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シナリオの海

SPS

2022.01.01 16:45


男女サシ劇台本です。

〈登場人物 〉

〇執事

→元有名人。執事では無い。メカに強いSPSの1人。

    お嬢様の事を気にかけている。口調はぶっきらぼうだが根本はとても優しく面倒見が良い。


〇お嬢様

→お嬢様では無い。憑依型の有名女優

     突然女王様スイッチが入る。SPSの1人。

     美人でサバサバした性格。ある特殊な才能を持つ。

※タイトルの「SPS」とは

スペシャル

ファントム

シーフ

→秘密の怪盗という意味です

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

タイトル

『SPS(エスピーエス)』

作:七海あお

執事…

お嬢様…

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

【STORY】

<シーン︰屋敷の廊下>

■お嬢様と執事が向かい合って立っている



執事

「おかえりなさいませ、お嬢様。本日も大変お疲れ様でございました

(舌打ち)

これで満足か?」


お嬢様

「そう!これだよこれ!なーんか物足りないって思ってたんだけど、やっぱり執事といえばこのセリフだよなー」 


執事

「ったく、まさか俺が執事とはねー」


お嬢様

「はぁー。最高。あんた、顔と声は良いわよねほんと」


執事

「あのなー?ったく…おめぇこそそんなんで大丈夫なのか?そもそもお前、お嬢様ってガラかよ?激しく似合わねー」


お嬢様

「ん?なんだって?あ?」


■睨みながら執事の耳を思い切り引っ張るお嬢様


執事

「痛ててて

わかった。わかったから今すぐその手を離せ」


■不服そうに執事の耳から手を離すお嬢様


執事

「ふー。耳ちぎれるかと思ったぜ。お前なー?そのムカついたらすぐ手が出る癖、なんとかなんねぇーのかよ?ったく」


お嬢様

「んー?どこかのエセ執事のお口が悪いから、教育して差し上げたのよ?そんなんでバレずに任務遂行出来んの?あーあ、ほんと先が思いやられる」  


執事

「安心しろ!

俺を誰だと思ってやがる

もちろんちゃんと怪しまれない様にうまーくやりますよ?

お前の方こそ

本物のお嬢様に見える様にしろよ?

せめて、明日の朝までは。な?」


お嬢様

「私を誰だと思ってんだ?本番はちゃんと上手くやるさ。散々目の前で見てきたお前が一番良くわかってんだろ?あたしの本番の強さ。お前こそ、脚ひっぱんなよ?この任務だけは、何がなんでも成功させなきゃならないんだから」


執事

「ああ。そうだな。にしても、お前のその教育スキル、ひっさびさに見たけどやっぱ怖ぇーわ。庭にいたドーベルマンが、まるで子猫みてぇにお前の脚にすり寄って来た時は、さすがに寒気がしたぜ」



■突然お嬢様の女王様スイッチが入る

 


お嬢様

「人間だろうが動物だろうが関係ない。性別がオスならば、私に調教出来ない

者はいないのよ?」


執事

「残念ながら俺にはその能力、一切通用しねぇけどな?」


お嬢様

「あなたにはバディーでいてもらわないと困るから、本格的にしてないもの。ねえ?今度試してみる?」


執事

「いや、遠慮しとく…

お嬢様

「なに?怖いの?」


執事

「怖くねえ!ってか、俺に縛られる趣味はねぇの。俺は断然攻められるより攻めたい派」


お嬢様

「わかんないわよ?そういう人ほど案外、攻められたい願望が眠ってて、一度気づいたらハマっちゃうもんなんだから」


執事

(ためいき)

「お前の最近のその女王様キャラどうにかなんねぇのかよ?調子狂う。さっきだってお前、別に手錠かけりゃ済むのに、わざわざあの執事連中、縄で縛ってたろ?」


お嬢様

「あのね。手錠なんて本気出したら簡単に外れんのよ?こんな屋敷に仕える執事なら、最大に警戒して当然でしょ?

