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7th heaven side B

For you 完全版_9

2017.08.30 14:15

第8章 最終決戦


秋から冬へ

容赦無く、時は流れて行く


オレの元にも、工藤もろとも召集令状が届い

たんや


クリスマス当日、オレは和葉の元を離れる


プロポーズ記念日だけは、一緒に過ごしてや

りたかったんや、どうしても

クリスマスイブは、オレにとってはプロポー

ズ記念日や

漸く、彼女になってもろうた日やねん


イブ前日が年内最終登校日

帰宅したオレらは、仰天した

誰も家に居らんねん


オカンが気を利かしたつもりなんやろな

2人っきりにしようって


和葉は、めっちゃ恥ずかしいから嫌や、と言

うたけど、懇願して一緒に暗い風呂に入って

もろうたし 

泣く和葉を宥めながら、必死に抱いた


自分も、もしかしたら、泣いていたかも知れ

へん


気を失った和葉を、それでも離したくなくて

ずっと抱き締めてた


帰って来たら、またしような


そう約束して、もう一度一緒に風呂に入って

一緒にベッドに横たわって、時間を惜しむよ

うに、キスしてハグして見つめあった


抱き締めた和葉を忘れへんように

オレが帰るべき場所は、この部屋で、このオ

ンナの処やって信じて


最後の夜を過ごした


翌朝、早朝に約束の場所まで手を繋いで歩い

て行った

オレの指輪をネックレスに通して、和葉の首

にかけた


「行ってらっしゃい、気をつけてや」


頑張って笑顔を見せた和葉を抱き寄せ激しく

キスをした


「ほな、行って来るわ」


手を挙げ、和葉のSPに頭を下げた

ここからの帰り以降、和葉は24時間監視下に

置かれるんや


間も無く、姉ちゃんが服部邸に搬送される予

定らしい


待機しとった車に乗り込み、既に居た工藤に

和葉から預かった荷物と、大事なモノを渡す


「とっととケリ、つけようや」

「あぁ、もちろんだ」


工藤は、大事なモノを、ぎゅっと握りしめた


オレと工藤は、捜査に加わるまでに、色々な

テストを受けた


体力的に工藤が足りひんところは、オレがカ

バーして、何とかクリアした後は、実地訓練


しかも、オレらが立てた戦術に沿って、捜査

員が動くと言うた心理戦、神経戦や


ヒリヒリするような時間が続き、漸く本部に

合流したオレら


「お、もう合流出来たんか?さすがやな」


ひょい、と現れたんは、おっちゃんや


現場指揮を執って、全世界に散る捜査員を指

揮しとるのは、おっちゃんやった

大阪弁と英語で捲し立てるおっちゃんに、工

藤は目を白黒させとった


「和葉ちゃんの親父さんって、何者だ?」

「ただの、娘命の父親や

ちょっと語学と剣術の腕があるだけの、な」


オレの英語は、この人の影響や


おっちゃんは、ホンマは留学したかったんや

駆け落ち同然で学生結婚して、その夢は諦め

た、言うたけど


「まさか、娘達が叶えてくれるとは」


和葉の短期留学はあんなに反対したクセに、

オレらが海外進学を希望した時、手放しで

喜んだんは、おっちゃんやからな


捜査員をよう見たら、降谷さんは居るし、赤

井さんや、馴染みのFBIやらCIA、ICPO、

警視庁やら各都道府県の警察関係者が仰山混

じってて


「こちら、黒羽快斗くんだ」


よろしく、と言うた顔は工藤そっくりで

KID引退と、中森警部とその娘の身の安全を

引き換えに、捜査員に混じっていると言う


オレらより、数ヶ月前から召集されとったら

しく、 捜査員に可愛がられていた黒羽


オレらが合流して、2週間が過ぎた頃、漸く

全国に散らばるアジトへの一斉捜索が決定し

全世界同時に踏み込む事が決まり

そして、それぞれどこに投入されるかも決ま

った


オレと工藤、黒羽は同じチームになり、そし

てリーダーはオレになった


オレらが投入されたんは、組織の研究施設

そう、小さい姉ちゃんが逃げだしたあの場所


赤井さんをリーダに、したチームと、降谷さ

んをリーダーにしたチームは、おそらく組織

幹部がそれぞれ滞在しているであろう激戦区

へ投入された


移動する車の中、防弾チョッキをはじめ、完

全武装のオレらは、みな無言やった


そんな中、一瞬無線が入った


「めいっぱい、暴れて来いや」

頼むで、と


雑音かと思う程の一瞬やった


おっちゃんからの、最初で最後のエールや


和葉を未亡人にするワケにはいかん

絶対に、生きて帰る


「It's now or never! There's no limit to

what we can accomplish!」

(やるなら今や!オレらに出来ない事なん

ないで!)


