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イチに農産業ハチは脅威に晒され

2017.09.15 03:25


Oliver Tickell は田園風景と食糧を守るために鍵となる生物の危うい運命について報告

花が咲き誇る牧草地における、気になって仕方がない蜂の羽音はイギリスの田舎を思い起こさせるものの一つです。しかし一体どれくらいの間これが続くのでしょうか?

 集約的で、耕地単一栽培として知られる今日の農業風景は、「改良された土地」であり、生け垣を見捨てて、牧歌的な響きなどなく鈍い音を立てながらトラクターで有毒な農薬が撒かれた畑を掘り起こしています。現代の田舎は益々静かになっていて、サヨナキドリの歌声、カッコウの呼び声、ウズラクイナのぎりぎりという鳴き声は失われてしまいました。ほんの1世代前には当たり前だと考えていた野生動物へ敵意を持ちました。

 それはただの化学物質ではありません。私たちは昔からあった植物の豊かな牧草地、恒久的な牧草地と自然のままの牧草地を壊し、消耗してきました。その牧草地はデヴォンの石炭紀の地層の草原のようなもので、幅広い花や野鳥や哺乳類、虫たちと蜂から蝶までの生物に何世紀もの間住処を与え続けてきました。長きにわたる生態系の減少は止まりません。少しずつ、私たちの田舎は色彩、多様性、豊かさ、そして回復力(レジリエンス)を失っています。

 ある特定のグループに属する虫、蜜蜂はとりわけ十分に食べられていません。なぜなら、元来の生態系の健康において、彼らは炭鉱内のカナリアのように真っ先に影響を受けるからです。イギリスでは1900年以来、20種類もの蜂が失われ、さらに35種が今日絶滅の危機に瀕し、警鐘すべき、維持不可能な速度で毎年蜂の巣は死に絶えています。

 花、花蜜、花粉や彼らが巣を作るための静かな生息地のために、専門家の要望で蜜蜂が生態系の健全性の感度の良い指標となっています。世界中で約15億ユーロを費やしていることからも農家たちの間で人気だと言えるネオニコチノイド殺虫剤、略して「ネオニコ」、農薬に対する脆弱性もまた、健全な生態系を知る上での精度の良い手がかり(指標)となっています。

 ネオニコチノイドが蜂の巣やとりわけ野生の蜜蜂の減少に関わっているという、科学的な証拠がたくさん出ています。科学者たちは化学物質が農業において頻繁に使われることで蜂を公然と殺していることを明らかにしました。しかし、蜂の免疫組織にダメージを与え、巣や花の位置に辿り着き、記憶する力を損なわせるには至らない程度であるといわれています。これらの調査結果から2013年に承認された欧州連合の規制485/2013では、ヨーロッパの蜂に対して想定される受け入れがたい危険のために、種子処理においてネオニコの使用を制限することとなりました。

 さらに悪いことに、2014年7月にはネオニコチノイドが蜂以外のものにも損害を与えていることが分かりました。化学物質の有害な影響が生態系全体へ波紋を広げています。蜂のみならず、ミミズ、鳥、水生無脊椎動物までもが巻き込まれ、農業用地の地下水や池や溝において高濃度の化学物質に晒されているのです。

 「生物多様性と生態系における浸透性殺虫剤の影響に関する世界的な統合評価 (Worldwide Integrated Assessment of the Impact of Systemic Pesticides on Biodiversity and Ecosystems)」という、浸透性殺虫剤の特別調査団 (The Task Force on Systemic Pesticides) による4年にわたる研究によると、「これらの浸透性、水溶性の化学物質を広範囲で使用することが地球規模の生物多様性に対して広域の、慢性的な影響を与えています。また、食料の安全保障に不可欠である受粉のような生態系のしくみに対して大きな悪影響を与えると言えます。」

 フランスの国立化学研究センター(CNRS)に所属する共同著者であるジーン・マークボンマタン (Jean-Marc Bonmatin) はこう述べています。「証拠は極めて明らかです。有機リン酸エステルやDDTが持つ、自然や農業環境における生産性への脅威を私たちは目の当たりにしています。」

