わりに失礼して…」
探偵「!?」
■刑事の警察手帳の中身を見て、驚く探偵
探偵
「なるほど。先生、ありがとうございます。おかげで、最後のピースが揃いました
やはりあなたはすごい方だ…」
ピアニスト
「えっ?どういう事?犯人わかっちゃったの?」
小説家
「私の方こそ、探偵さんの見事な演技力にすっかり騙されましたよ…
でも、声としゃべり方のクセというのはやはり誤魔化し様の無いものですね…」
探偵 「そうみたいですね…」
ピアニスト
「探偵さん、もしかして…それって…ひょっとして?」
探偵
「ええ。犯人がわかりました。
やはり、犯人はこの中にいます」
ピアニスト
「キタキタキター!
もうドラマじゃんこれ!うわー興奮するー!」
探偵 「えっとー続けても?」
ピアニスト 「ぜひ!」
探偵
(咳払い)
「被害者の爪にはわずかですが皮膚の様な物が挟まっていました。
恐らくは犯人ともみ合っているうちについたのでしょう。みなさんの顔や首周りにはその様な傷はありま
せん。恐らく別のどこかの皮膚…」
刑事
「そうか…なら脚とか…」
ピアニスト
「脚、見せれば良い?」
探偵
「いえ、大丈夫です。脚を見ても恐らく傷はありません…」
ピアニスト
「え?そうなの?」
刑事
「!?」
■探偵、おもむろにシャツを脱ぐ
ピアニスト
「え?なんで探偵さんシャツ脱いで…」
探偵
「みなさん、俺の肩、見てください」
ピアニスト
「華奢だと思ってたけど、意外と筋肉がしっかりついてる事に驚いてるよ僕…」
刑事
「突然脱いだかと思えば筋肉自慢か?」
小説家
「へー。…人に頼むならまずは自分からという事か…きちんと筋を通すのは実にあなたらしい」
探偵
「お見苦しいものをお見せしてすみません。
みなさん、今ここで着ている上着を脱いで肩を見せていただけますか?
そうすれば全てわかります」
ピアニスト
「肩?肩を見せれば良いんだね?了解」
■ピアニスト、着ていたシャツを脱ぎ、みなに見せる
ピアニスト
「これで良いかな?」
探偵
「桐生さん、ありがとうございます」
ピアニスト
「ん?もう良いの?服着るよ?」
探偵 「はい。どうぞ」
小説家 「私も脱いで見せれば良いか?」
探偵 「お願いします」
■小説家、ジャケットとシャツを脱ぎ肩をを見せる。背中のパックリ開いたトップスから見えている背中には鮮やかなタトゥーがある
探偵
「·········」
刑事
「!?」
ピアニスト
「うわー。綺麗な色ー。ものすごい存在感」
小説家
「私なりの誓い。みたいなものだ。
まあ怖がる人もいるから、裸を見せあう様な親しい間柄の人間でなければ知らないけどね …」
探偵
「その色を出せるのはこの世でたった一人の堀り師だけ…
ある事件の時に彼、先生の背中に掘った事、自慢気に語ってましたよ?」
小説家
「なるほど。脱ぐ前から知っていたという事か」
探偵
「ええ。でも百聞は一見にしかず。
ご協力ありがとうございました。もう、服、着ていただいて大丈夫ですよ?」
ピアニスト
「残すは刑事さんだけ。つまり、刑事さんの肩に新しい傷があったら…」
刑事
(ばかにした様に笑って)
「良いですよ?見ますか?ほら?すみずみまで見てください?」
■刑事、服を脱ぎみなに見せつける
探偵
(モノローグ)
「予想通り、真新しい傷は肩には無い…
やはり思った通りか
でも俺が言う前に、あいつは傷のある場所は脚だと言った。無意識に俺達の意識を遠ざけようとしたんだ。なら、きっと·····」
ピアニスト
「んー。肩に、昨日ついた様なま新しい傷は見当たらないみたいだけど…」
刑事
「さぁ、見たでしょ?私の肩に傷なんてない。もう服を着ても?
