台子点前について
図書館で『お茶のおけいこ37 裏千家 台子・長板の点前』を借りてきた。点前手順や解説が分かりやすくて良い。手順だけ知っていれば良いわけではないので、台子について知ったことをまとめてみたい。
台子は、鎌倉時代の僧、南浦紹明が宋から皆具一式を持ち帰ったことが始まりで、祟福寺を経て大徳寺に贈られた。天龍寺の夢窓疎石(庭園設計で有名)が点茶に台子を使い、足利義教の時代に書院茶の台子飾りとなり、足利義政の時代に普及した。その後「わび茶の開山」である村田珠光が点茶式法を定め、武野紹鴎や千利休によって台子点前が完成された。
台子には真台子、竹台子、及台子、高麗台子、爪紅台子とあり、五つ台子という。
唐の時代の『茶経』や宋の時代の『茶具図賛』には当時の茶道具が描かれているようだが、台子の絵もあるだろうか。明の時代になると抹茶法はなくなってしまった。ところで、沖縄にはぶくぶく茶というものがあり、動画を見ると大きな茶筅でふわっふわっの泡を作りそれを喫する。豊臣秀吉が開いた北野大茶湯では、抹茶を持っていない者は麦を炒ったこがしを持参して良いことになり、そのこがしが琉球に伝わりぶくぶく茶になったそうだ。琉球式の茶筅はどことなく宋代の抹茶法で用いられた茶筅に似ているように思った。
さて、台子の話に戻ろう。本の中に「台子の心得と扱いの原則」が書かれているので、原文通りに引用する。
一、台子は貴人畳の前べりから十六目向こうに据える。木目がある場合は地板の根杢(木目の根のほう)を勝手付にし、天板の根杢を客付にする。
一、小間では台子はもちろん、棚物はいっさい使用しない。
一、台子のように総飾りにするものは逆勝手の席では使用しない。
一、台子には、風炉釜、水指、杓立、蓋置、建水を飾るを原則とする(炉の場合は風炉釜を除く)。これを総飾りと称し、場合によってこれら皆具のうちどれかが省略されることもある。
一、高麗台子は炉に用いるものである。
一、台子の初炭では、天板の左前隅に羽箒た香合を飾る。
一、台子の濃茶点前は、ふつうは天板の中央に薄茶器を飾り、水指の前に茶入を飾ってから客を迎え付ける。炉の場合、茶入は台子の中心に飾る。
一、台子の薄茶点前は天板に薄茶器のみ飾る。
書院茶では、お点前をする場所とお茶を飲む場所が分かれており、茶を点てる場所を台子所といい、同朋衆がお茶を点てて書院に運んでいた。要するに水屋でお茶を点てていたわけだ。もしそのままだったら現在のように茶室で台子が注目されることはなかったかもしれない。
総飾りで杓立が必要なのは、本来柄杓は杓立に立てるためだからとある。確かに、蓋置はその名の通り釜の蓋を置くためのものだが、わび茶の登場で蓋置に柄杓を置くようになった。