食料生産を守るどころか、ネオニコチノイドの使用は食料生産を可能にする基盤を脅かすものです。

 その他の懸念が昨年10月に発見されました。それによるとネオニコがスプレーや晒された種よりも群生している野端や生け垣への影響の方が高い濃度を示しました。 サセックス大学の科学者によれば、アブラナ科の種子よりもポピーのような野草、ブタクサやサンザシがその5倍ものネオニコを含んでいたことが分かりました。しかも野生の花の花粉はさらに高レベルでした。

 結果として、著者は以下のように述べています。「耕地に暮らす蜜蜂の巣に持ち帰られたネオニコチノイドの97%が穀物ではなく野草の花粉からだったのです。過去や現在の現場調査は、ネオニコチノイドに晒されるのは穀物の開花時期のみで、蜂が人の手の入っていない野花で蜜を探し回っている間に薄まるものという前提に基づいています。しかし、ネオニコチノイドに汚染された作物の近くで育った植物にも汚染が広くいきわたっているため、認識しているよりも、高濃度で、長く晒されている可能性が高いと言われています。」

 そして、危険にさらされているのは蜂だけではありません。高濃度のネオニコチノイドは他の授粉者、イモムシ、そして耕作された土地の付近に住む虫といった、全ての農業生態系を侵食し、害を及ぼします。

これらすべてが、生息地の損失に対する標準的な対応の一つ(花の豊かな農地を整えて授粉者を助ける)を非常に不適切にさせます。受粉者を助けるための花の溢れる草原は蜂や他の生物を守るのではなく毒を及ぼしてしまいます。

 では、どのようにしてイギリス政府はネオニコの脅威に対応したのでしょうか。まず、2013年の485規制に厳しく反発しました。環境監査委員会 (Environment Audit Committee) に対して明るみになったときのことです。「私たちの評価では、規制を正当化するような授粉者への脅威を指摘する証拠がなかった(また未だにない)ので、これらの規制に対して反対します。」

その立場は、農業組合 (NFU: National Farmers’ Union) に追従したもので、ネオニコチノイドがキャベツ茎ノミハムシと戦うために不可欠であるという立場でした。

 昨年NFUは秋作のアブラナ科作物に対して農家がネオニコチノイドを使用することを許可するという道を外れる適用をしました。規制の下で、「多くの農家にとってネオニコチノイドを使用しないことはほぼ不可能になっている」と主張しました。農家がネオニコ処理された油糧作物をイギリスの収穫高の 5 %に値する耕作地の30,000ヘクタールに栽培することを環境食糧省 (Defra: Department for Environment, Food and Rural Affairs) が許可したことに誰も驚きませんでした。

 しかし、その後何かが起こりネオニコ処理した種の必要性は全くないという強い示唆があります。2015年、イギリスにおいてアブラナ科作物の収穫は100%ネオニコを使用していないものでした。冬には過去10年間の平均よりも13%多い収穫を得ました。一方で春は25-30%増収しました。

 しかしこれにも関わらず、NFUは2016年秋に195,000へクタールもの土地でつまり生産高の3分の1にもあたるアブラナ科作物に対してネオニコを適用することを決めました。この時、Defraはこの採用を断固として拒否しています。この拒否は根底の変革を示唆しているのでしょうか。もしかするとそうかもしれないし、そうではないかもしれません。その決定の前にあったのは、Defraの公式アドバイザー、農薬に関する専門委員会(ECP)の壊滅的な批判で、NFUの申請の中身について、とても詳細で具体的、他の対応をしようものなら、確実に法的措置を取られるような批判でした。

 その後、NFUがより狭い地域を含めた更なる申請をした後、決定がなされ、丁度この雑誌が発行されようとしていた頃でしたが、更に拒否。Defraの声明によると、ECPは「緊急認証の要件にいずれも適合しない」と判断し、よって両方とも却下されました。NFUの副社長であるガイ・スミス(Guy Smisth)は「厳しい風」と不満を漏らしましたが、デイブ・ティム(Dave Timms)、フレンド・オブ・アース(Friends of the Earth)と協働する蜂の保護活動家は、「蜂にもその他の野生動物にとっても良いニュースです」と語りました。