それに、やっぱり拘束するなら縄が一番。私の縛り方はそう簡単には抜けられない」


執事

「へぇー。そういうもんなのか。確かに何か色々絡み合って複雑な縛り方してた様な…」


お嬢様

「それに、最初は抵抗してるのに、縄で縛り出したら段々と抵抗出来なくなって諦めて堕ちていくのを見るのがね…最高に気持ち良いの」


執事

「お前…やっぱりただの趣味じゃねぇか!」


お嬢様

「人の肌に縄が食いこんでいく感触がね、縛りながら手に直接伝わるのよ。それがたまらなく気持ち良いの。

縛られてる時の表情を見るのも、また格別…


まあ、今回は服の上からっていうのがなんとも残念だったけど」


執事

「あのなー?任務に趣味を持ち込むな趣味を」


お嬢様

「えー。良いじゃない。なんでもやるからには楽しまなくちゃ」


執事

「はいはい。さすがにわざわざ服脱がして縛ってる様な時間はねえよ。タイムリミットは夜明け、太陽が登るまで。チャンスは1度きり、絶対、失敗できねぇんだからな」


お嬢様

「そうだ!今度、ちゃーんと時間がある時にすみずみまで調教してあげるわね?大丈夫。怖がらなくて良いのよ?私が、新しい扉を開いて、あなたも知らないあなたの本能を目覚めさせてあ・げ・る♡」


執事

「人の話聞けよ!


で?どうする?お前の事だ、どうせちゃーんと調べて来てんだろ?」

 


■素に戻るお嬢様

 


お嬢様

「もちろん。何も準備しないで私がここにいるなんて有り得ないもの。


えっとー…確かここら辺…


あ、あった!

そこの騎士の置物動かして?その後ろに隠し扉がある」


執事

「あー。こいつか?


よいしょっと。へぇーなるほど?この後ろになにかがあるのは間違いねぇな。

ご丁寧にパスワードつきだぜ?」


お嬢様

「どれくらいでいける?」


執事

「ちょっと待ってろよー?

これで繋いでっとー…

あー。見かけの割に中身は単純だから

1分もあれば余裕だな」


お嬢様

「へぇー。これを1分?さすがメカオタクだわ」  


執事

「オタクって…


せめてスペシャリストと呼んでくれ」


SE:電子音


執事

「よっし!開いた!今日も俺様完璧」


お嬢様

「え?1分経ってなくない?」 


執事

「俺に操れない機械など、この世に存在しねぇんだよ」


お嬢様

「うん。ドヤ顔と決めセリフはもう済んだ?

さっさと行くわよ?」


執事

「お前なー?俺のせっかくの決めどころがその一言で台無しなんだが?


ったく…

もう少し俺にちゃんとカッコつけさせろっての…」


<シーン︰地下室>


お嬢様

「うわー。広っ。

ここが地下室かー。

さっきも思ったけど、いちいち無駄に広くない?


この屋敷、使用人達は基本的に仕事が終わったら別棟(べつむね)にいるんでしょ?

なんか今日は特別にこの屋敷にいたって言ってたけど…」


執事

「まあ。この国トップの財閥だからこんなもんだろ」   


お嬢様

「こんな広い屋敷に普段はお嬢様一人で夜を過ごすのか…なんて…」


執事

「さびしいだろうな」


お嬢様

(かぶせて)

