【抜粋版】「こども哲学」と「ねりま子どもてつがく」のご紹介
「ねりま子どもてつがく(略称:ねこてつ)」に興味を持ってくださり、ありがとうございます。
「どんなことをするの?」「子どもにどんな影響があるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか? そこで、保護者の方向けに、こども哲学の意味や教育的効果、ねこてつの考え方などをご紹介します。
こども哲学について
こども哲学って、そもそも何?
「こども哲学」とは、子どもたちが輪になって、「ひとは死んだらどうなるの?」「ゲームはなぜおもしろい?」「ともだちは、たくさんいたほうがいい?」などのテーマを決め、自由に意見を出し合う活動。私たちは、こども哲学における「哲学すること」を「子どもと大人が一緒になって身近なところにある問いを見つけ、それを共有し、自分たちの言葉で徹底的に考えること」と捉えています。
はじまりと発展
こども哲学は、1970年代にアメリカでリップマンという大学教員が大学生の論理的思考力の低下を嘆き、小中学生から対話型の哲学教育が必要だと訴えたことに始まります。その後も世界的に注目され続け、ハワイの学校で実施された事例をきっかけに、日本でも注目されるようになりました。そこでは、荒れ気味だった教室のなかに、「安心して過ごすことのできるコミュニティ」が少しずつ形成されていったそうです。
意義、教育的効果
リップマンが始めた当時は、ものごとや価値を鵜呑みにせず自分で考え、判断していく「批判的思考力」が身につくとされていました。現在はそれだけでなく、何かを生み出していく「創造的な思考」、対話の相手や自分に関心を向け、気遣いながら考えるための「ケア的な思考」も身につくとされています。また、相手の話を聴きながら言いたいことを伝えるコミュニケーション力や表現力も身につくでしょう。
よくある心配
Q.うちの子、黙ったまま何もしゃべらないけど大丈夫?
A.こども哲学の目標は「子どもたちが活発に話すこと」ではありません。ひとりひとりがじっくりと考えること。だから、黙っていたとしても、考えているのなら心配することはないのです。
Q.発言の回数は多いけど、思いつきで話しているだけじゃない?
A.思ったことをすぐ言葉にできるのは長所と考え、大切にしましょう。問いかけの中で、これまでと打って変わってじっくり考え始める子どももいます。焦らず対話を重ね、大人が粘り強く考える姿を見せて子どもの手本になることで、子どもが変わっていく姿も見られます。
Q.答えが出ない(答えを出さない)ってモヤモヤするんだけど…
A.実際の社会は、短時間ですぐに答えの出ない問題であふれています。モヤモヤを抱えたままで考え続ける力も必要になることがあるでしょう。答えの出ない「モヤモヤ」を楽しむくらいの気持ちで取り組んでもらいたいと考えています。
親の関わり方
~ねこてつでは親も積極的に対話を!~
1.大人のほうが頭は固い
私たちが大切にしたい「考える力」は「親や教師の期待通りに答えを出す」ことではありません。考えることはもっと自由であるはず。大人がいつのまにかたくさんの前提でがんじがらめになり、子どもを拘束してはいないでしょうか。
だから、ねこてつでは、こどもたちに考える力を身につけてもらうと同時に、大人自身も子どもと一緒に考えてもらいます。その活動を通して、普段はなかなかできない、ゆっくりと自由に考える時間を楽しんでほしいのです。
ねこてつが終わったあとも、ぜひご家庭でゆっくり話しあってみてください。
2.親も子どもの話、聞けてない?
私たちは、毎日子どもとしっかり接しているつもりでも、意外と話をじっくり聞けていないのではないでしょうか。
こども哲学で大切にする態度は、普段大人が子どもに接するときにも必要なものです。「しっかりと聞く」「自分の前提を問い直しながら一緒に粘り強く考える」「考えが浮んでくるまで待つ」……。
大人の価値観で見たときに子どもの言動が間違っていると感じても、頭ごなしに否定せず、まずは理由を丁寧に聞いてあげましょう。子育てや教育の正解を決めず、自分自身の当たり前を問い直すことが大切ではないでしょうか。
3.こども哲学のスピリットが大切
こども哲学には、世界中の実践者や研究者によって蓄積されてきた理論や手法があります。私たちもそこから学び、ねこてつの場を作っています。
しかし、こども哲学にとって大切なのは、決まったやり方ではなく「スピリット」。「期待通りに考えてもらいたい」「育ってもらいたい」という気持ちを一旦脇に置き、子どもの自由な思考のなかに一緒に身を置こうとする姿勢です。
これからの世界を一緒に生き抜いていくために、子どもを仲間のように捉え、問いを考え合うことで、ご家庭でも「こども哲学の場」が始まることでしょう。
(文:小川泰治 /編集:栃尾江美)