アメリカのこわーい食品
アメリカに来て、食事に気を使うようになりました。アメリカに対する、私の偏見もだいぶ入っていると思うんですが、、何だか色んなものを疑ってかかってしまう。ベルギーにいた時はそんなことはなかったんだけど。ベルギーでは生産者と消費者が近くて、近所のマルシェで農家の人から直接有機野菜を買ったりすることができて、安心して買い物をしてたからかな。
アメリカではすべてが大型スーパーに集約されていて、自分で納得したものを買うのがほんとに一苦労。疑心暗鬼になってしまいます。海外で、外国語の中で暮らしていると、なかなかちゃんと理解して食べる、というのは難しいことです。日本にいても正しい情報を読み取るのは難しいんだから、いわんや…ですね。英語の品質表示とにらめっこしながら買い物をすると、毎回とても時間がかかってぐったりしてしまいます。
私のアメリカの食に対するこの嫌悪感は、高校生の時に見た社会の教科書が原因だと思うのですが、その写真はヘリコプターで広大な農場に農薬を散布しているものでした。それ以来、そのイメージが頭の片隅にこびりついていて、アメリカの食品は怖いという印象を持ってしまいました。あと中学生の時に1か月アメリカ人の家庭にホームステイして、ほぼ冷凍食品しか食べれなかったという苦い思い出もあり。
幼少期の両親の食育のおかげで、比較的、食に敏感になったことは一生の財産だなぁとしみじみ思います(スナック菓子とか甘いお菓子とか結構食べたくなりますが)。私はほとんどコーラは飲みませんが、哺乳瓶にコーラを入れて赤ちゃんに飲ませている光景を見ると、その子は炭酸飲料に抵抗を持たない大人になるんだろうなぁ…と、「知っていること」の大切さを感じます。自分の体は自分の食べたもので出来ているのだから、口に入れるものが何なのか、ちゃんと知っておきたいですね。
アメリカ人にこんなこと言うのは失礼かなと思ったんだけど、この間英会話クラスで、ペアになった人にちょっと自分の思っていることを話してみました。彼女にアメリカのご飯はどう?って聞かれたもんだから、正直にヘルシーじゃないよねと返答したら、実は彼女はすごーく食に気を使っているアメリカ人で、色んなことを教えてくれました。会話の中で、彼女に教えてもらった映画がとても良かった(怖かった)のでここで紹介しておきます。
「フード・インク」という2011年のドキュメンタリー映画で、アカデミー賞にもノミネートされたもの。この映画を見るとしばらく、外食をしたくなくなります。一体どんな材料を使っているか分からなくて怖いから。スーパーでの食材選びも必ず変わります。本当に一見の価値あり。
アメリカの食品産業は、巨大な企業に集約され、「効率的に」低価格の食品が提供出来る仕組みになっています。ただ、それって本当に効率的なのか?大企業が利益を追求することで、色んなところにひずみが生じてきています。搾取される労働者達、安い商品しか買えない低所得者層たちの糖尿病、儲けを重視するあまり安全が軽視され食中毒が相次ぐ状況…。効率的だったはずが、全く効率的ではない、おかしな世の中になってしまっています。
映画の中で、唯一希望の光が見えた点がありました。小売店はとても敏感で、消費者の嗜好に合わせて陳列する商品を決めるということ。つまり消費者がオーガニックな商品を望めば、それが売れるのだから、ウォルマートもオーガニック商品を並べます。多国籍企業の巨大な食品チェーンの中においては、個人の力なんてちっぽけだけど、私たち消費者の一人ひとりの選択が積み重なれば、企業も変わっていくんじゃないか、そういう一縷の望みも見えた作品でした。