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フェスボルタ文藝部

今年観た映画。と触発されてやってみた展示。とそれに寄せた文。(ベズ柴崎)

2017.09.27 11:14

あるとき、よくあるこじらせでひきこもり、映画ばかり観ていた時期があったのですが最近は年に数える程度しか観なくなってしまった。

この文藝部ブログでは過去に観た好きな作品についても気が向いたらゆっくり書いて行きたいと思うのですが、今回は今年観れてよかった作品を簡単にご紹介。


オリヴィエ・アサイヤス「パーソナル・ショッパー」

https://youtu.be/kyCcZ0v8jd4


エドワード・ヤン「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」

https://youtu.be/dG-7eZEDgjM


レベッカ・ズロトヴスキ「プラネタリウム」

https://youtu.be/0MvPkq1Um_o


この三本は公開の情報が出てから今か今かと待ち続けた三本だった。

(内容や雰囲気はYouTubeパイセンを参照。他に、ララランド~お嬢さん論争とその鑑賞・感想についても触れときたかったけど、大したこと書けないため割愛。)


パーソナルショッパーはiPhoneのテキストメッセージをキーにファッションとスピリチュアル、物質と精神、見えるものと見えないものとの狭間で揺らぐ現代の姿を浮かび上がらせたドラマ。

内容もさることながら、この時代にアサイヤスがクリステン・スチュワートをモデルに撮影・記録していたということそのこと自体に映像史・文化史的に重要な価値がある。

クリステン・スチュワートは初監督作品としてAI技術を使った映画を撮ったそうだがそれもとても楽しみ。


クーリンチェは伝説の傑作として長年伝わっていた作品。映画スタジオに忍び込み撮影を覗く牧歌的な序盤から、物語の結末はなぜあのように至っていったのか。

軍事演習とデートの風景。賭博やライブハウスを巡る抗争。人間臭く、眩しいほど美しい映像が続く。

そして劇中で印象的なのは懐中電灯の明かり。一点の光明が照らす思春期の儚さ。脆さ。


プラネタリウムは映画という夢に取り憑かれた男と美しい姉妹による降霊術ショーを中心に、こちらも目に見えるものと見えないもの、そして、思い出すことのできない、しかし、決して忘れることのできない時代と記憶の旅を巡る物語。

男も姉妹も実在のモデルがいるそうなので調べたい。

予告編にもある、雪のシーンではしゃぐリリー=ローズ・デップの表情が上映後しばらく、瞼を閉じても消えなかった。



僕はまだこの三作が今年公開される前の段階から情報を見ただけで興奮してしまい、WEEK-ENDや周囲の親しくしているグループへのデザイン協力・その他の様々なサポートをしてくれている火山くんと開催したWEEK-ENDの展示イベントにこの三作のイメージを盛り込むことにした。


最初は火山くんが、アイドルとお化け屋敷みたいなテーマの展示をやりたいと相談してきてくれたところに、ちょうど僕のマイブームだったその三作が合致するような気がして無理やり三作のイメージを接続し、展示タイトルは『ヤバラブ!サイリウムプラネタリウム』になった。

(冒涜にすらならないひどいタイトル。)


クーリンチェで、懐中電灯で暗がりを照らしていたように、展示も懐中電灯とサイリウムの明かりで覗く形にし、パーソナルショッパーやプラネタリウムのように降霊術をしているという設定の展示になった。


そのときに火山くんが、何かこの展示を開催するにあたって、コンセプトを説明するような文章を書いてくださいと言ってくれたのがきっかけで、短文を書くことができた。

それは来場者の皆さんへ配布したのですが、せっかく文藝部が始まったということで今年の思い出に・総括として、残しておきたいと思う。




以下

『ヤバラブ!サイリウムプラネタリウム』

世界概要。

(※展示当時に配布されたものから若干、内容を微修正しましたが、推敲不足なため内容が繋がっていない箇所や矛盾箇所あるかと思いますがご了承ください。)

(※厨二病注意。)









1.