探偵
「いえ、まだ着ないでください。
俺が本当に見たかったのは、肩じゃないんですよ」
刑事 「はっ?」
探偵
「ちょうどシャツのえりで隠れている
首の後ろ·····」
刑事
(舌打ち)
「爪あとは付けるなって言ったのに…」
探偵
「今の言葉は自白ですか?」
■刑事、狂った様に笑い出す
■その様子を伺う3人
探偵
「あなたは刑事では無い。なぜなら、俺が本物の刑事だからだ」
ピアニスト 「はっ?えっ?どういう事?」
刑事
「へぇー。あんた策士だね?いつから気づいてた?」
探偵
「あんたが最初に警察手帳を見せてきた時に、開いて中を見せない事に違和感を感じた」
刑事
(肩をすくめて)
「へぇー警察の中にもちょっとはマシなやつもいるんだな。
1人残らず脳みその使えないただの無能どもの集まりだと思ってたよ」
探偵
「!?
そうだったのか…
いや、1つだけ訂正します
今は、刑事では無いが、元、刑事だ。
そうだろ?岡崎?」
刑事
「はっ?誰だお前?」
探偵
「へぇー?お前みたいに賢いやつでも
視覚のトリックに簡単に惑わされるんだなー。
それとも殺人を繰り返したお前のにごった瞳では、もう真実は見えないか?」
刑事
「はっ?どういう意味だ????」
小説家
「論より証拠。自分の目で確かめれば良いさ」
ピアニスト
「えっ?何?どういう事?」
■探偵、帽子とウィッグとメガネを外す
刑事
「なんで帽子取って·····はっ?それウィッグだったのか?
!?」
橘(探偵)
「連続殺人犯がこの付近に逃げ込んだという情報があって潜入捜査をしていたんだ。
お前が刑事だと名乗ったから、俺は先生の援護射撃もあって、探偵のフリをする事にした」
小説家
「殺し方は様々、現場には多数の遺留品をわざと残すのに1つとして犯人に繋がる確固たる証拠を残さない、まさに完全犯罪」
ピアニスト
「え?あっ?それってもしかして今、世間をにぎわせてるやつ?
ネットで大騒ぎになってるよね?
犯人の狡猾さに崇拝する人間も出てきて模倣犯も後を絶たない·····
怖がった人間が、誰が犯人だーとか言って連日SNSに多数の書き込みがあって、殺人犯だと思い込んで関係ない人が殺されちゃったりして·····
えっ?まさか、この人がその連続殺人犯て事?
えっ?待って?全然頭ついていかないんだけど」
探偵
「俺は、その模倣犯に岡崎が殺されたと思い込んでいたんだ。つい先程まで、でも····」·
小説家
「姿形を変えても声や仕草にはクセが残る。私の言葉か?」
探偵
「はい。その言葉がヒントになりました。
警察手帳の名前が岡崎だった。
今の今まで単純にお前は昨日の殺人を犯した犯人で、岡崎を殺した連続殺人犯だと思っていた。
でもあの独特の仕草。それで分かった。お前自身が連続殺人犯でもあり、岡崎なんだって
つまり岡崎、夕べの殺人事件の犯人は、おまえだ!」
刑事(岡崎)
「へぇーそんなに特徴的なクセ、俺あったかな?
まあいーや
いっつも取り調べする時に思ってたんだけど、ほとんどバレてんのにギリギリまで言い訳する姿ってほんっと見苦しいからさ?
もしバレたその時は言い訳せず素直に認めるって決めてたんだ」
■バカにした様に笑いながら拍手をする
刑事(岡崎)
「橘、それに先生?お前らさすがだわ
心から敬意を評するよ
まあ、正確に言うと?連続殺人犯は2人いたんだ。
最初は別の人間がいた。
そいつを俺が殺して、それからはそいつの代わりに俺が殺人を続けてる」
探偵 「何のために?」
刑事
「何のためにって?そんなの決まってんだろ?
楽しいから」
探偵 「はっ?」
刑事
「毎日毎日代わり映えのしない生活、退屈で死にそうだった!
刺激が欲しかったのさ!
生きているっていう感覚を、強烈に感じたかった!!!!
