音大入試が楽になっても入学したら同じ音大生。
もう30年も前の話になりますが音大受験の話をここで何度か書いています。
音楽のスキルもトランペットの実力も全然足りていなかった高校生の頃の僕は、生活の100%をトランペットと音大受験のことで埋めていました。これ、全然大げさな話ではなくて本当に生活のすべては音大受験、音楽のスキルアップのことしか考えておらず、移動中は楽語辞典を開いて暗記して、今だから言いますけど、入試課題にあった英語以外の授業は全部楽典の勉強をしていました(真似してはいけません)。朝は確か7:00くらいだったと思いますが開門と同時に学校へ入りトランペットの練習をして、放課後もピアノのレッスンがなければ追い出されるまでトランペットを吹いていた、という感じです。部活は高2の前半で辞めました。
ここまで必死だったのは、冒頭でも書いたように入試課題の楽典、聴音、新曲視唱、ピアノ、そして最も重要なトランペットも含め、すべてが全然ダメだったからです。
中学で吹奏楽部に入るまでは音楽に関わることなく生活をしていて、楽譜も正しく読めないままテキトーに演奏していた中学生が、高校1年生になって思い立ったように受験対策レッスンを始め、そこからピアノ(+聴音、新曲)のレッスン、トランペットレッスンも受け始めて、自分の音楽レベルがあまりにも低いことを痛感したからです。
話は現在に戻ります。僕は決して羨ましいとは思いませんが、今の音大入試は30年前に比べたら、総合型選抜(AO入試)を導入するところも増え、専攻実技試験だけのところもありますし、相当受験に対する安心感が高くなりました。
それこそ僕が受験生だった頃は一般入試しかなくて、しかも、いわゆる「滑り止め」をしたい学校がなぜか本命の大学の試験日程と(示し合わせたかのように)同じだった記憶があります。だから本当に一発勝負。これがダメなら浪人確定だったので試験期間中は心臓がいくつ合っても足りませんでした。倍率も僕の時のトランペット専攻は確か5倍くらいあった記憶があります。団塊ジュニア世代の末端ですからね、まだまだ子どもの多い時代でした。
入試内容が減って、言ってしまえばかなり緩くなった専攻を狙えば合格しやすいため、音大の門戸は以前より広くなった印象があります。では音楽の知識がなくても、例えば音階がわからなくても、ピアノが弾けなくても良いのか、と言えばそれは大きな間違いです。
入学して授業が始まれば、当然そうした音楽の基礎的知識、スキルを持っているという前提で授業は進みますし、課題も出ます。そうした点から考えると、自己責任や自己負担が今のほうが重いと言えるかもしれません。
ともかく、入学すると授業、レッスン、課題、練習などすべきことが尋常ではない量なので、大学に入ってから基礎を学び直す時間はないと思ったほうが良いです。
ですから、今、音大を目指そうとしている中高生の方、実際に受験勉強を始めている方には、入試課題がどうであれ、入学する前までに徹底的に音楽の基礎知識(ピアノ、楽典、ソルフェージュ、その他音楽の歴史や作品知識、雑学など)と専攻のスキルを可能な限り高めておきましょう、と伝えたいのです。
このブログではないもうひとつの、音楽に特化したものしか書いていない「ラッパの拭き方:Re」というブログがあり、そこで以前音大についての話を沢山かきました。よろしければそちらもご覧ください。↓こちらがリンク先です。
荻原明(おぎわらあきら)