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7th heaven side B

向日葵を君に_3

2017.08.29 14:45

part 3: 向日葵と太陽

2016/08/10 服部の日記念 Pixiv 版


「好きや」


たったそれだけを言うために、半年かかった

オレを、人はヘタレと呼ぶ


オレにしたら、空飛ぶ飛行機からジャンプす

る方が、よっぽど簡単なんやけど


進路はとりあえず、同じ国に向け飛び立つ事

は確定して、出願も、必要な資格試験も互い

にクリア済み

後は、志望校からの返答待ちやねん


せやから、高校最後の夏は、事件三昧や!と

意気込んでいたオレは、連日連夜飛び回って

いたんやけど


「そこまでや、平次」


親父から、探偵活動の停止を宣言された

府警へも、道場の出入りはええけど、他へは

アカン、と


理由は簡単やった

来年は、和葉と一緒に日本を離れる

せやから、みんなにも、本来在るべき姿を思

い出させるため

オレが居なくても、早期解決出来るように、

呼び出しを禁じる通達が出たんや


それだけでも、イラっとすんのに

オマケに、和葉が居らんねん


「蘭ちゃんとこ、コナンくんも家事、出来へんみたいやねん」


附属大学への推薦入試を控えていると言う姉

ちゃんの負担を減らそうと、和葉、家事をし

に行ってしもうてん

それも、オレの知らん間に


つまり、工藤と毛利探偵の世話を、オレの和

葉がしてんのや💢


「オレの和葉、いつ返してくれんのや?」

「オレの?はっ、まだオレの、じゃねえだろ

だって、和葉ちゃんの指には何も無いし?」


こっちでも、モッテモテだぜ?

和葉ちゃん💕


と笑う工藤を、何遍、東京湾に沈めたかわか

らんな💢

もちろん、頭の中で、やけどな


オレがケジメをつけへん間は、絶対、返さへ

んと言う工藤は、トドメを刺した


「で?いつ、オメーの生き様、見せてくれる

んだ?」


あぁ、さいでっか

ほな、見せたるわ

しっかり、見ておけ!


言うて、電話を切って、オレは階下に降りた


「で?どうするつもりですか?」


うわぁあ!出た!

オレの声は、階下に居たオカンに筒抜けやっ

たらしく、澄ました顔のオカンは、にやり、

と笑うと、まずは座れ、とオレに言う


どうするも、何も、迎えに行ったらええんや

と言うオレに、目を丸くして、タメ息を吐く


「全くの無策とは、情け無い💢

アンタ、一体、どこの子やねん?」

「一応、アンタの子やと思うけど?」


アホ!と扇子で叩かれたオレ


「アンタは口が達者や無いんやから、余計、

誤解されやすいんやなぁ」


そう言う子は、駆け引きには向かん

ストレートに行くしか無いやろ

何せ、相手はあの天然娘やし(笑)

無垢でなぁ、可愛らしい子やから、案外、手

ごわいと思うで?


口で足らんようなら、間違いようも無い物で

も渡したらええ

一対でな、と言い、台所へと消えて行った


一対ねぇ・・・

まぁ、あてが無い訳でも無いんやけど


どないしよう、とか、考えとる時間は無いか

と、オレは思い切って隠し貯金を掴んで、あ

る場所へとバイクを駆った


それから、オレは関係各所に筋を通して、出

来上がったそれを持って、東京へと向かう


和葉に、工藤らに内緒で、理由付けて出て来

るように言って、姉ちゃんらが暮らす街より

も、少し手前の駅で待ち合わせた


そこは、以前、事件で訪れた事があって、駅

の近くに景色のええ公園もある事を知ってい

たからや


「平次!」


白いワンピースに水色のカーデガンで現れた

普段とは違う、露出控えめなコーデの和葉


「姉ちゃんの差し金か?」

「ちゃうちゃう!洗濯の都合や」


あはは、と笑う笑顔は元気そうや

ちょっとだけ痩せた気がするんは、近年、必

ず夏バテする和葉やからな

でもこの程度のダウンは、すぐに取り戻せる


「ちゃんと水分とっとけよ」

「赤ちゃんや無いんやから、ちゃんとしとる

に決まってますぅ〜」

「そう言うて、去年も今年も脱水症状で倒れ

たんは、どこのどなたですかぁ?」

うっさいわ、あほ、と言ってどつかれる


オレ、今から一世一代の事、しようとしとる

んですけど?和葉さん?


とりあえず、公園に邪魔が居らん事をしっか

りと確認してから、キャップのつばをONに

した


「どないしたん?平次」


のんきに笑った和葉に、オマエが好きやから

一緒になってくれ、と言うた


その時の和葉の顔


ぽかーん、や

大きな黒い瞳をまんまるに開き、おまけに、

心底びっくりしたんか、口まで開いててん


「ホンマに?」

「冗談で言えるほど、オレ、暇や無い」

「暇って」


おろおろした和葉の瞳から、ぼろぼろと涙が

落ちる


「今日、4月1日やっけ?」

「いや、ちゃうな」

「どっかに、ドッキリカメラあんの?」

「そんなん無いわ、アホ💢」

「平次、何かの罰ゲームやの?」

「は?何で、罰ゲームでオマエに告白すんね

ん、意味わからんわ💢」


せやかて、平次、いっつも持ち上げては、ど

突き落とすやんか、と、不安そうな顔


「ほな、コレ見ても、まだ信じられんか?」


ポケットからリングを2つ取り出して、オレ

は、和葉の掌に置いた


「へ?」

しゃくりあげながら、唖然としとる和葉


「あ、アンタこれ、本物やんか!」

「はぁ?オマエに偽物渡して、オレ、何すん

ねん」


え、あ、いや、その、と言う和葉に、で、オ

マエの返事は?と言う


「言わん!」

「はい?」

「せやかて、平次、私が言うた時、ちゃんと

聞いてくれへんで、どっか行ってしもうたや

んか!」


そんなおいしい状況、いつあったんや?

