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WUNDERKAMMER

イトウ

2017.09.29 08:23

高校から今にかけて、俺の周りをウロチョロする謎の同級生がいる。


初めて言われたのは高1の時。

夏休み明け直後の日だったんだが、いきなりクラスの奴に「イトウって知ってる?」と聞かれた。

「イトウ?知らないなぁ」

「何言ってるんだよお前と同級生だろ?地元の友達だろ?」

「いや、しらんし」

数日後・・・

「やっぱりイトウって知ってるだろ?アイツお前と仲よかったらしいぞ」

「だから知らないって・・・」

「しらばっくれるなよ!」

「はぁ?そんな奴いないつぅの!」

それでケンカになった。

そいつは俺に薄情だと言う。

俺は知らない奴を知ってる奴だと言われて、なんかシャクに触ったのでキレた。

まぁ若い頃だから血の気は多いとして、それでもクラスの奴は異常にキレた。


家に帰って、卒業アルバムを小学校の頃から調べたけど、やっぱりイトウなんていなかった。

結局、それ以来口を聞くことはなくなりソイツは転校していった。

変なわだかまりが残ったけど、しばらくイトウの名を忘れてた。


学年が変わり高2。またイトウの名を耳にする。

今度は部活が一緒だった隣のクラスの奴。

「なぁ、イトウって知ってる?お前と同じ中学なんだろ?」

「いや知らないって・・・」

「だってさ、お前と同じ部活で、三年間一緒だったっていってたよ」

「はぁ?ちょっとどういう知り合いなのか、詳しく教えてくれよ」

久々にその名前を聞いていやなことを思いだしたけど、正体が知りたくて詳しく聞いてみた。

「女だよ、背の低いさ、友達の友達なんだよね、こないだそいつとカラオケ行ってさ、ノリのいい奴」

「いや・・・知らない・・・女ならなおさら知らない・・・」

「マジ?連れてきてやるよ。本当にイトウ、お前のこと詳しいから」


俺、怖くなったよ。本当にどんなに記憶をたどっても、知らない奴なんだから。

わりと聞く名前だけど、イトウなんて同級生は一人もいない。



それから数日して、

「お前に会わせようとしたイトウさ・・・いなくなったらしい」

「え?なんで?」

「わからん。突然、家を捨てて、夜逃げみたいな感じだったって・・・」

俺「・・・」


次、イトウは意外なところで現れる。

地元の友達が、

「なぁイトウって同級生いたっけ?」

「いない!お前も『知ってる?』とかいわれるの?」

「お前も!!」

俺らの地元のグループで話題になった、イトウとかいうおかしな奴が、俺らの知り合いだと言う。

この現象は俺だけじゃなくて、周辺の友達に波及して、三人同じ体験をした奴がいた。

それも、三人とも違う高校で、全く別々の友達から聞いた話しだった。

「怖いな・・・マジ、イトウって誰だよ?」

「俺が聞きてぇよ!!」

同窓会でそのことをみんなに聞いたが、誰も知らなかった。

ただ、連絡がつかない奴の中で、イトウって苗字になった奴はいたかもしれないが、それも確認できたわけじゃなかった。


それから半年後。

「ねぇ、イトウって知ってる?」

今度は幼馴染の従姉妹が言いだした。


ゾッとする。またイトウの話だ。

背の低い女で、俺と同じ部活で、仲の良い友達だったイトウ。

従姉妹は俺のことをよく知っている。

「イトウなんて・・・いないよね?・・・」

「いない・・・」


それから数年間、イトウは姿を消す。

イトウのことは、頭の片隅くらいにしか残らない存在になっていた。


しかしまた大学卒業間近バイト先で、

「なぁ、イトウって知ってる?」

その場に倒れそうになったよ。


「背の低い女で、俺と部活が同じの?」

「そうそうwやっぱり知り合いなんだw」

「今も連絡とってるの?」

「あぁ、高校のときの部活の知り合いで・・・」

コイツは俺とタメで、高校のときの知り合いなら、イトウはその頃行方不明だったはずなんだけど・・・

「今さ!ソイツと連絡つかない?」

「あぁ、つくよ!イトウも今度飲みたいって言ってたし、ちょうどいいよ」

携帯電話の先からイトウの声が聞こえる。

「もしもしぃ」

「今さ、・・・うんうん」

かすかにだけどイトウの声が聞こえる。

実在する人物なんだ!

「悪い・・・イトウさ、なんか具合悪いからって、電話切られた・・・」

「そうか・・・じゃあ、また今度頼むよ」

次こそはイトウと話す。


次にバイトいったとき、イトウの知り合いだと言う奴の態度が急変した。

俺が何を話しかけてもシカト。

軽いいじめみたいな感じの雰囲気になってた。

なぜかバイト先の奴からハブられる俺。

その日の帰りに、店長にクビを言い渡された。

文句は言ったが、「悪いがしばらくこないでくれ」の一点張り。

気がついたら、そのバイト先は潰れてた。


結局、イトウとの接点は無くなった。

最初に俺にイトウの話をふったクラスの奴もいなくなり、次の部活の奴も、その後退学になった。

三人の同級生とも疎遠になった。

三人とも良い噂を聞かなかった。今はどうなったから完全にわからない。

従姉妹もその後精神的に病んで、今は話せる状態じゃない。

結局、イトウのことに関してはわからずじまいだったのかな・・・・


なんて思ってたら先週、彼女が「イトウって知ってる?」。

まだイトウは、俺の周りをチョロチョロしてるのかもしれない。