日本の難民受け入れ問題(Vol.2)
難民認定手続きと問題点
日本の「難民問題」「外国人受入れ問題」を解説するシリーズの2回目。
今回は、難民認定手続きについてです。
最近、難民参与員が難民認定の審査の際に暴言を言い、法務大臣が謝罪するという事態にまでなり、話題になりましたが、具体的にどのような手続きのもと審査が行われるのか解説します。
① 所轄は入国管理局である
「難民認定手続き」とは外国人が難民の地位に該当するかどうかを審査し、決定する手続きであり、法務省入国管理局がその業務を管轄しています。
難民条約に加盟したことにより、日本の国内法も難民受け入れのために整備する必要があったため、それまでの「出入国管理令」は「出入国管理及び難民認定法」と改定されました。
② 当事者本人に立証責任を求めている
難民認定手続きにおいて入管は次のように定めています。
「難民の認定は,申請者から提出された資料に基づいて行われます。したがって、申請者は,難民であることの証拠又は関係者の証言により自ら立証することが求められます。」
つまり、本人が自らの難民性を立証しろということです。
右も左もわからない国で、難民審査の手続きを準備し、証拠を揃え、さらに母国語からの翻訳文も用意しなければ審査をしてもらえません。
これは迫害を逃れ、命からがら国外に脱出した難民申請者にとってとても高いハードルです。
③ 難民認定申請における60日間ルールの存在と仮滞在許可の制限
2004年の入管法改正まで、難民認定手続きには「60日間ルール」が存在していました。
これは入国から60日以内に難民申請を行わなければならないという制限です。
しかし、入国する際に難民申請の説明がされるわけではなく、申請の遅れということだけを理由に不認定が下されるなど、難民申請者にとって不利益なものでした。
2004年に仮滞在許可制度が作られましたが、日本に直接入国したこと、上陸から6か月以内に難民申請すること、と依然として制限があり、仮滞在許可(※)が認められるのはごく一部となっています。
※仮滞在許可
不法滞在者等の在留資格未取得外国人から難民認定申請があったときは,その者の法的地位の安定を図るため,当該外国人が本邦に上陸した日(本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあっては,その事実を知った日)から6か月以内に難民認定申請を行ったものであるとき又は難民条約上の迫害を受けるおそれのあった領域から直接本邦に入ったものであるときなどの一定の要件を満たす場合には,仮に本邦に滞在することを許可し,その間は退去強制手続が停止されます。
④ 厳しい認定基準
日本は難民として認定される基準が厳しいと国内外から批判されています。
入管は難民性の立証において民事訴訟のレベルを要求します。
ある日本人支援者は、不認定ばかりになる理由をこのように論断しました。
「このような低い数字に留まる大きな要因は、(1)軍・警察等による迫害のみを迫害として解釈する、(2)過渡期にある国・地域の状況を過度にそして意図的に楽観視する、(3)訳文を付けない証拠を受け付けないことにより立証を重大な障壁を設け、立証努力自体がなかったことにする、という現行の難民認定実務がある。」
立証責任を本人に負わせたうえ、量も質も高い証拠を要求することは、難民申請者本人たちにとって不利なのは言うまでもありません。
⑤入管独自の判断基準による弊害
この文書は、とある難民認定手続きにおける書面です。
これには迫害主体であるボコ・ハラムについて、「関係資料によれば, ナイジエリア政府が同組織による違法行為を放置,助長している状況にあるとは認められない」と書いてあります。
しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチの2015年10月の報告書は「ボコ・ハラムがカノ市で警察署などを襲撃し、警官29人を含む185人を殺害した」と報告しており、実情に沿って判断が下されたとは考えられません。
⑥まとめ
このように、入管は国際的な常識や各国の客観的な状況を正しく判断せず、独自のルールで審査を行っているのです。
一部報道では、難民参与員が「認定」判断した申請者についても法務省入管が「不認定」と判断している場合も見られるとも言われています。
自分たちの判断を正当化する根拠を意図的に明示せず、それによって申請者が有効な弁明を行う可能性を狭めていると考えざるを得ないのが、現在の日本における難民認定手続きの重大な問題点であると言えます。