しかも、高木刑事に聞かれて、恥ずかしかっ

てん、と言う


あの刑事さんが一緒やったっつーと、どの事

件や?と思うオレに、和葉が手を差し出した


「ちゃんと、平次がつけて」


左手の上に置いた指輪を出して、右手を差し

出す和葉


「あほ!向きが逆や」


え?と言う和葉の掌から指輪を取って、差し

出された方とは反対の指にはめた


うん、よう似合うてるやん

オレの手にもはめろ、言うて、和葉にはめさ

せた

オレの手は、まだぎこちないなぁ


「ほな、これからもよろしゅう、言う事で」


キスでもしようか、と思うたオレの携帯が震

え始まって、和葉は平たい瞳でオレを見る


電話に出ようかどうか、と言うオレに早う出

た方がええで、と言う


どうやら、和葉の方も震え始めた様子


「あ、おばちゃん?」

「あ、おっちゃん?」


何やねん、どっかで覗いてんのか?と言うよ

うなタイミングで鳴り出した2つの携帯


「和葉ちゃん?平次にええもんもろうた?」

「平ちゃん?和葉に何かええもんもろうた

そうやな?」


あわあわと、お互いの電話に出て、へらへら笑って電話を切ると、和葉ももう姉ちゃんの

家へ帰らなアカンし、オレも帰阪のための電

車の時間やった


「せや、忘れるところやった」


和葉に紙袋を突き出して、頬にキスして先に

改札を抜けた


続きは大阪でな!と言い、走るオレを、真っ

赤な顔で手を振る和葉


その指がきらり、と光るのを見て、オレは思

わず頬が緩む


帰りの新幹線の中で、届いたメールには写真

があった


満面の笑みで、向日葵の花束を抱えてピース

しとる和葉の写真

姉ちゃんが撮影したらしく、照れながらも、

めっちゃええ笑顔やった


「やるじゃねーか」


いきなりプロポーズとは、と笑う小学生から

の電話には、有言実行や、と返した


「和葉ちゃんの幸せそうな笑顔も見られたし

オレ、みっちり家事、仕込まれたし、そろそ

ろ服部の和葉ちゃん、返してやるよ」


何と、和葉、工藤に家事を教え込んだらしいねん


「これくらい、あの平次やって出来るんや!

コナンくんには、簡単やで★」


そう笑顔で言われたら、覚えるしかねーだろ

と言う工藤


そうか、さすが和葉、としか言え無いなぁ

さすが、ただでは転ばないオンナや


ちなみに、帰阪したオレには、まだ爆弾が残

されていた


「で?ちゅーくらいはさせてもらいました?

まさか、それもせんで、言うだけ言うて帰って来た、と言う訳や無いよな?」


夜叉はそういうと、意味深な笑みを浮かべ、

オレを見て、オレの唖然、としとる顔を見て

盛大な溜息を吐いた


「アンタ、いっぺん、私のお腹に帰りなさい

一度生みなおして、性根叩きなおしたる」

「そんなむちゃくちゃな」


とりあえず、休暇中は指輪を外すな、と厳命

されて、オレはしっかり指輪焼けしてしもう

たんは、また別のお話しや


「和葉ちゃん、とっても幸せそうな顔だった

よ?服部くん、長々と和葉ちゃん、取り上げ

ちゃってゴメンね?」


今度、お詫びするから、と言う姉ちゃんの電話やった

おかげで、模試や夏期講習にも参加出来て、

順調に勉強が進んだらしい


頑張れや、と言うたオレにうん、と言うて、

電話を終えた


やきもち焼きの小学生が、後ろで騒いだから

に決まっとるやろ?


和葉ちゃんと服部くんは、夏のイメージ

和葉ちゃんは向日葵でしょ?

服部くんは太陽だよね、と笑った姉ちゃん


「せやったら、工藤は?」


と聞いたら、うーん、何かなぁ、と笑ってい

たんや

そのやりとりを聞いて、工藤が後ろで騒いだ


「わかったよ!」

新一はねぇ、月かな、と

姉ちゃんは何やねん、と言うと、うーんよく

わからない、と


ま、工藤あたりやったら、星って言いそうや

な、と思うたけど、黙ってたオレ


とりあえず、高校最後の夏休みは、相変わら

ずのドタバタと、ちょっとだけ進展したオレ

達で、時間はあっちゅう間に過ぎて行った


「おーい、和葉!遅れるで!」

「はーい」


久しぶりの制服に袖を通して、バタバタと学校へ向かう


和葉とオレの夏服姿も、もう直ぐ見納め

最後まで、後悔せんように、全力で満喫するで!と気合いを入れて、通学路を手を繋いで

駆け抜けた


向日葵を君に

Fin.