チームの中には日本語も怪しいやつも居る

せやからあえて英語で声をかけた

緊張しきった顔をしとったやつらが、不敵

な笑みを見せた


よし、これでええ


全員に、突入制圧までの時間目安を伝えて

絶対に生きて戻れ、と言うた


おっちゃんからのGOサインが出るのをじっ

と待機して、オレらは一気に飛び出した


完全に不意打ちやったんか、有る程度の警戒

はしとったんか、突入はスムーズやったけど

オレらの目標は、実験データの確保と研究者

の捕獲


どんどん報告無線が飛ぶ中、オレと工藤そし

て黒羽は、最難関のセキュリティエリア内へ

侵入しようとしとった


ホンマに一瞬の事やった

平次!と叫ぶ和葉の声が聞こえた気がした


ふと見上げると、黒羽の頭上の天井から変な

閃光が見えた気がした


「危ないっ!」


黒羽の襟首を掴んで、柱の陰に放り込んだの

はギリギリで、ほぼ同時に銃弾を浴びた工藤

を撃った相手を狙撃し、工藤を抱え込んだ


ものすごい爆音と、建物の崩壊が始まったん

はその直後やった


「10分以内に、全員撤収!」


無線に叫び、何とか自力で立てる黒羽を連れ

工藤を担いで、後方に控えていた救護班へと

工藤を渡した


オレは残りの隊員の安否確認と、逮捕した奴

らの護送を確認し報告した


幸い、死者は出なかったものの、重軽症者は

出てしまっていた


緊急性が高い奴から順次搬送が始まる


工藤は出血はしていたが、心臓付近に銃弾を

喰らったはずやのに、意識はあった


「何だ、コレ」


工藤の装備を解いて、治療に当たるスタッフ

が、血まみれの何かを取りだした


「お守り?」

それを奪って中を見た


「何や、コレ」


金属板みたいな奴に、銃弾がめり込んでた

あぁ、それ、特殊金属ですよ、と笑う隊員

特殊金属??


