Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

東洋大学 TIPS

ダイバーシティ勉強会アイヌ編 を開催しました（後編）

2022.01.03 12:00

　TIPSではダイバーシティをテーマに勉強会を行っています。今回は、アイヌ民族をテーマに、スズサップノ良子さんをゲストとしてお呼びし、アイヌ民族・文化についてお話を伺いました。後半では、スズサップノ良子からうかがったアイヌの文化について、より詳しくまとめます。

■ 神々と生きるアイヌ民族

　アイヌ民族にとって『神＝カムイ』は神聖な存在であり、同時に身近な存在でもあります。アイヌ民族は「カムイは人間からの祈りを欲している」と考えます。人間からの祈りを多くもらった神は、他のカムイに対して威厳を示すことができると伝えられています。そんな、人智を超えた存在であるカムイですが、アイヌ民族は災が起こると神々に対して「どうしてこんなことをするのか！」と、抗議をすることもあります。このように徹底的に対話することを「チャランケ」といい、ディベートや議論という言葉に近いそうです。この、神々とも対等に議論することは、新鮮であり、とても興味深いお話でした。「チャランケ」は人間同士、人間と動物などの間に問題が起こった場合も解決法として行われてきたそうです。　日本文化では古代から精霊信仰やアニミズムとも呼ばれる、八百万の神、岩や木などモノに神が宿るという教えがありますが、アイヌ文化でもこの考え方がみられます。チセ（アイヌ式の家）やフクロウ、ヒグマといった動物、川を流れる水まで、人の力が及ばないものすべてをカムイとして尊重します。料理をする鍋さえもカムイとして大切に扱うのだと良子さんは教えてくださいました。

■ 言葉は神からの贈り物

　文字を持たないアイヌ民族ですが、その代わりに言葉を大切にする文化があります。カムイモシリ（神々の世界）には言葉の倉庫があり、自分たちが使う言葉は神々から降ろされた神聖なものと考えられています。ですから、汚い言葉は絶対に使わない、言葉で人を傷つけることはしない、という考え方が浸透しているそうです。ごく当たり前のことのようで、汚い言葉や人を傷つける言葉が飛び交っている現代社会では、学ぶべき文化だと思います。文字を持たないからこそひとつひとつの、言葉を大切にするのです。

■「スズサップノ良子」としての活動

　スズサップノ良子さんはアイヌ民謡の歌い手としても活動されています。私も、高校の出前授業ではじめてスズサップノ良子さんの歌を耳にしました。輪唱が素敵で、暖かく包み込まれるような歌声が印象に残っています。良子さんは、NHKが戦後間もないに頃に録音した曽祖母の歌声のテープが見つかったことをきっかけにアイヌ民謡に興味を持ち、そのテープを聞いて歌を練習したそうです。アイヌ民謡は、輪唱や歌声を重ねて歌うのが特徴ですが、良子さんの周りにはアイヌ民謡を歌える方が少なかったため、アイヌの歌本来の特徴を楽しめない時期もありました。しかし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの札幌で行われるマラソン競技に合わせて、北海道中からアイヌ民族が集まって伝統舞踊を披露することになり、良子さんもその総勢80人余りの一員として参加し、北海道各地に伝わる伝統歌を仲間と共に楽しく唄う機会を得たそうです。

　そして、なんと！今回TIPSで開催した勉強会では、良子さんがその歌声を披露してくささいました。画面越しという環境ではありましたが、参加したメンバーは初めて耳にするアイヌ民謡に聴き惚れていました。

■ 最後に

　今回の勉強会では、他にも様々なことについてお話してくださいました。アイヌ民族の考え方には日本人に広く浸透している考え方と似ているところがたくさんあり、アイヌ語の語順が日本語と同じであることからも、親しみを感じやすい文化だと思いました。日本の先住民族であるアイヌ民族ですが、残念ながらまだまだその文化については全国的には周知されていないのが現状です。TIPSではこれからも、ダイバーシティを発信する取り組みの一環として、アイヌ文化に注目していきたいと思います。

（イベントレポート：山崎翼）

■ スズサップノ良子さん プロフィール


【経歴】


【良子さん出演CM】