もっと楽しんでいたかったのに…残念だ」
探偵 「てめぇー」
■狂った様に笑う刑事(岡崎)
■刑事(岡崎)に殴りかかろうとするも、悔しそうに刑事のえりに掴みかかる橘(探偵)
ピアニスト
「ヤバっ!刑事が猟奇連続殺人犯なんてまるで小説か本物のドラマみたい」
小説家
「職業という鎧を脱いでしまえば、所詮はみな同じ人間て事だ」
橘(探偵)
「悲しいよ、まさか同期のお前にこうやって手錠をかける日が来るなんて」
■刑事(岡崎)まだ狂った様に笑っている
■片方の手錠を岡崎に、もう片方を自分にかける橘(探偵)
橘(探偵)
「先生、それから桐生さん。
こんな面倒事に巻き込んでしまい、本当に申し訳ありませんでした。
こいつは責任を持って、俺が署まで連行します」
ピアニスト
「えっ?橋は壊されたんじゃ?」
橘(探偵)
「橋が無くたって、空は繋がってますからね」
小説家 「ヘリか」
橘(探偵)
「はい。もうすぐ最初の一基が着くのでとりあえずこいつを送ってきます。
先生方は申し訳ありませんが、もうしばらくここでお待ちいただけますか?」
ピアニスト
「あーそっか、乗るのは2人だけじゃ無いもんね。もちろん了解」
橘(探偵)
「はい。司法解剖に回さないとなんで。すみません。
またお迎えにあがりますから。ほら岡崎行くぞ?」
刑事(岡崎)
「ああ。では、ごきげんよう、みなさん」
■不敵な笑みを残した岡崎
■橘(探偵)、岡崎(刑事)を連れてコテージから出ていく
■2人がコテージから出て行ったのを見送って
ピアニスト
「いやーほんと凄かったねー。
殺人現場に立ち合うだけでも滅多に無い事なのに、まさか本物の刑事さん達の推理ショーが見れる
なんてびっくりしたけどほんとラッキーだったなー
犯人も捕まったし
今なら素敵な曲が書けそうだ」
小説家
「へぇー奇遇ですねー。私もね、
久しぶりにラッキーな日だなーって思ってたんですよ」
ピアニスト
「だよね?こんなラッキーな日無いよね?」
小説家
「はい。まあ私は別の意味でのラッキー。ですけどね?」
ピアニスト「別の意味?」
小説家
「はい。永年の探し物がね、ようやく見つかったんですよ」
ピアニスト 「探し物?」
小説家
「はい。物ではなく、人…いや、愛しい人を奪ったモンスターなんですけどね?」
ピアニスト
「モンスター·····?面白い事言うなー。さすが小説家さんだー」
小説家
「どの死体も人形と見間違う程に美しい
目立った外傷は何も無く、身体の中の血液だけが一滴残らず抜き取られている。
そして首筋には、たった一つ、ヴァンパイアの噛み跡だけが残っている」
ピアニスト
「ヴァンパイア·····」
小説家
「ヴァンパイアの仕業なのだと、実は本気で思ってたんですよ。
そんなわけ無いのにね…
ようやくわかりました…ヴァンパイアの噛み跡の様なあの小さな二つの穴
あれは…注射針の跡…だったんですね」
ピアニスト 「えっ?」
小説家
「先ほどそのモンスターはハッキリと言った
首筋に注射針の跡が2つって·····」
ピアニスト
「··········」
小説家
「今日はね、実はあいつの命日でもあり誕生日なんです。すごくないですか?
こんな偶然て、奇跡って本当にあるんですね?