「羨ましいの」


執事

「そっちかよ!」


お嬢様

「だって羨ましいでしょ?こんな広い屋敷にたった一人って」


執事

「そんなん、最初だけだ。3日で飽きる…」


お嬢様

「さすが、元お坊ちゃま。へぇー?あんた、さびしかったんだ…」


執事

「うっせぇ!」


お嬢様

「にひひ。私が慰めてあげようか?」


執事

「だーかーら。俺の話は今はどうでも良いんだよ!で?これ、どうすんだ?とりあえず俺はパスワードまでは解除するけど、その後のこれ、声紋認証だぞ?」 


お嬢様

「あー。それなら大丈夫」


執事

「はっ?まあ、大丈夫ならいっか。とりあえず解除してるから、お前一応見張っとけよー」


お嬢様

「はいはい。わかってるってー」


執事

「なあ?」 


お嬢様

「ん?」


執事

「お前、やめんの?」


お嬢様

「あーもう聞いた?」


執事

「ああ。ボスが言ってた」


お嬢様

「正直迷ってる。向いてないかなって」  


執事

「散々こんだけやってきて、今更向いてない、ねー」


お嬢様

「あんたが来る前は、何人も辞めてったから。短いのは3日持たなかったかなー。あたしほら、見た目こんなんでしょ?みんな幻想抱いちゃうのよねー。

優しい美人ー。みたいな?で、実際中身こんなんでしょ?

勝手に失望して去ってくのよ。きっと誰かといる事にそもそも向いて無いてないんだよね、あたし」


執事

「まあな。黙ってりゃほんとスタイル良い美人だからなーお前。そりゃ幻想抱いたり、驚くやつもいるだろ?でも、こっちがほんとのお前なんだろ?」


お嬢様

「そっ。こっちのが素のあたし」 


執事

「それなら、そのままいりゃいいじゃねえか。素のままで受け入れてくれるやつと居りゃあ良い…

  

(ため息)

ってか…

ほんと素直じゃねーよなお前」


お嬢様

「はっ?急になに?」


執事

「お前が本当に迷ってんの、ほんとはそこじゃねえだろ?

誰にウソついても良いけど、自分にだけはウソつくなよ


そうやってウソを塗りたくってっと、いつか見えなくなっちまうぞ?

自分の本当の気持ち」


お嬢様

「私の、ほんとの気持ち…」


執事

「なあ?人間なんて年重ねていきゃ身体の無理もきかなくなるし、それこそ需要っていうのか?

周りから必要とされる事も減ってくかもしんねぇ


けどさ、そんなもんに振り回されていいのか?自分の人生ぐらい自分で決めて、ちゃんと主役でいろよ。いつづけろよ。お前、ほんとは好きなんだろ?仕事」


お嬢様

「うん」


執事

「即答かよ。ならそれで良いんじゃね?もう出てんじゃんお前の答え」


お嬢様

(ためいき)