20XX年。

前代未聞の災害事故により数多くの犠牲者と未曾有の大気汚染に見舞われた極東の島国。

科学ではもはや手に負えない緊急事態の到来に慌てふためく者、人間の愚かさを嘆く者、再生へと向かい心血を注ぐ者らで激しい議論が繰り返されていたが、年月の経過と共に狂騒は鳴りを潜め、次第に記憶は風化され、生活に落ち着きを取り戻した人々は変わらぬ日常を送っていた。

しかし、そういった国民たちの安堵する気持ちとは裏腹に人体にはある影響が現れ始めていた。

それは、新たにこの世に産声を上げる新生児の性別において、女児の出生率が年々、目に見えて減少傾向を示しているのだった。

その現象は大規模な災害事故により半永久的に垂れ流され、人体に蓄積され続けていく大気汚染物質の影響染色体異常に原因があることは明らかであったが、一体誰がどのように責任を取り、改善や賠償をしていくのか。

深刻な事態を目の当たりにした人類は、解決へ向かうためのまともな議論の進まぬまま、ただただ減少していく女性たちを保護するための建物、地区、壁の建設が進められていった。


2.

繁華街のビルの通路の奥。

普段は物置のようになっている薄暗い部屋があった。

そこでは不定期によくわからないセミナーのような集会が催されている。

ある日の正午から行われた集会の開催者名の記入欄には「第三ジェンダー」と記されていた。

「第三ジェンダー」の議事録

・国により規制されているテキストデータ、画像、動画、雑誌、書籍、写真集などを閲覧するとたった数十年前には信じられないほど世界に女性が溢れていたことが分かる。

・いまワタシたちの時代で「あいどる」「もでる」「ぎゃる」「あーちすと」等の名称で崇められている着飾った偶像の「オンナ」による祝祭は生物学上の真性な「女」たちが繁栄していた時代の伝承やその名残りであり、また現在、滅び行く運命にある「女」が途絶えることなく繁栄することを願った儀式である。

・未認可の薬品「ピンク・ビリーバーズ」は、服用した男性の肉体を女性的特徴に変容させる効能があり、過去、ごく稀に一部の人間が服用し錯乱状態で保護されるというケースが年間に数件確認される程度だったが、近年はそれを入手した若者たちが古い時代の男女の営みを仮体験するための遊びに使用しているのが確認されるなど、その存在が一般に表面化しつつある。

・我々、第三ジェンダーは「ピンク・ビリーバーズ」の出所を探ると同時に、その平和的な有効利用を目指し、身寄りの無い男児に「ピンク・ビリーバーズ」を投与し、男性を超え、女性をも超えた、第三の性の創造を目的とすることをここに宣言する。


3.

第三ジェンダーのその後。

未認可の女性化ドラッグ「ピンク・ビリーバーズ」を投与しての第三の性の創造を巡り、価値観の対立に発展しグループから枝分かれし活動をした者らがいた。

ユダとなり活動をしたその者らは、秘密裏に計画していた「VR第三ジェンダー」なる装置を発表し、結果的に「第三ジェンダー」の名を広めることに強く貢献した。

人類の救済を目的に思想的活動として進められてきた当初の第三ジェンダーにとってその発表は全くの寝耳に水の出来事であった。

「VR第三ジェンダー」は、もはや一般に浸透しきっているありふれたVR映像に併せて、未認可の「ピンク・ビリーバーズ」を極めて微僅かな量を混入させた栄養ドリンクとセットで販売され、ドリンクを服用しながら映像を観賞することで女体化し仮想空間へ没入出来ることが話題になっていた。

「VR第三ジェンダー」は瞬く間に品切れとなり、娯楽・芸術分野においてや医学、研究、産業的な側面などにも話題を呼び、多くの非難と称賛を浴びた。

「VR第三ジェンダー」が世界的なビッグバンを巻き起こしていくなかで、正統だったはずの核・第三ジェンダーはひた隠しの存在を余儀なくされ、「異端」として歴史上からその姿を消していくこととなった。

それからしばらく時が経ち、未曾有の災害事故による大気汚染はいまも変わらず蝕むように環境を破壊し続け、形骸化してしまった巨大な発電所施設の周囲の森の奥深くでは「降霊術師」を名乗る女装した生活者たちが住み着いたという噂が流れていた。

そこでは、失われた「第三の性」を求めて、呪詛にも祝福にも似た小さく悲しげな歌声がいつまでも鳴り響いているのだという。


4.

