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7th heaven side B

For you 完全版_3

2017.08.30 14:45

第2章 はじまりの時


「平ちゃん、たまには家に来いや」


事件後、府警から帰ろうとしたオレは、おっ

ちゃんに呼び止められた

後1週間程で、春休みも終わりと言うタイミングや


結局、あの結納式の後、和葉といちゃいちゃ出来るような時間も無く、受験生として日々に忙殺され始まったオレやった


「「お帰りなさい」」

「「ただいま」」


アレ、オカンまでこっちに居るんか?

ほな、今夜の服部邸はもぬけの殻か?と言うと、心配せんでも代理を置いて来たと言う


オカンと和葉で夕飯の支度をして、遠山家で

待ってたらしいねん


「すまんなぁ、静さん」

ええんですよ、と笑うオカン

「実はなぁ、大事な話があんねん」


無事、結納式も終わった事やし、来春の挙式披露宴の日取りも決まって、ひと段落したところやから


そう前置きしたおっちゃんは、オレと和葉の

手を見て柔らかな笑みを浮かべた


「暫く、大阪を離れる事になった」


仰天するオレらを前に、おっちゃんは穏やか

な口調で言うた

離れる前に、オレらの関係に決着が着いて、

進路の方向性が見えて、良かった、と


「いつ、帰って来るん?」

「わからん

最短でも1年は帰れんやなぁ〜」


せやから、お父ちゃん、和葉と平ちゃんの卒業式、出られるかわからんのや、と言う


「ほな、結婚式は?」


和葉が涙目で言う

そらそうや、オレかておっちゃん不在の中は嫌や、絶対


「それまでには、どんな形であれ帰りたいと

思うてる」

「お父ちゃん」


「でもな、和葉、平ちゃん」

万が一、オレの帰阪が間に合わんくても、必ず決めた日取りでやれ

それが、オレと、和美からの願いや


「お父ちゃん!」

「で、オレは明日から府警を離れて行動する事になったんや」


例の組織撲滅に向けて結成される超党派の捜査機関に、招集されとると言うおっちゃん

オレや工藤も、いずれ声はかかる、と


その時に向け、受験をとにかく先に決着を付

ける事と、

オレには、和葉と離れる時間が数ヶ月以上出

るかも知れへんから、それまでに、和葉がオ

カンや姉ちゃんを護れるように、指導しとけ

とお題が与えられた


「出来るだけ、短期決戦にするつもりやけど、相手が相手や、油断は出来ん」


和葉、平ちゃんの事、待ってやれるか?

