【コンサートレビュー】モーツァルトが愛した楽器vol.3
2021年7月21日 杜のホールはしもとにおいて開催いたしました、「モーツァルトが愛した楽器vol.3」にお越しくださいましたお客様より、素敵なレビューを書いていただきましたのでご紹介させていただきます。
「緊急事態宣言が出て様々な活動が大きく制限されている難しいこの時期にあっても、芸術の灯が消えないよう奮闘しているアーティストは多く、感銘を受ける事しばしばです。掲載のチラシは7月29日に杜のホールはしもとで開かれた「モーツァルトが愛した楽器 vol.3 ピリオド楽器による室内楽」のもの。
当夜は会場に入るとステージのフォルテピアノがお出迎え。楽器であると同時に最高級の工芸品でもあり、ため息が出るような美しい佇まいをしています。モダン楽器の演奏会では会場にあるピアノを使用する事が圧倒的に多く、マイピアノを持ちこむ人はごく僅かと思われますが、古楽ではこのように楽器を持ってこなければならないわけで準備からして大変な事です。
演奏会はピリオド楽器とモダン楽器の違いについてのトークを交えながら進められ、未知の事が多いジャンルという事もあって興味が尽きません。この日のクラリネットは解説にもある通りBb管、C管、そして2本のバセットホルンが使用されていました。いずれもモーツァルト時代のものです。主催者の満江さんとN響の山根さんでピリオド楽器のバセットホルンによる二重奏が繰り広げられましたが、他で聴ける機会はまずないでしょう。大変貴重な体験となりました。満江さんの奏でるクラリネットの音は楚々とした美しさが溢れていて、ともすれば攻撃的な音になりがちなC管のイメージは完全に覆ります。
次から次へと興味深い演奏が続き、あっという間に最後の曲「フォルテピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための四重奏曲」へ。作品番号が裏覚えで、作品名がフォルテピアノ(中略)のための四重奏曲となっていたため、一瞬これはなんだろうという状態になりましたが、冒頭の音を聴いて、有名なピアノ四重奏曲第1番である事を思い出すと同時にあらためてそのサウンドに衝撃を受けました。現代のピアノの音で聴くのが普通の感覚となっていて、オリジナルの形態がどうであったかなどという事に考えが及んでいなかったということです。モダン楽器ではピアノが前面に出てくる事になりますが、フォルテピアノの音は弦楽器群の中に融合しており、アンサンブル楽器としての一体感をより強く感じます。
いずれの楽器にしても現代の大ホールのような空間を想定したものでなく、サロンなどで楽しむために贅を尽くしたものであった事がよく分かります。使用していた楽器を間近で見たい気持ちもありましたが、面会は自粛することにして、滅多にあじわえない贅沢な企画に感謝しながら帰路につきました。」
演奏会の映像はこちら。