Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

#020 発掘について

2022.01.04 11:49

by Motandhel

 以前も書いたとおり、僕とアズルがその日会って何をするかは決まっていないことがほとんどだ。ごくたまに前日に行く場所を決めることもあるが、だいたいは会ってからその日することを決める。行きたい場所がないかや、やり残している仕事がないかをお互いに確認するのだが、大きな用事がないときはアズルの発掘に用事に付き合うことが多い。

 彼の発掘の用事についていくことで、僕は今まで足を運んだことのなかった色々な土地を訪れることができる。雄大な自然の中、ときには危険がすぐそばにあるような場所で、美しく興味深い道具を広げて発掘作業をするアズルの姿を眺めるのは毎回心が躍る。彼はときどき僕が退屈していないか心配そうに声をかけてくるのだが、彼を見ていて飽きることなんて一度もない。

 発掘をするアズルの姿はとてもかっこいい。僕はアズルの背中を眺めるのがとても好きなので、彼が地面に膝をついてあれこれ考えながら手を動かしている様子を隣でそっと見守る。たまに彼がちょっとだけ顔を上げてみたり、周りをきょろきょろ見渡したりする仕草もとてもチャーミングだ。彼にそれを伝えると、彼自身は自覚がないようで、今度は僕が発掘しているのを見たいと言い出した。

 僕は発掘が出来ない。いや、正確に言うと出来なかった。周りで発掘と占いが出来るのはミルだけで、彼はいつもそうしたことを一人でやってのけるので、僕はやり方すら知らなかった。もともとアズルの姿を見て興味は持っていたので、この前アズルと一緒にソリチュードの古遺物収集家の館を訪ねて占いと発掘の手順を習いに行った。アズルは僕が練習で発掘している横でずっとその様子を見ていた。僕が発掘し終えると彼はいつものようにニヤッと笑い、面白かったと言った。アズルはたまに二人でいるときに発掘に関するジョークを口にしたりするので、僕は彼がちょっといじわるな顔で笑うときはどきっとしてしまう。彼は僕がしゃがんで何かをしているとすぐーーいや、これ以上はやめておこう。

 とにかく僕は発掘が出来るようになった。しかしどうもやはりこれは得意な分野の作業ではなさそうだ。手先が不器用な僕は占いはまだしも発掘は向いていない気がする。ミルには発掘が出来るようになったことは言わないでおこう。アズルが面白がってくれるなら、二人でいるときにたまに挑戦するくらいならいいかもしれない。彼のあの含みのある視線を背中に浴び続けるのはなかなかのプレッシャーを感じるのだが、僕も同じように(あるいは恐らくはそれより遥かに熱心に)彼の背中を見つめていたのだから、文句は言えないだろう。