逸翁美術館 『茶の湯道具始』
150点の茶道具がずらりと並ぶ本展は、茶事の流れを追体験するような構成で始まり、最後は茶室が再現されて終わる。説明文も詳しく書かれていて茶道や茶道具に詳しくなくても満足できる内容だ。テーマは5つに分かれている。
①寄付〜炭手前の道具
②濃茶席の道具
③薄茶席の道具
④懐石の道具
⑤茶室室礼
茶事では煙草盆が何度か登場して正客の座る場所を示したり、ゆっくり寛いでくださいねという意味があるが、昔は実際に煙管で煙草を吸って待つことはあったのだろうか。本や写真で見ると、今は煙草盆に火入と灰吹しか置かないことが多い。また、煙草盆は江戸時代になってから茶事に登場したと言われている。
「井戸茶碗 銘 きたむき」「唐津奥高麗茶碗 銘 残雪」「萩井戸形茶碗」の3つを見ることができたのは今回最もうれしいことだった。「井戸茶碗 銘 きたむき」はその名の通り、北向道陳が所蔵していた。奥高麗とは高麗茶碗に似せて日本で作ったもの。朝鮮半島で作られた井戸茶碗に最も近いのが萩焼であり、「萩井戸茶碗」に梅花皮はないが、井戸茶碗に倣っているのは見て明らかだ。
井戸茶碗は、大井戸(名物手井戸)、青井戸、古井戸、井戸脇、小貫入と分類され、その中でも大井戸に関しては7つの条件が揃ったもののみが大井戸と呼ばれる。以下にそれらの条件を書き出してみよう。
① 枇杷色の肌(鉄分を含む土と透明の釉薬)
② 轆轤目がある
③ 高台に梅花皮がある
④ 高台の真ん中が竹節状になっている
⑤ 高台内に兜巾がある
⑥ 細かい貫入がある
⑦ 見込が深い
井戸茶碗についてはいつかまた改めて書きたいと思う。
私は豊臣秀吉があまり好きになれないが、千利休を知る上でどうしても欠かせない存在である。猿だのハゲネズミだのと呼ばれ、背が小さかったそうなので、しわくちゃの小さい爺様という印象が強い。狩野光信による「豊臣秀吉画稿」は、私が想像する秀吉よりもきちんとした人物に見える。彼の側近によって何枚かある下絵の中から選び抜かれた1枚らしい。
逸翁美術館の半券を提示すると、徒歩ですぐの小林一三記念館の入館料が¥100引きに。