Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

許認可・法務  al&la  行政書士 井原法務事務所

日本行刑史 📖

2022.05.05 06:00

「行刑」とは,<刑を行う・執行する> と言う意味ですから、題名としては、「日本行刑史」でも「日本刑罰史」でも同じでしょうが、言葉が違うとニュアンスまで変わってくるので、著者に沿うのが一番です。


さて、近世に至るまで、世界各国に、残虐な刑は色々あったと言います。
中でも、フランスのギロチンは有名なものですが、大衆を面前に行うのですから、その悲惨さは、筆舌しがたいでしょう。
日本でも侍が切腹する時は、切腹後、首を切る介錯人が居ます。
あれは、切腹だけでは、いつまでも苦しむのが普通なので、いさぎよく命を落とす為とか、腸が出てしまい見苦しいので・・・という意味合いのものだそうです。
又、江戸時代には「入れ墨刑」(奈良時代よりあると言います)が、前科者としての印になっていたのは誰しも、テレビ・映画などでご存知のところです。
しかし、外国では、おしゃれや趣味の1つとして広まっているので、現代日本人にとっては異様ですし、当の外国人も、日本の本来の意味は知りません。
そこで、入れ墨をしている外国人に、日本ではダメな理由を説明してみましたが、反ってこちらの考え方を毛嫌いするだけでした。

西部開拓時代、馬泥棒は、吊るし首と決まっていたそうですが、あのような広すぎる土地柄であっては、人ひとりの命と馬1頭は同じだったという事は、分かるようなわからないようなと言った感じです。
そして、また、五右衛門風呂で有名な「釜茹での刑」は西洋にもあったと言います。しかも、湯ではなく、油やタール、鉛などを使い溶かすと言うのです。
今でも、アメリカで行われる電気椅子(又は薬殺)は、絞首刑より「人道的」と言われるのだそうです。これで思い出すのは、トムハンクス主演の映画「グリーンマイル」で、電気椅子で死刑執行される中、頭に水を付けたスポンジを乗せる場面。それは電気の通過率をよくする為でした。しかし、看守が主演の黒人にやらなかったので酷いことになったと言う話でした。トムハンクスといい、とてもいい映画でした。



話は戻って、「日本行刑史」には、「古代の祓い」からはじまって、「律令下での刑罰」や「江戸時代の刑事政策」「切腹と小伝馬町」「長谷川平蔵」「人足寄場」「明治の監獄制度」「恩赦制度」などに及んでいます。
明治の「監獄則」は、それまでの牢屋システムとは異なり、西洋化する明治政府の世界戦略ともいえる変わりようだったことは、この本でも、又他の本でもうかがえます。
ただ、何処の世界にもあった肉刑として、「鼻切」「耳切」から「宮刑」「自宮」等の話もありますが、興味本位の本でない故の書物と認識できます。
とは言え、やはり、「行刑史」なので、その残虐性を見るにとどまりやすいのは致し方ないとも思います。
そして、これを読み終えると、挿絵共々、行刑図録史を見たような思いをもするでしょう。

  

いかがでしょう。
さらっと、ご紹介しました。
興味が湧いたら、次には、「法制史」や「刑法」「監獄」などを繙くのが一番かと思います。



※「日本行刑史」滝川清次郎(青蛙房)