「だね。ほんとだ。ちょっと優秀な新人に圧倒されてたのと、煩いハエにね、最近

ずっと付きまとわれてて…あたしにしては珍しく弱気になってた」


執事

「人を罵倒する事でしか生きていけねえ小さいやつには言いたい事言わせとけ。

所詮、人のふんどしで相撲取る事しか出来ねぇやつが騒いだところで同じ様なやつらしか集まんねぇ。

それに…どんなに取り繕ったって偽物に勝ち目はねぇし、本物は隠してたって輝く」


お嬢様

「あんたにしてはずいぶんハッキリ言うじゃない。でも、そうね。ほんと…その通りだわ」


執事

「俺にはお前が本物なのちゃんとわかってるから安心しろ。どんだけ虚勢張って強がってたって、本当は優しくて繊細で、そういうの全部、俺は知ってるから」


お嬢様

「弱ってるのわかってて、そういう事言うのズルい…」


執事

「落ち込んでんのは隠せてねぇのに?どっかの誰かさんは全然頼って来ないからなー。ここで言うしかねぇだろ」


お嬢様

「頼るの苦手なんだよ。頼って弱くなって、裏切られて、ボロボロになって立ち上がる

。その繰り返し。もういい加減しんどい」


執事

「頼る相手間違えてんだって。俺は絶対裏切らねぇよ。お前が頼ってくんなら、そばにいて支えてやる。少なくともお前の前から何も言わずに消えたりなんかしない」


お嬢様

「痛いほど知ってる。この世に絶対なんて存在しない」


執事

「そうだな。突然事故や病気になるかもだし?この星自体が滅ぶかもだしな?だとしても…未来に何が起こるかなんてわかんねぇけど、少なくとも今の俺はそう思ってる」


お嬢様

「なにそれ?プロポーズ?あんた口説いてんの?」


執事

「好きに取ってもらって構わない。だからたまには茶化さず受け取ってくれよ俺の気持ち。どうせ怖ぇから茶化して誤魔化してんだろ?」


お嬢様

「私、仕事に没頭してる時は、自分の事しか考えらんない」


執事

「知ってる」


お嬢様

「自己中だし、わがままだし好き嫌い激しいし、すぐ手も出るし…」


執事

「いまさらだな。何年の付き合いだと思ってんだよ」


お嬢様

「生まれた時からずっと施設に入るまでは家に一人だったから、誰かが家にいるって落ち着かなくて。誰かと暮らすとかそもそも私に出来るかもわかんない」


執事

「週1とかから始めるか?それとも俺ん家来るか。安心しろ。そのうち慣れるさ」


お嬢様

「あんた、私の事、好きなの?」


執事

「散々言ってる」


お嬢様

「そんなのノリだとしか…」


執事

「軽いノリで話さなきゃ、お前、逃げるだろうが」


お嬢様

「……」


執事

「で?どうせまたはぐらかすんだろうから話戻すけど、やめようとしてんのはどっちの仕事だ?表か?それともこっちか?」


お嬢様

「表」


執事

「それで後悔しねえの?全部やり切ったのか?そもそもこの仕事だって、表の仕事に活かす為に始めたんだろ?」


お嬢様

「色々顔と名前が売れてる方が、こっちの仕事もしやすいって言われてそれで仕方なくやってたのよ。そもそも私、表で目立つの好きじゃないし、あんな煩いハエがいるなんて聞いてない」


執事

「なるほどな?最初は好きじゃなかったのにー。ってやつか…」


お嬢様

(ためいき)

「ほんとなんでもお見通しなのね、ムカつく」


執事

「お前さ、演技は上手いけど、自分の感情隠すの結構下手。ってか割とわかりやすい」


お嬢様

「え?演技上手い私?」


執事

「賞も総ナメにして世界に名を轟かせてる大女優様がいまさら何言ってんだか」


お嬢様

「わからないの。最近演じてる時の記憶が無くて…一人で本読みしてる時は色々考えてるんだけど、カメラまわるとなんも考えられなくて、カットかかって自分の演技見ても、なんか自分だって気がしなくて…どんな時だって冷静に周りが見えてないと良いものは出来ないのに、今までどう演じてたかも分かんなくて…自分に戻れる瞬間が最近少なくて、そもそも私ってなんだっけって、なんかもう色々わかんなくなってて…」


執事

「それだけ夢中って事なんじゃねぇの?」


お嬢様

「夢中?ロジカルに物事を理論立てて考えるこの私が?

 

確かに、今回のお話は設定こそあれだけど、気持ちとかは他の作品より色々理解出来る事は多かったかもしれないけど…」


執事

「テクニックだけあったって人の心は動かねえよ。結局依頼者が人間な限り、人の心を本当に動かせるのは人の心でしかねえ。だろ?


お前の演技には毎回持ってかれる。ひきこまれるし、心動かされる。それってお前が毎回真剣に向き合って、お前の心が、ちゃんとそこにあるからだろ?」


お嬢様

「なるほど。夢中になってたのか…最近表も裏も同じでよくわかんなくなってた」


執事

「で、今回の役は、もしかして女王様か」


お嬢様

「当たり。いろんな理由で男性不信になった主人公が女王様になって男性を自分の意のままに操る事によって、自分の傷と向き合いながら成長していくって言う」


執事

「納得した。それで最近、妙に女王様キャラが発動してたわけだ…」


お嬢様

「あたし、調教は得意だけど、それを楽しいとか1度も感じた事なかったから。任務の為に必要に迫られて身に着けた能力だし…

ほんとはあたし人に飼われるなんてごめんだし。


まあ、ある意味組織に飼われてはいるんだけどこの状況。だけど、あたしにだってプライドがあるのよ。例えあいつらの手のひらの上だったとしても、あたしにだって感情がある。だから、自ら堕ちたい人間の感情も、相手を支配して喜びたい感情も全然わかんなくて…」