永年探していたモンスターが私の前に現れ、ヴァンパイア自ら自分が犯人だと名乗り出たんです。
それをこの耳ではっきりと聞いた時、私、思ったんですよ…
ここで出逢えたのもなにかの運命。
これはきっと、神様からのプレゼントだったんだってね。
って事で·····
ようやくこのタトゥーを入れた時に誓ったあいつの復讐が果たせるよ!ヴァンパイア!いや、桐生。
死ねーーーーーーーー!」
ピアニスト
「!?」
■服の中に隠し持っていたナイフを振りかぶり、声をあげながらピアニストを刺そうとする
■ナイフが届くより早く、首筋に注射を刺すピアニスト
小説家
「!?」
■叫んだあと、一瞬で床に崩れ落ちる小説家
ピアニスト
「ふー。あっぶなー
ずいぶん物騒なもん仕込んでたなー。
賢い人だとは思ってたけど、まさかあの一言で僕の正体に気づいちゃうなんてね
あー。ほんと綺麗な顔。
僕のコレクションと比べても3本の指には入るかも·····
ベストセラー作家さんとのコラボかー…
1度で良いからしてみたかったなー…
あーあ、残~念
っとー…忘れる前に報告っとー」
■スマホを取り出しどこかにかけるピアニスト
ピアニスト
「あー、お疲れ様です。僕です。はい。
あなたの言った通りでした。いきなりナイフで襲い掛かってきましたよ。
口を滑らせてしまったたった一言で、僕の正体に気づいてしまったみたいです。
ほんとすごい人だ。
ええ·····
本当にすごく綺麗な顔してますよ~?
出来るなら僕のやり方でやりたかったなーきっと他の子達に勝るとも劣らない最高傑作になったのに…
はい?勝利の美酒?
あーちょっと待ってください?
えっとー
んー…
あっ!これかな?
うわー これめっちゃ高いやつ!
ほんとに飲んで良いんですか?
はい。ではいただきます。任務完了に乾杯」
■一口飲んで
ピアニスト
「うわっ。めっちゃおいしー。最高…
ん?」
■苦しんで叫びながら倒れる
~間~
■戻ってくる探偵(橘)
探偵(橘)
「すみません!お待たせしましたー。って…あれ?
先生ー?桐生さーん?どこですかー?
もう!どこ行っちゃったのかなー?
ん?」
■部屋の奥に進んで、二人の死体を発見して
探偵(橘)
(不敵に笑って)
「俺、ちゃんと待っててって言ったのになー…
もう。ダメじゃないですか、ちゃんと待ってなきゃ…
あーあ
そして誰も、いなくなった…か」
■大きなモニターに近づいて
探偵(橘)
(咳払いを1つして)
さてみなさま、いかがでしたか?究極の殺人ショーXYZ(エックスワイジー)。
お楽しみいただけましたか?
人が人を殺す瞬間を目の前で見ることが出来る、世界で唯一のエンターテイメント
まだ公開前ですが、選ばれた皆様だけ
特別に先行でご招待させていただきました
ここで殺人は本当に起こったのか?
あなたたちが見殺しにしたのか?
それともただのショーなのか·····
それは誰にもわからない·····
このXYZは、人類史上究極のエンターテイメント!!!!!
全てはあなたの思うがまま
生かすも殺すもあなた次第…
あー。ご安心ください
XYZのセキュリティは世界トップレベル
みなさまがここに参加した事は、
一生誰にも知られる事はありません
なぜなら·····
死人に口無し·····
参加権を手に入れられなかった他のみなさまには、この場で死んでいただきます
あー。いまさら逃げられませんよ?
そのイス、無理に立てば高圧電流が流れ、毒矢が飛んでくる仕様になっています。
嘘だと思うなら今、試しに立ってみてください?
さあ?さあ?
■爆笑する探偵(橘)
あれあれ?先ほどまでの元気はどこへ行ったんですか?
みなさんが我々の死を望み、殺人を煽りたてる狂気的な声、実は全ー部聞こえていたんですよ?
人の死は楽しめても、やはり自分の死は怖い…ですか…
さて、ここにご招待させていただいたのは世界各国の権力者のみなさま
誰か一人この世から消えても世界はその瞬間大きく変わる
つまり…
このXYZの参加権を手に入れた方は、
自動的にこの世界を手に入れる事が出来るという訳です
今からみなさまには、ご自分の命をかけて、このXYZの参加権のオークションを行っていただきます
さあ、みなさまがその手に掴むのは…
世界か…
はたまた、死…か
勝利の女神はいったい、誰に微笑むんでしょうねー?
それでは心の準備はよろしいですか?
人生最後の究極のショーを、心臓が動きを止めるその最後の瞬間まで、思う存分、ご堪能くださいね?
ではまずは…10億円から…
END