国家により厳重に管理されている女性保護区域で、腹部を膨らませている女性が街頭インタビューに答えていた。

「男の子か、女の子か。どちらが生まれてもそれは神様が決めた運命です。どちらが生まれても精一杯の愛情を注ぐことに変わりはありません」

女は幸せそうに微笑みながら、膨らんだお腹を大事そうにさすっていた。

女性保護区域にある警備官の専用ホテルの一室でそのニュースを見ていた男は「どうせ男が生まれてくるに決まってる。国営放送もネットもいつだって作り物の幸福で洗脳ばかりさ」と頭の中で愚痴を飛ばしていた。

男はため息混じりに煙草の煙を吐き出すと、暇潰しにポルノサイトにアクセスした。

サイトから流れてきたポルノヴィデオは、かつて人類の視覚の歴史に爆発的な革命を起こすと喧伝されながらも現在ではごくありふれてしまったVR技術を応用させたもので、どうも中高年が見るカビの生えた古くさいものという印象があった。

男は押収品からくすねた「ピンク・ビリーバーズ」をいつものように三錠、口に含むと一気に酒で流し込んだ。

「VRなんてこれくらいしないとつまらんよ」とでも言いたげな男の表情と身体は煙草を二、三本吸っている内に女性的な特徴に包まれていった。

眼前のモニターにVRポルノが映し出されると、それからしばらく豚のようなうめき声が室内にこだました。

その声がやがて止み、男は映像を流したままで満足そうに眠り耽っていった。

つけっ放しのポルノヴィデオのエンドロールには「VR第三ジェンダー」の文字があった。

夜が明けて、朝のニュースが流れる。

「今朝、女性保護区のホテル内の一室で警備官が変死しているのが発見されました。警備官の死因は未認可薬品の過剰摂取と見られており、警備官の股間からは大量の出血が確認され…」


5.

ゴシップサイトの三面記事

「私はピンク・ビリーバーズを売っていた!独占インタビュー!」

記者「このドラッグはどこから入手してくるのですか?」

売人「最初は精力剤やプロテインの適当な詰め合わせを個人で輸入して色々試している中にこれが混じってた。詰めたやつがいい加減に混ぜてしまったんだろうと思うけど、これが使ってみたら面白かった。それからはこればかり取り寄せて遊んでいたけど、欲しがるやつがいたから分けてやってたんだ。そのうち、薬が足りなくなってきて買いたいやつが出てきたから売るようになった。そしたらそっちが本業よりも儲かるようになってきてそれまでの仕事をやめて、個人で輸入して売るようになった」

記者「顧客はどんな人がいる?」

売人「欲しがるやつはそこらへんを歩いてるような普通の人だよ。芸能人とかスポーツ選手とかモデルとかもいる。あとは「オンナ」の業者が自分の店の「オンナ」をもっと「女らしく」するために与えたりね」

記者「未認可の薬品ということで捕まる危険性もあるが?」

売人「顧客には医者とか警察とか政治家もいるから、そいつらの中で信頼できる同士、結託しているから派手にやり過ぎなければ捕まることはない。そいつらだって薬が無くなったら困る。輸入品じゃなく身内用ってことで自分たちで複製品を作るようになったやつらもいる。それを小遣い稼ぎに売りさばいているやつらもいる」

記者「ピンク・ビリーバーズについてどう考えている?」

売人「これが認可されれば元々あった人間のバランスが取り戻せる。やりたいやつはやったらいいんじゃないか。この薬は例えるなら、翼でも生えたような気分になるんだ。女になるのは本当に楽しいよ」


6.

急に通り雨が降ってきた。

外国から観光に来たツアー客とガイドの一群は、視界と足元が悪くなった山道の曲がり道を一本間違えていた。

ガイドはその間違いにすぐに気が付いたが、正規の道から少し外れたところでこのルートには野性の動物に襲われる危険性がないことや、このまま道なりに歩いていけば町へ戻られることは分かっており、僅かに遠回りになるだけでこれといって代わり映えのない景色があることが分かっていたので黙ったまま先導をしていた。