執事

「それで最近の任務、そんな感じの事ばっか1人でやってたのか…」


お嬢様

「おかげで、だいぶわかっては来たけど」


執事

「そりゃ、3か月間毎日女王様やってりゃな。ほんとお前のそういうとこ、尊敬する。ある意味狂気的でもあるけど」


お嬢様

「だって、知らないものは演じられないもの。全部じゃなかったとしてもそこに1mmも本物が無ければ、温度も湿度も、ましてや相手を動かすほどの引力や感情なんて生まれない。偽物とわかりきっている世界の中に、それでもそれがもしかしたら本物なのかもって想わせるぐらいでなきゃ、見てる人は決して夢中にはならない。

まあ?おかげでハエもうるさいけど。ほんとにそういうお店で働いてた過去があるーとか根も葉も無い噂流してさ?人の不幸は蜜の味なんでしょうね?清純のイメージで売ってたからなー。みんなしてこっちが本性だ、ずっと騙されてたんだって、まあ、ある意味素の私はこんなんだから、騙してるんだろうけど…」


執事

「そんだけお前の演技が凄いって事だろ。あ。頼むから、人殺しの役で本当に人殺してみるとかはやめてくれよ?」


お嬢様

「失礼ね!いくらあたしでもそこまで馬鹿じゃないわよ!」


執事

「わかってる!信用はしてる!

ただ、お前のその演じる上でのプライドってほんと凄まじいもんがあるからさ…」


~間~


お嬢様

「だったら…あんたがそばにいて止めてよ」


執事

「はっ?」


お嬢様

「そんな事無いって思うけど、もし心配なら、あんたがそばで見張ってて危ないって思ったら。止めてよ、ちゃんと」


執事

「それって…」


お嬢様

「さっきの返事。嫌なら良い」


執事

(吹き出して)

「ほんと可愛くねー女」


お嬢様

「うるさいわね。嫌ならいいいわよ別に?」


執事

「しょうがねえなぁ、お望み通りそばにいて見張って…俺がちゃんと止めてやるよ」


お嬢様

「あっ!一緒に住むなら一つ条件があるんだけど」


執事

「はっ?条件?」


お嬢様

「あんたの歌が毎日聞きたい」


執事

「えっ?」


お嬢様

「世界的に有名だったシンガーソングライター様?あたしあんたの歌好きなのよ。毎回聞く度心動かされんの!いっぱい支えてもらったの!

あんたが引退するって聞いた時、実はちょっとショックで泣いたんだから。ねえ?なんでやめちゃったの?もう、歌うの嫌になった?」


執事

「いや?今でも歌ってるし、歌うのは好きだ。最初はただ、誰かに届けって歌ってた。誰かの何かになれたらって…でもある日気づいちまったんだよな」


お嬢様

「何に?」


執事

「俺はお前の為にだけ歌いたいんだって」


お嬢様

「!?」


執事

「どうだ?今のドキッとしたろ」


お嬢様

「悔しいけど…うん。した…」


執事

「ふーん。かわいいじゃん」


お嬢様

「だって、そんな真剣な瞳で言われたら、信じないわけに、茶化すわけにいかないじゃん」


執事

「なるほど。お前は真剣な俺の瞳と歌声に弱いと。それは良い事知ったなー」


お嬢様

(照れ隠しして話題をそらすように)

