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7th heaven side B

Go for it !完成版_2

2017.08.31 14:50

第1章 旅立ちの季節


「ゴメンな、出発前の忙しい時に」


披露宴を終えて、関係者への挨拶回りを終

えたオレと和葉を、工藤がひとり訪ねて来

たんや


「いや、別に構へんけど」


席を外そうとした和葉とオカンを、工藤が

制した


工藤は、オレらより1ヶ月後に日本を離れ

る事になったと報告に来たんや


「蘭と一緒に、渡米する」


工藤は、散々悩み抜いて、行動に出たらし

いんだ


姉ちゃんの両親を訪ねて、頼み込んだと言

うた


夏休みと春休みは、姉ちゃんに滞在先に来

て欲しい、呼びたい、と

渡米費用と滞在費用は、自分が稼ぐからと

説得したらしい


「まぁ、条件は出されたけど、何とか」


毛利のおっちゃんが、工藤に課した条件は


渡米先の住まいは、豪華過ぎない身の丈に

合わせる事

姉ちゃんの渡米費用には、両親のお金を使

わないで、自分で稼ぐ事

学生の本分を忘れない事


やったらしい


住まいや暮らし振りは、姉ちゃんを行かせ

る前にチェックしに行くと言うて、もう既

に夫婦で渡米して、工藤の両親と一緒に、

工藤の下宿予定の家をチェックに行ってい

ると言うんや


姉ちゃんの大学が夏休みに入るの待って、

一緒に渡米して、夏休みが終わったら、姉

ちゃんは帰る予定やって


冬休みは短いし、姉ちゃんにも家族と過ご

す休みも必要やと考えて、自分が帰国すれ

ばええかな、と言うてた


「蘭ちゃんも、工藤くんが暮らす街とかも

見られるし、安心するんやない?

寂しくても、頑張れると思うよ?なぁ、お

ばちゃん」

「せやね、そうやと思うわ」


和葉やオカンの声に、そう?なら良かった

とホッとした顔をした工藤


オレと和葉の出発が先と言う事になった


「蘭と一緒に見送りに行くから」

そう言って、工藤は元気に帰って行った


数日後

今度は、帰国した毛利探偵と妃弁護士が訪

ねて来た


何で工藤を姉ちゃんの相方に認めてやらん

のか、と問い質したオレに、毛利探偵は


「オメーと、あのガキには、決定的な違い

があんだよ💢」


不機嫌そうな毛利探偵を見て、苦笑する妃

弁護士が言う


「服部くんは、その違い、わかる?」

「オレと、工藤の違い?」


そうね、正確には


服部くんと、和葉ちゃん

新一くんと、蘭


この2組の違いかな?と言う妃弁護士


「私、何となくわかったかも」

そう言うたのは、和葉やった


「正解よ、和葉ちゃん」


妃弁護士に耳打ちした和葉に、そう笑いか

けた妃弁護士


オレと工藤の決定的な違いは、まずひとつ

目は、金やって言われた


オレの家は、オカンの実家絡みやら服部一

族絡みの金は、一切、日常生活には流れて

無い

親父の稼ぐ公務員の給料で、オレの学費や

らを含めて支払われてん


探偵やる時も、依頼料をもらってはならん

と言われてたから、交通費は貰うけど、そ

れ以外は一切、報酬を受け取ってはおらん


小遣いは、子供の頃から年玉も含めて和葉

と同額やしな


せやから、家は無駄にデカイし、一応所有

しとる不動産もそれなりにあるとは言え、

日常生活は、一般家庭とそう違わんのや


でも、工藤は違う


有名人の両親の一人息子として、潤沢に与

えられた個人資産だけやなく、現在別居中

の両親からは、毎月多額の生活費が送られ

とるし、依頼料もきっちり受け取る


せやから、金銭感覚は、確かに違うと感じ

る時はある


「その違いって、いざ実際に生活を共にし

ようとすると、結構すれ違いの大きな要因

になるのよ」


「それに、アイツの場合、やりくりっての

を知らねぇから、この先、万が一の時にな

ったら、どうやって蘭を守りながら生活し

て行くのか、その術がねえんだよ」


毛利探偵は、おっちゃんから色々聞いてい

たらしい


オレや和葉は、小さな頃から一緒に夏祭り

とかに行っても、2人で半分ずつ出しあっ

て、半分こして食べたり遊んだりするんが

自然な事やった


食いしん坊のオレと和葉は、少ない予算で

最大限楽しむために、2人で考えてやって

た事やねん


誕生日プレゼントも、クリスマスも、和葉

とオレに親父やおっちゃん、オカンは必ず

同じくらいの額のモノを用意してくれた


せやから、和葉とモノで喧嘩した事は無い


中学受験の時から、参考書やら問題集は、

基本的に共同利用やったし、それは今でも

変わらん


「それはね、小さな頃から自然と、やりく

りの方法を2人一緒に学んでいたって事」


「その点、蘭はいいとしても、あの坊主は

全くトレーニングされてねぇからな」


だから、これからの大学生生活で、少しは

学ぶべきだと言う

そうじゃないと、社会に出て、自分が恥ず

かしい思いをするハメにもなるから、と


もう一点、毛利探偵が挙げた違いは


「オマエは、服部一族の跡取りとして、必

要以上に厳しく育てられてるけど、アイツ

は違う」


修羅場の経験値が違う、と

少し、自分や蘭を守るための戦闘能力だっ

て身に付けないとダメだしなぁ、と言う


「危険に自ら首を突っ込む割には、その辺

の能力は全然、足りないんだよ

何も蘭ほど強くなれとは言わねぇけど」


博士の小道具や、蘭とかオマエが居なくて

も大丈夫な程度には、な?


そう言うた毛利探偵は、工藤のためにも、

甘い顔はせん、と断言しとった


「和葉ちゃん、仕事で見送りには行けな

いけど、元気に行って来るんだぞ?

コイツが悪い事したら、すぐ連絡しろよ?

駆けつけてやるからな」


「そうよ、身体には気をつけて」


はい、と言うた和葉と、苦笑したオレは、

毛利夫妻を見送り、数週間後、工藤らに見

送られながら、渡英した


1週間、和葉と新婚旅行代わりに英国周遊

をして、後から渡英してくるオカンと合流

して引っ越しをする予定


日本を出発した飛行機の中、隣の席の和葉

の手をしっかり握る


ここから先が、本当の意味でのオレ達の、

夫婦としての生活がスタートする


頑張ろうな、和葉


寄りかかり、早くも眠り始めた和葉

その眠りが穏やかである事を祈りながら

オレも静かに目を伏せた


第2章へ

to be continued