それから景色を眺めてしばらく歩いていると、濡れた枯葉を踏み固める不規則な足音の中に何か歌声のようなものが聴こえていることに気がついた。

ガイドは足を止めて草むらへ潜り込み、伏せて隠れるように指示をした。

生い茂った草の中から辺りを覗き込むとそこには女装した歌うたい達の姿があった。

この町でガイドとして勤務するようになってから噂では聞いていたが実際に「降霊術師」を目にしたのはこれが初めてのことだった。

ガイドも客のほとんども「不気味だ」と思っていた。

歌が終わり、雨が止むと「降霊術師」たちは森の奥深くへと消えていった。

ガイドは「この地域のお祭りのための練習をしているんですね」と場を収めるための曖昧な説明で誤魔化し、ツアー客を引き連れて足早に下山した。

ホテルでは土地の名産物をふんだんに使った郷土料理が振る舞われ、客たちは喜んでたいらげては思い思いの夜を過ごした。

ツアーの中にいた一人の少年はベッドの中で今日の山道の出来事を思い出しながら、大人たちに分からないようにスマートフォンで録画していた「降霊術師」の映像をインターネットの親しい友人たちに向けて限定公開した。

少年は山道で女装した集団を見てしまった驚きと、まるで世界の重要機密をリークしたかのような気分とが混ぜ合わさり、性的な興奮を覚えた。

奇妙な出で立ちで不気味に舞い踊る姿と同時に、流れてくる歌声にシンクロをするように音声自動翻訳機能によっておおまかに母国語へと変換された歌の歌詞が画面上に表示された。


『この世で見えたもっとも美しいものは何だったか。

ダイヤモンドより、美術品より、星空より、花や果実より、世紀の発見の数式より、そびえ立つ歴史ある建造物より、鳥のさえずりより、洗い立ての白衣より、静かな湖畔のせせらぎより、故郷の料理や酒よりも、もっと美しいものは何だったか。

失われてしまったあなたの腰つき、やわらかな髪の毛、瞳や唇、わらった顔、かなしそうな顔、さびしそうな顔、おこった顔、ないた顔、てれた顔。

そのなかにもっとも美しいものはあっただろうか。

わたしたちがみてきた夢と理想は、それよりもほんのすこしだけ、みにくかった』


ツアー客たちが帰国へ向かう空港では「ピンク・ビリーバーズ」を輸入しようとした外国人がまた一人、連行されていく姿が見えた。

騒動に巻き込まれないように少年と父親はコーヒーショップで飛行機の飛び立つ時間をゆっくりと待っていた。

多感な年頃のためか父親とあまり会話をしようとしない少年のイヤフォンからは「降霊術師」の歌声が聴こえていた。

少年は飲み慣れないブラックコーヒーを舐めると、しばらくぼーっとしながら昨夜に限定公開した投稿を確認した。

そこには「なにこれ、気持ち悪い」というコメントが一件ついているだけだった。










以上

『ヤバラブ!サイリウムプラネタリウム』

世界概要でした。

(けっこう当時書いてて気持ちよかった。自己満足ゥウ)



パーソナルショッパー

(クリステン・スチュワートさま、このあと丸坊主に。)

クーリンチェ

(台湾映画、巨匠ものもまだそこまでまともに観れていないためがっつり観たいところだが、、。)

プラネタリウム

(最前どセンターのお客さんが上映後に割と大きめの声でディスってたのわろた。これも映画館ならではの醍醐味だと割りきろう。)




ヤバラブ!サイリウムプラネタリウム参加時のスパ転ちゃん。

(たくさんの楽しいライブや思い出をありがとう~!涙)

同じく、展示参加時のちよこちゃん。

(ライズアップ聞きたい、)

同、モリィちゃんとルアンちゃん

(長田閣下、一時期真剣にモリィちゃんを加入させようとしていたという裏話。)

同、SAKA-SAMAちゃんと、HASEGAWA BEETちゃん(HAMIDASYSTEM)。

SAKA-SAMAさんはゲリラライブやってくれたり、アルミの服を着て楽しそうにお化けをしてくれたりと大活躍でした。



↓そ・し・て!

9/30(土)-10/22(日)!

TRASH-UP!!Presents「アイドルと芸術」展が開催だそうです!

御徒町mograg gallery(入場無料)!

アイドルが好きなあなたも、アートが好きなあなたも、興味はあるけどライブや展示に行けてないそこのあなたも、ぜひ覗いてみてください!




リリーローズデップかわEヨな一年でした。






ばいちゃ!


ベズ