「あー、ねえ?どうでも良いけどあんたいつまでかかってんのよ!まだ解けないわけ?」


執事

「いや?もうとっくに終わってるけど?」


お嬢様

「はっ?それを早く言いなさいよ!」


執事

「こんな時でもなきゃ、お前は本音言わねぇだろ?だから逃げられない環境をあえて選んだんだよ」


お嬢様

「策士め」


執事

「おかげでかわいいお前が見れたしなー。やっぱ俺、天才だわ」 


お嬢様

「言ってろ」


執事

「で、声紋認証はどうすんだ?」


お嬢様

「それならほら…到着したみたいよ?」


■慌てた様子で地下に来たお嬢様の両親


執事

「おおおっと、動くなよ?お嬢様はちゃんと無事だ。すぐに会わせてやるよ。だがその前に…


この金庫、さっさと開けてもらおうか?」



SE:電子音



執事

「よーし開いた!さあーて?世界トップの財閥様のお宝はっと…はっ?なんだこれ…」


お嬢様

「爆笑」


執事

「何笑ってんだよお前!」


お嬢様

「やっぱりね」 


執事

「はっ?なんだやっぱりって…」


お嬢様

「今回の依頼は2つあったの。お嬢様から言われた、この金庫の中身を全てあげる代わりに私を誘拐して欲しいっていうもの。それともう1つ」


執事

「はっ?俺聞いてねぇぞ?」


お嬢様

「言ってないもん」


執事

「はっ?なんで?」 


お嬢様

「そもそも別のチームの任務だったから…けど、あいつらヘマしてね。任務失敗したのよ。さっきあんたをこの屋敷で待ってる間に連絡があった。まあ、ある意味成功とも言うのかもしれないけど…」


執事

「はっ?意味わかんねぇ…」


お嬢様

「いくらなんでもセキュリティ手薄過ぎでしょ?あたしたちはむしろここに連れてこられたってわけ」


執事

「はぁ?」


お嬢様

「ほんと、似たもの親子ね。やられたわ。まんまとこのお嬢様の両親に」


執事

「あのさ?まだわかんねぇんだけど…」


お嬢様

「思い出して?本来別棟(べつむね)にいるはずの執事やメイド達がなぜ今日はここにいるの?考えれば分かること。それはきっと、今日が特別な日だから」


執事

「特別な日…」


お嬢様

「でしょ?こっからはあくまで私の想像なんだけど…お嬢様。今日、あなたの誕生日なんじゃない?ねぇ?」


執事

「えっ?おまえ、いつの間に」


お嬢様

「自分の誕生日でも仕事を優先する両親を、自分が誘拐させる事で困らせたかった。いや…確かめたかったのよね?あなたへの愛情を…」


執事

「……」


お嬢様

「そして、ご両親も、あなたの誕生日を祝いたい気もちは一緒だった。だから、私達の組織に、あなたとは別の依頼をした。自分達を誘拐して欲しいと」


執事

「!?」


お嬢様

「大きすぎる権力というのも、時に考えものね。ただ大切な人の愛情を確かめるのに、ただ、大切な人の特別な日を祝うのにこんなにおおがかりな事になるんだから。でも、なんか。国のトップがこんなに血が通ったあったかい人達なんて、なんかほっとした」


執事

「そういう事か…あー。お嬢ちゃん。そうだよな?長年放置されて、いまさらそんな事言われても信じらんねぇよな?だったら、自分の目で確かめて見ろ。俺も着いてってやるから」



■お嬢様、おそるおそる金庫の中へ入っていく

 


執事

「今日までお前が書いただろう絵や、手紙とか色々か?すげぇ数だな。

あ、この小さい服は、お前が着てたもんか?それに…

おっ!DVD。

なあ?プレイヤーあるし中身見てみろよ」


お嬢様

「確かに、あんたの両親は忙しすぎて、一緒に過ごす時間はほとんどなかった。あんたに寂しい思いをさせていたのも事実。でも、愛情が無かったわけじゃないんだ」


執事

「なるほどー。使用人達にカメラ回させて、その場では見れなくても、ちゃんとお前のいろんな初めてを見て、成長を喜んでたんだな。ここにあるもんは、正直俺たちにはなんの価値もねぇガラクタだ。けど、わざわざこんな大層な金庫で護りたいぐらい、あんたの両親にはたいせつな宝物なんだ。それこそ、金とか宝石より価値があるってわけか。すげぇな、お前の親」


お嬢様

(ためいき)

「愛してるって思ってんなら、これからは、もう少しちゃんと言葉と態度で伝えてくださいね?

未来に愛情を注ぎ続けるのも良いですけど、今をきちんと見てなきゃ、大切なものをいつか失いますよ?