「和葉か、コレ」


自分のお守りも中を確かめると、御札と同じ

大きさで同じ特殊金属があった


「銃後の守り、だな」


黒羽は笑った

黒羽は、さっきの戦闘で、自分の父親を窮地

に追いやった奴を逮捕したんや


「やっと、青子に逢える」


そう呟いたのを、オレは聞き逃しはせんかっ

たし、オレも、和葉に逢いたい、と思うた


どんな思いでお守りにコレを仕掛けたんかを

考えたら、今すぐ遭いたかった


主要メンバーも、捕獲されたり射殺されたり

して逮捕されて、組織の中枢は壊滅状態にさ

れた


その事はいち早くニュースにもなっとる様子


オレはおっちゃんに言われて、工藤の搬送に

そのまま付き添い、後は黒羽に任せた


「今度は平和な場所で会おうぜ」


そう言って見送ってくれた黒羽に別れを告げ

オレは飛行機で極秘裏に渡米した


工藤の緊急手術と、解毒剤の投与が開始され

その様子を見守ったんや


「出来るだけ早く、帰れるようにする」

「いや、早さより、確実に治してやってくれ

や、哀姉 」


わかってるわよ、誰に言ってるの?と言う声

は、オレが知ってる声より少し低く、容姿は

大人っぽい女性になっとるけど


間違いない

灰原哀こと宮野志保や


ま、もう別名なんやけどな

オレと和葉は、哀ちゃん、哀姉と呼んでよし

とされとんねん


工藤は、ケガの回復は早かったんやけど、そ

の後の解毒剤の方がアカンかったんや


変化はすぐしたんやけど、高熱で意識を中々

取り戻せへんで、かなり苦しんだんや


「どうや、工藤くんの様子は」


おっちゃんが来たんは、オレが渡米して1週

間後の事やった

大滝ハンも一緒で、捜査の後始末に奔走する

ついでに寄った、と言うてた


「コレを和葉が?へぇ、アイツ、中々やりよ

るなぁ!さすが、オレの娘」


血まみれになってしもうた和葉のお守り

その中に在った金属片に、おっちゃんは苦笑

アイツが一番、危なっかしいな、と


その言葉が、別の意味で的中する事など、こ

の時のオレは想像すらしてへんかった


工藤の意識が戻り、体力が回復したんは、も

う和葉の元を離れて1ヶ月が過ぎた頃やった


1月最後の日、オレ達は揃って凱旋し、空前

のフィーバーに巻き込まれる事になった


姿を隠していた工藤新一が、大きな事件を解

決して凱旋したと、マスコミが大騒ぎしてた

んや


渡米中、ずっと病院に缶詰やったオレ達は、

それを知るはずもなく


すぐに大阪の服部邸に帰れると思うてたオレ

は、東京に足止めされるハメになったんや


警視庁とかでの事情聴取に、殺到する取材

オレと工藤はホテルに缶詰めにされてん


何遍かけても、自宅の電話も和葉の携帯も

全く繋がらんかった


ニュースで、服部邸前に野次馬が殺到しとん

のを見て、オレは一気に不安になった


みんなが興奮状態で、何が起きても不思議や

無いと思うたんや

報道陣も、野次馬も、警護しとるはずの警察

にも、何やおかしな興奮状態が蔓延しとった


「工藤、もう取材はええやろ?」

「あぁ、でも、もう少しだけつきあってくれ

不在にしていた分、マスコミや警察関係との

関係は良好にしておきたいんだ」


この先の活動にも差し支えるからな

工藤は元の身体を取り戻して、すっかり上機

嫌で、漸く取り戻した「工藤にとっての日常」を満喫しとるようやった


オレも、工藤が今後も探偵を続けると言うの

は知ってたから、多少は協力してやらんと、

と思うて取材に応じてたんやけど


最初の頃は事件絡みの質問が多かったんやけ

ど、最近ではゴシップネタ紛いの質問が殆ど

で、警察の事情聴取も、事情聴取どころか、

お偉方との飲食が増えて


「明日で最後や、それでオレは大阪に帰る

和葉に、逢いたいんや」


和葉の名前に、工藤も我に返ったのか、そう

だよな、和葉ちゃんにオマエ、返してあげな

いと、と言うた


その直後やった

付けっぱなしやったテレビから、速報が流れ

始めたのは


「たった今、入った情報です」


慌てるスタジオから、流れるニュースに、オレの心臓は一瞬止まった


大阪府寝屋川市の民家に男が侵入して、居合

わせた女子高生を襲撃して逃走した模様です

なお、被害者の女子高生の安否は不明


搬送した救急隊員によると、意識不明の重体

との情報もあります


「心肺停止状態で搬送された、と言う情報も

あり、女子高生の安否が気遣われます」


姉ちゃんか、和葉に、何かが起きたと言う事

何やろうか


「服部、これって」


工藤も真っ青な顔をしとる


その時、部屋をノックする音に気が付いて、

オレは扉を開いた

佐藤刑事と、高木刑事やった


「オレに用か?」


一瞬、躊躇したけれど、頷いた2人


「服部本部長が、急ぎ連れ帰れと」


わかった、と言うて、オレは2人の誘導に従

い部屋を出た

車に乗って、すぐに無線を渡された


「和葉が、重体や」


緊急手術を終え、ICUに入れられたんやけど

どうしても家に帰りたいと叫んだらしい

親父が和葉を抱いて服部邸に戻ったらしいん

やけど、和葉の状態は悪い、と


「オレが戻るまで、待ってくれ…何とかオレ

が説得する」


和葉のアホ

アイツ、入院したら、服部姓がバレてまうっ

て心配しとるんやろ

バレる事より、自分の生命心配せえっちゅう

ねん


オレはキャップを深く被って、目を伏せた


和葉、もうすぐや、もうすぐやからな

祈るような気持ちで、窓の外を見た


最終章へ

to be continued