 イギリスの蜂とより広い生態系にとって良い知らせ、そして、歓迎すべき兆候としては、はDefraがついに、こぞってやたらに我が道を行く農産業の権益に立ち向かっていることです。しかし、私たちは興奮し過ぎるべきではありません。イギリスの環境、そして蜂に対する他の脅威が、脱退と言う6月のEU国民投票に続いて立ちはだかっています。完全EUの束縛から解放されると、EU指令に従う必要がなくなることでしょう。そこには双子の「自然法」、つまり「鳥類指令 (Birds Directive)」と「生息地および種の指令 (Habitats and Species Directive)」 という共に野生動物保護の基礎をつくるものも含まれています。

 しかし、実際にイギリス政府はEU離脱(Brexit)後に自然を護るための法律を取り除きたい、もしくはその力を弱めたいのでしょうか。「鳥と生息地の指令は」と農業省のジョージ・ユースティス (George Eustice) が、「頑固で」「精神を粉砕するような」ものだと国民投票を直前に語っています。その代わりにより臨機応変な法律や自発的な認証制度に入れ替えていきたいと考えています。「もし私たちがより柔軟であるなら、ブリュッセル向けの大量の書類をただ作るよりも環境を守るための、斬新な、興味深い方法を思いつくことに科学者のエネルギーを注ぐことができるでしょう。」と彼はガーディアン紙で語っています。

 遺伝子組換え作物とその影響について懸念される理由もあります。前環境大臣のオーウェン・ペイターソン (Owen Paterson) は、GM作物の進出を抑えるために EU を非難し、遺伝子組換え技術に反対する環境活動団体グリーンピースで「エコテロリズム」また更には「魔術」の責任の矛先を向け、英国の脱退後の方向性を示しました。

 また、アメリカ、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイの経験から判断して、GM作物は野生動物に対して深刻な被害を与えると言うことができます。「ラウンドアップレディ」という除草剤グリフォサートへの耐性を持つGM作物は、かつてありふれていたトウワタを主食とするオオカバマダラが劇的に滅んだ原因だと指摘されています。トウワタはラウンドアップレディと組み合わさったグリフォサートの大量散布によって今ではアメリカの大部分から絶滅しています。そして同じようなことが野生の蜂その他の花粉媒介者を支えていた雑草や野花にも起こることでしょう。

 殺虫剤的なGM作物は、葉、花蜜、花粉内の細菌由来の昆虫毒素を発現させるもので、蜂や他の虫に対する危険を表しています。

トウモロコシ、綿、ナスやその他の作物に使われているこれらの有毒物質に関する研究によれば、蜂や蝶などの「対象になっていない」種類の生物にまで影響を与えることが明らかになっています。

 蜜蜂は他の脅威にも直面しています。Varroaダニ、約20種の既知のウィルス(その多くはVarroaが媒介)、そして、寒冷で湿気のある夏(おそらく気候変動と関連)。イギリス養蜂組合 (BBKA: British Beekeepers Association) によれば、イギリスの蜂の巣における約6分の1は2014年末から2015年始めの冬に死に絶えました。なお、ふた冬前は1/3でした。この前の冬は約1/5に増えたと最新データが示していて(もしかすると2015年の芳しくない夏の結果かもしれません)、蜂蜜の収穫量が1つの巣あたり14.5kgから9.5kgに減りました。

 「これらの消失率は受け入れがたいもので、」とBBKAのティム・ロット (Tim Lovett) はリサージェンス誌に語りました。「私たちは注意深く蜂を保護しなければなりません。そして蜜蜂にとって悪い知らせは、他の生物たち、孤独性蜂、マルハナバチにとって更に悪いことと言えます。ともかく蜜蜂には自分たちが生存するように走り回る働き蜂がいます。私たちが口にする食べ物の多くを含めて、3回に1回の一口は虫の授粉に依存しているため、これは私たち全てにとって重要な問題です。」

オリバー・ティッケル (Oliver Tickell) はエコロジスト誌の寄稿者 www.ecologist.org

翻訳: 坂井 晴香

A is for Agro-Industry • Oliver Tickell

The fluctuating fortunes of bees - a key species for our countryside and our food

298: Sep/Oct 2016