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人事の代わりにググりました「パワハラの境界」編

2017.09.19 10:30

世の中、便利になったもので、インターネットで検索するとあらゆる情報を調べることができます。人事や採用まわりに関する情報やある程度、専門的なノウハウも玉石混淆ながら手に入るようになっています。でも、「そんなの分かってるけど、検索する時間がないんだよ」という忙しい人事や採用担当の代わりに特定のテーマに絞って検索して要約します。というのが、この「人事の代わりにググりました」の趣旨です。

ということで今回のテーマは「パワハラの境界」。昨日、豊田真由子議員が秘書への暴行・暴言に関する謝罪記者会見を開いたばかりですが、上司の叱責や指導とパワハラの境界はどこなのかは結構、難しい問題です。「このハゲーーー」という暴言なら、間違いなくパワハラと分かりますが、では、どのような言動からがパワハラとなるのか。自分自身がパワハラしないために、社員にパワハラをさせないように。人事の代わりにググりました。

※豊田真由子議員のケースでは暴行で被害届が出されているので、パワハラか否かという問題ではないのかもしれませんが。


■厚生労働省 職場のパワーハラスメントについて

まずは厚生労働省。「職場のパワーハラスメント」というページにおいて

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126546.html

パワハラに関しては以下のように定義しています。



職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義をしました。
この定義においては、
・上司から部下に対するものに限られず、職務上の地位や人間関係といった「職場内での優位性」を背景にする行為が該当すること

・業務上必要な指示や注意・指導が行われている場合には該当せず、「業務の適正な範囲」を超える行為が該当すること

を明確にしています。


またパワハラを以下の6類型に分類しています。

1)身体的な攻撃

暴行・傷害
2)精神的な攻撃

脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

3)人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視

4)過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

5)過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

6)個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること

ちなみに上記は、パワハラに当たる行為のすべてを網羅しているわけではない

とのことですので、注意が必要です。


ネット上の「パワハラの境界」に関する情報のほとんども、

上記の厚生労働省の定義を参考にしていました。


■「あかるい職場応援団」

さらに詳しいパワハラに関する情報が掲載されているのが、

厚生労働省が運営している以下のサイト。


パワハラの裁判事例やパワハラ対策についての総合情報サイト「あかるい職場応援団」

https://no-pawahara.mhlw.go.jp/

上記の6類型も、こんな風にイラスト化されていて、

わかりやすいです。


他にも以下のページでは、

パワハラ関係資料ダウンロード ページ

https://no-pawahara.mhlw.go.jp/jinji/download/

・パワーハラスメント対策導入マニュアル

・社内研修用資料

・パワーハラスメント対策Q&A

・アンケート テンプレート

・ハンドブック


などなど、便利な資料がDLできるようになっており、

パワハラ対策としては、とりあえず一通り揃っています。


厚生労働省のお墨付きの対策なので、

ある意味ではリスク対策として導入するのも良いと思います。


さらにパワハラに関する裁判事例などもまとめられており、

一つひとつ読んでいくと、興味深い事例も多く、ついつい読み込んでしまいます。

ほとんどが「そりゃパワハラでしょ」という事例なのですが、

中には、「指導とパワハラの境界」のような事例もあったので、以下に抜粋します。


裁判事例

https://no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/index


【第2回】上司の叱責とパワハラ

https://no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/2

高裁判決でとりわけ注目されるのは、部下に対し繰り返し指導するも、その改善が見られない場合、「ある程度の厳しい改善指導をすることは、上司らのなすべき正当な業務の範囲内」であると明確に判示した点

というのが、まさに「指導とパワハラの境界」を示している判例です。


【第20回】差別的取扱いを受けた等の主張が認められなかった事案

https://no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/22


【第28回】上司、同僚等からパワハラを受けたとして会社に慰謝料の支払いを求めた事案

https://no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/30


【第30回】上司からパワーハラスメントを受けて適応障害に陥ったとして、慰謝料請求をした事案

https://no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/32


■さいごに

ということで、「パワハラの境界」について調べてみましたが、ほとんどの記事が上記の厚生労働省の定義などを下敷きに独自の解釈や主張を論じているものが多く、とりあえず調べるという意味では、上記の厚生労働省のサイトを見ればOKというのが結論でした。


ただ、その中でも以下の2記事は独自性が高く面白かったです。


■パワハラの境界線は難しい?パワハラ完全NG例とグレーゾーンの見極め方

キャリアジャーニー

https://careerjourney.jp/power-harassment-ng-case-gray-zone/


■「怒る上司」は数分で忘れるが「怒られた部下」は1年忘れない。パワハラか指導か!?その境界線

cancan.jp

https://cancam.jp/archives/212840


いずれにしても厳しい指導とパワハラの境界はシロとクロで分けられるのではなく、大きなグレーゾーンが広がっているのだなと感じました。仮に裁判で勝ちパワハラの認定を受けなかったとしても、裁判まで行っている時点で企業のレピテーション対策としては、ほぼ失敗です。


発生した場合の経営へのダメージを考えると気をつけすぎて、気をつけすぎるということはないのかもしれません。また万が一、発生した場合においてもパワハラ対策をそれまでしていたかどうかで、社会の心証も大きく変わります。そういった観点からも、形ある対策を行うことが重要そうです。