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経絡治療からみたカンジダ腟炎の病因病理と鍼灸治療

2017.09.28 13:52
症例

☑患者 妻。

☑現病歴 父兄の当番制で息子のバスケットの練習を観に行っていたが途中から陰部に強烈なかゆみが襲ってきた。帰ってくるなり市販薬を塗ったが治まらないのでとにかくこのかゆみをとめてほしいとのこと。

※大正製薬さんより転載


☑応急処置 聖典〈素問・標本病伝論篇〉「急なれば標を治療せよ」に従い陰部のかゆみの特効穴である蠡溝に施灸。

左右の圧痛を比べて圧痛の強い左側に5壮、右側に3壮知熱灸。

→かゆみがマシになったので体表観察。

☑経絡腹診 脾心虚、肝腎実、肺平。

☑脉状診 浮・やや数・虚。

☑比較脉診 脾心虚、肝腎実、肺平。

☑証決定 脾虚肝実証。

☑適応側 特に病症の偏りがなく女性であることから右側とした。

☑本治法 右商丘、右間使に補法。検脉すると肝実は治まっている、左寸口小腸の脉位に実邪が浮いてきたので左小腸経の支正に浮実に応じる瀉法の手技で処理。→かゆみは治まる。

☑標治法 右沢田流小腸兪に龍仙打鍼を神氣精のリズムで三打。


カンジダ腟炎の病因病理

「湿熱下注」です。

湿熱の発生機序を見ていきましょう。


口から取り入れた飲食物は胃に納まり(受納)→消化されます(腐熟)

消化の目的は体に必要なものとそうでないものを仕分けることです(泌別)

必要なものを「清」とします。

清は網の目のように毛細現象を伝って全身に行き渡りあらゆる細胞・組織・器官・臓腑・経絡・四肢百骸を養い活動力を与える栄養分(気血)と水分(津液)になります。


一方、そうでないものを「濁」とします。

濁は小腸に行き固形物と水分に仕分けられ(泌別)、固形物は大腸に水分は膀胱に送られそれぞれ大小便として体外へ排泄されます。


この清濁を別つ一連の流れをスムーズに行わせる働きを「脾臓」とします。

脾臓は五臓の1つですが、五臓とは現代医学の臓器というモノではなく、私たちが生きていくために必要な5つの大切なハタラキと認識を深めてください。


脾臓の働きが順調であれば、栄養分と水分はサラサラと巡りますが、脾臓の働きが失調すると清濁泌別や運化が順調でなくなり栄養分と水分はサラサラと巡らなくなりネバリます。

水分は流れているうちは津液として行く先々で潤し養いますが、流れが悪くなると「湿」としてネバネバします。

病的な水分ですから「湿邪」とします。


湿邪は流れなくなった病的な水分ですから、全身の気血水の巡りを阻みます。

これを「阻滞」とします。

阻滞はさらなる気の停滞を招きます。

これを「気滞」とします。

気が停滞すると緊張・軋轢・摩擦を生じます。

手を力一杯握りしめてください。

力を込めれば込めるほど緊張します。

そして手のひらが赤くなって内圧が高まります。

熱が発生しています。

これと同じで気滞はやがて「火化」します。

病的に生じた熱なので「邪熱」とします。

湿邪+邪熱=「湿熱」という病理産物の誕生です。

エイリアン誕生みたいですね(^_^;)


邪熱は陽邪なので上昇拡散の性質を持ち合わせていますが、湿邪は陰邪ですので下降収斂の性質を持ち合わせています。何より元々水ですから水は上から下に流れ落ちます。

これを「湿熱下注」とします。


これが陰部に影響すると陰部でさらに強い気滞を生じ邪熱を発生します。

熱は陽性なので活動的です。

体内で陽気が動じると「風」が起こります。

火災現場の上空で凄まじい炎と気流が舞ってるアレです。

「火は風を生む」という自然界の法則です。

病的に発生した風ですからこれを「風邪」とします。

「遊走性」に乗って動き回って吹き荒れるので強烈なかゆみが襲ってきたりオリモノがドンドン下りてくるのです。


これが、東洋医学から観たカンジダ腟炎の病因病理です。


脾臓が失調する要因ですが、消化・吸収・排泄を担うのでそれに負担をかける暴飲暴食や逆の不摂生は脾臓を傷めます。

また、脾臓は四肢を司るので運動不足

や手足の使い過ぎ(過労)も脾臓を傷めます。

思慮過度も精神の清濁泌別に負担をかけます。

→湿熱を生じ下注します。


また陰部は、五臓では「肝臓」という働きの元締めとなるところです。

脾胃湿熱と同時に「肝胆湿熱」という病理状態にも陥ります。


肝臓も気血を巡らす働きを担っていますが、滅法ストレスに弱いという特徴があります。

肉体と精神の疲労があって体力が落ちてくると気滞を生じ肝胆の湿熱から脾臓を失調させる場合もあります。

→湿熱が生じ下注します。


治療は、脾肝を和します。

陰部のかゆみの特効穴は蠡溝です。

虫がうごめくかゆみに効くという意味がこめられています。

本症例でもそうだったように、肝の子午陰陽関係にあたる小腸経を用いて肝を調節することができます。


養生は、暴飲暴食を控え、適度な運動を心がけ、ストレスをためないことです。


この病気のほとんどが、性感染症ではなく免疫が低下したことに起因することからも、普段からの養生が大切であると言えます。


何はともあれかゆみが治まってなによりです。

そりゃあストレス一杯あるわな。

毎日ありがとう。

必ず宇宙一幸せにします(^з^)-☆