オレの服を無意識に握っていた和葉が頷く 


「蘭ちゃんと、工藤くんのためや

あと、哀ちゃんの」

せやから、我慢して待つ

平次と工藤くんと、お父ちゃんが安心して帰

って来られるように

和葉は、そう言うた


「平次の大事なおばちゃんは、私が必ず護るよって、心配せんでええよ」

「和葉」


「そこでや、平ちゃん、和葉」

そう言うたおっちゃんは、ため息を吐いた


「いつ戻れるかわからんのや

進学の件は、全面的に静さんにお願いしたけ

ど、問題は、和葉の事やねん」


そらそうやろ、と思った

今までは、オッチャンが居らん間は、服部家

で預かり、寝泊まりしとったけど、さすがに

1ヶ月を越えた事は無かった


「家にひとりで残す気にはさすがになれへん

し、だからと言って今の時期に全寮制の学校

に転校を勧めるのもどうかと思って」

「今まで通りでええんとちゃう?オカンもオ

レより和葉が居る方が喜ぶし」


「そりゃアカンやろ?」

「何で?」

「ただの幼なじみだけの間やったらなぁ、オレもそれでええか、と思ったけど…今はちゃ

うやろ?」

「あ…」


やんわりと指摘されて、何を問われているの

かが判り、自分の顔が赤くなるのがわかった


でも、そんな事よりも、和葉をどこに連れて

行かれてしまうのか、その点でオレは焦った


「それは…そうやけど、オレ、親父との約束

ちゃんと守っとるし?」


和葉と付き合うと言った日にちゃんと言った

やろ、とオレは言った

和葉がええ、言うまでは、手を出さん、と


「せやったら、和葉の事は平ちゃんに任せる

で、頼むな」

「お…おぉ、大丈夫やで」

「そうですよ、遠山さん

もう、正式に結納式も済んだ事ですし、許嫁として和葉ちゃんの事はお預かりします」


まだ、彼氏・彼女としての日々も浅い上に、まともなデートですら、ほとんど出来てない

というのに…


今までも付き合っていると誤解されるくらいやったし、夫婦呼ばわりもされて来た

実態と関係性が揃うと思えば、それでええかと楽天的なオレは悩むのを早々に放棄した


それよりも、自分の唯一の肉親が、暫くその

所在もわからんようになり、離れてしまうこ

とが、和葉にどれだけショックを与えるか

オレは、そっちの方が気になった


でも、和葉がショックを受けるなら、オレが

ちゃんと一緒に受け止めればええねん


その夜、オカンとおっちゃんは話があるからと府警の親父を訪ねに行った


「平次と一緒に暮らせるのは安心や

でも、お父ちゃんとしばらく会えんのは、や

っぱり淋しいなぁ」


ぽつん、と和葉はそう言った

身体に緩く腕を回して、その背中をそっとあ

やすようにたたく


「平次」

「ん?」

「いっこだけ、お願いしてもええ?」


腕の中に居る和葉が、服を掴んで、小さな声で言った


時々でええから、こうしてぎゅーしてくれへ

ん?と


(何や、時々でええんかい)


淋しいのだろう

でも、父親の仕事の重要性も十分理解しているし、自分以上に父親の方が色々と辛いと知っているから


「了解、オマケもちゃんと付けたるから我慢せんと言ったらええ」


腕に力を入れて、ぎゅーっとして、頬にちゅ

っとしてやった

恥ずかしそうに真っ赤な顔で、あほ、と言っ

た和葉


「大丈夫や、笑って元気に見送りしてやろう

や、な?」


こくん、と頷いた和葉の背中を撫でて慰めた


大丈夫、オッチャンは必ず勝つ

和葉やオレが居る限り、絶対に負けない


翌日、服部家ではある話し合いが行われた

和葉の引っ越しについてやった


オカンの提案で、和葉がずっと利用していた

オレの部屋の隣の客間と、オレの部屋、納戸

を改造することになった


来春には、オレも和葉も旅立ってしまうけど

その後、帰省するオレらの場所を確保したい

とオカンは言うたんや


「アンタ、暫く遠山家に居なさい」


和葉が、家を出る支度をしたり、おっちゃん

の荷物をまとめたり、忙しいやろうから、と


その数日後、

オッチャンの姿は、静かに大阪から消えた


「和葉~!荷物、これで最後か?」

「うん、それが最後や」


和葉の荷物を持って、一緒に家を出る

和葉の手をとって、一緒に家に帰る

今日からは、帰る家は同じや


「「ただいま~」」

「お帰りなさい」


出迎えたオカンが、用意していた部屋へと和

葉を誘導する


和葉に似合う、明るく広い部屋

家具は北欧調のモノで統一され、明るい色合

いの絨毯とカーテンにベッドカバー

ベッドは大きいモノが搬入された


今はまだ、アンタは使ったらアカンと言った

オカンは、いずれ、家を出るオレ達が、帰省

した時に使えるような部屋にしたと言う


確かに、2人暮らしの1ルームの様子

和葉はもちろん、めちゃくちゃ喜んだ


そして、

親父達の寝室へ出向き、挨拶をした

ちゃんと、婚約指輪をはめて


「至らない点が多いと思っています

アカン時は、ちゃんと、平次同様に叱ってください

末長く、よろしゅうお願いいたします」


キレイな姿勢で、きちんと頭を下げる姿は、

凛々しく、美しい

武道を嗜む時に垣間見せる姿だ


親父は、和葉に門限を伝え、ひとりでの登下校を当面禁じた


「はい、わかりました」


そう言った和葉に、親父は相好を崩して、そ

れ以外は、今まで通りやで、と言った

その言葉に、緊張を解いた和葉が笑う


この日から、和葉は服部家に完全にその住ま

いを移した


もちろん、約束は約束やから、一緒にいちゃ

こらすることは敵わんけど


でも、眠る前に、おやすみのちゅーくらい、

ええやん?


真っ赤になってジタバタする和葉を捕まえて

小さな真っ赤な顔を両手で挟んで、軽く何度

も啄むようにキスをして、ぎゅっとハグして

からベッドにしまって、電気を消してやった


相変わらず柔らかく温い身体

ホンマは抱き込んで眠りたいんやけどな


階下に夜叉が待機しとるから

迂闊なことは出来ん


はぁ、生殺しや、ホンマに

自分の布団に転がって、ため息を吐いた


あぁ、ここからが辛いなぁ

大丈夫かな、オレ


でも、まぁ、ちゅーもしたし、ハグもしたからええか

同じ部屋で寝起き出来るんやしな


そんなん考えとる間に、すっかり眠ってしま

ったオレ


アホやな、ホンマ

大丈夫かな、オレ


第3章へ

to be continued