仕事が大変なのはわかります。でも、彼女が、私たちの所に来て、自分を誘拐して欲しいって言った気持ち、どうかわかってあげてください」


執事

「お前もだぞ?黙って聞き分けの良いフリしてりゃ、どっかでこうやって限界が来るんだ。こんなんなる前に、ちゃんと諦めずに自分の気持ちを伝えて分かり合う努力をすること。良いな?おし!約束だ」


お嬢様

「ああ。あいつらにはちゃんと説明しておきますから。最近調子乗ってたから、良い刺激になったでしょう


そうだ

色々準備終わってるんで、年に1度しかないこの日をちゃんと楽しんでくださいね?彼女とみなさんにとって素敵な1年になりますように。ご依頼ありがとうございました」


執事

「Happy Birthday。これからの人生に、幸多からん事を…」



~間~  



後日…

<執事の家>

執事

「お?手紙か?」


お嬢様

「うん。ありがとうって。あれから少しは話したりしてるみたいよ?」


執事

「なら良かった。今回の任務は久しぶりに心があったまったなー」


お嬢様

「ね。なんかほっこりしちゃったー。そうだ。あなたの寂しいはちゃんと埋まった?」


執事

「さあなー。まっ、今はお前がいるから寂しさを感じる暇も無い」


お嬢様

「寂しくなったら、私がいつでも埋めてあげるからね?」


執事

「ありがとうな。で、今回の役は?」 


お嬢様

「んー?彼氏が好きで好きでたまらない彼女♡」


執事

「なるほどな。通りで最近ずーっとひっついてるわけだ。ほんと憑依型だなお前


いろんな女と付き合ってるみたいで飽きねえわ」  


お嬢様

「ふーん?他の女なんていたんだー?

知らなかった。


ねえ?スマホ見せて?あたし以外の女の連絡先なんて今ここで全ー部消してあげる」


執事

「はっ?ちょっ、お前落ち着けって。

ん?あっ!これ!


お前!ちょっとヤンデレ入ってんじゃねえか!」


お嬢様

「他の女に会いに行けないように、この縄で縛ってあげるわね?」


執事

「結局縛るのかよ!


ってかその縄どこから持ってきた!

あと、怖いからその包丁おろせ!な?」


お嬢様

「ねえ?今の怖かった?」


執事

「ああ。すんげー怖かった」


お嬢様

「やったー」 


執事

(つぶやく様に)

「うん。やっぱ笑ってる方がお前らしいよ」


お嬢様

「なんか言ったー?」


執事

「なんでもねぇ」


お嬢様

「あっ!そういえば今日、まだ1回もキスしてない。もうこんな時間なのに…」


執事

「はいはい」


お嬢様

「んー」 


執事

「んー」 



SE:目覚まし的な電子音



執事

「あー残念。時間切れー」


お嬢様

「えっ?今回ぐらい休めたり…」


執事

「他の人間全部埋まってるって」


お嬢様

「マジか…」


執事

「しょうがねぇな。人の欲望に限界は無いからな」


お嬢様

「そりゃそうよね。だからこそ、この組織が成り立つわけだし?」


執事

「お前、なんだかんだ言って好きだろ?この仕事」


お嬢様

「ええ。女優の次に好きよ。こんな私でも直接誰かの役に立てるって案外嬉しいのよね」


執事

「じゃあ…行きますか」


お嬢様

「ええ」


執事

「おっと、忘れもん」


お嬢様

「えっ?なに?」


■彼女にキスをする


お嬢様

「!?」


執事

「ははっ。顔真っ赤になってやんの。

これ以上は我慢出来なくなるから

任務終わってからな?」



~間~




お嬢様

この国には特殊な怪盗のいる組織が存在する

その依頼は、依頼者の思いが強ければ自然と組織に届くという


執事

犯罪にならない範囲で


お嬢様

望むものを1つ

何でも奪って盗む 


執事

なあ?

お前の望みは何だ

それが本物なら…

俺たちSPSが叶えてやるぜ?

ん?俺たちか?俺たちは…


お嬢様

シークレット

ファントム

シーム

秘密の怪盗。よ♡

END