「snow害獣駆逐法」w/ウエストランド
20XX年、一部の男性陣からの猛烈なクレームによって、「snow害獣駆除法」なる法律が制定された。
これは、写メを撮るときにアプリ「snow」でクマやイヌ、ウサギなどのかわいい動物の姿に写り、本来の顔から過剰に盛ってかわいさをアピールしてくるくせに、実際はぶさいくな男は選ばない偉そうな害獣女子たちを駆逐するための法律だ。
このお法律の定める免許を取得すると、特殊な猟銃が与えられる。
銃にsnowで盛られた写メをインプットすると、銃がターゲットを認識。相手がどこにいようとも、その女子のほうへ弾丸が向かっていくのだ。
撃たれた女子はケガをするわけではない。代わりに生涯、写メで自身を加工することができなくなる。弾丸は回避不可の追尾式になっているため、一度恨みを買った女子は逃れることができないのである。
あるとき、おれは合コンでひとりの女子から見下され、とても不愉快な思いをした。
そんな折に制定されたのが、この「snow害獣駆逐法」だった。
これはいい。そう思い、復讐のためにおれはさっそく講習に参加し、猟銃を扱える免許を取得した。
自宅に戻るとインスタを検索して、例の女子のアカウントを発見した。
そこに並んでいたのは思った通り、snowで盛られた写真のオンパレード。おれはクマにデコられた一枚をチョイスして、猟銃にセットした。
スコープから覗いてみると、不思議とあの女子が見える。照準を合わせてロックオン。迷うことなく引き金をひいた。
その日から、あの女子のインスタからはデコられた写真が一切なくなった。それどころか、写真がまったく上がらなくなった。前はナイトプールなどの写真がしょっちゅうアップされていたのに、おしゃれスイーツの写真さえも上がらない。
おれは、ざまあみろと、胸のすく思いがした。きっといくら写メを撮っても盛ることができないので、アップする写真がひとつもないのだろう。もしかすると、落ち込んで写メを撮る気持ちにさえもならないのかもしれない。作戦は大成功だと、緩む頬をおさえられず、ひとり部屋で笑い声をあげた。
ところが、しばらくたって、あの合コンに一緒に行った男友達からこんな話を聞いた。
「あの子、いますっごい優しいイケメンと付き合ってるらしいよ」
おれは耳を疑った。盛って自分をよく見せることなどできないはずなのに、どうやって男にアピールしたというのだろうか。 友達はつづける。
「急に写メが盛れなくなって困ってたらしいんだけど、そんな飾らない表情がよかったみたいで。男のほうから告白してきたんだとか」
おれは怒りがこみあげた。なんだったんだ、あの法律は!
くだんの法律は、ほどなくして廃止されることが発表された。
一部の男性陣から猛烈なクレームが殺到したのだ。
「せっかく盛れなくしてやったのに、みんな幸せになってるじゃないか! 不幸なのはおれたちだけだ!」
結局のところ、そんな銃を持つようなやつらは何をやろうと相手にされないのだった。
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