PRはファンづくりでもある。サステナブルなビジネス発展を目指して、ステークホルダーと良好な関係構築を〜PRライター入門〜
こんにちは。株式会社Cannpass代表の山崎春奈です。PR・キャリア・人材育成を軸にした会社経営をしながら、外資系メーカーに会社員として勤める複業(副業)キャリアを2016年から歩んでいます。
当社は、PR講座やPR人材プロダクション運営をつうじたPRライター育成をおこなっており、PRやPRライティングの基本を学べるコンテンツを発信しています。
今回は、PRって何?広告と違うの?など、PRの基本をお伝えします!
中長期的な視点をもって、ステークホルダーと関係構築するのがPRの役割
PRと聞くと、どんなことを思い浮かべるでしょうか。「広告」や「プロモーション」だと思われている方が多いかもしれません。
実は、PRというのは、Public Relations(パブリックリレーションズ)のこと。日本パブリックリレーションズ協会が出版している「広報・PR概説」から引用させていただくと、PRとは「組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である」とされています。
当社では「全てのステークホルダー、つまりお客さま、スタッフ、株主、世の中などと、良好な関係構築を育むことによってビジネスを成長させること」としています。もっとわかりやすく「ファンづくり」と表現することもあります。
例えば、新商品を発売するとします。
有名タレントやインフルエンサーを起用して、商品のメリットを大々的に打ち出したインパクトの強いCMや広告を出したことで爆発的にヒットしたとします。ここで、想定以上の売上を上げたとしても、必ずしもビジネスの成功とは言えません。
もしかすれば、しばらく経つと購入者からデメリットに対するネガティブコメントが続出。口コミでも評価が伸びず、売上は下降の一途をたどっていく……ということもありえるのです。
あるいは、一時的には売上が増えても、ファン化せず、リピーターがほとんどいないとなると、どうでしょうか。
もちろん、ビジネスにおいて売上を上げることは必須です。しかし、短期的な売上を求めるのではなく、中長期視点を持たなければなりません。そういった中長期視点を担うのが、PRなのです。
広告・マーケティングとPRの違い
広告とPRの大きな違いは、第三者視点・客観性にあるとよく言われます。
広告というのはテレビCMや雑誌広告など、“枠”を購入して掲載する場です。つまり、枠を購入した掲載者が、伝えたいことを自由に発信することができるのです。
一方でPR担当者は、自社の製品やサービスなどを、テレビ番組内や新聞・雑誌の本文内で紹介されることを目指します。何を取り上げるか、どのように取り上げるのかは、プロデューサーや記者が判断することです。原則的には、取り上げられる側が、どのように紹介されたいかを指示することはできません。
このように、第三者を介することによって、情報に客観性が出て、信頼が増すと言われています。
口コミも第三者評価が信頼を高めている例ですよね。グルメサイトやECサイトで、口コミを参考にする人は少なくないはずです。もしくは、友人や家族から勧められて商品を購入したり、お店に行ったりというのはよくあることですよね。
PRは「Love me」、広告は「Buy me」という言葉で違いを表されることもあります。「好きになってもらった結果、売れる」というのが、PRなんですね。
マーケティングについても、しばしばPRとの違いについて議論されます。
マーケティングの専門家ピーター・ドラッガーは、著作「マネジメント」の中で「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」と記しています。つまり、マーケティングの役割は、「物が売れる仕組みを作ること」です。信頼構築やファンづくりを第一とするPRとは、少し異なることがわかります。
ただし、数々の有識者が議論を交わす中で、「売れる仕組み」をつくるためには、ターゲットとなる市場を選び、カスタマーを育てる必要があります。それがすなわち信頼構築やファンづくりであるとも言えるので、PRとマーケティングは同じだという見解もあります。
広報とPRの違い
近年、広報はPRへと移行しつつあります。つまり、広報とPRは切っても切れないもので、まったく別物とは言えません。
広報のお仕事というのは、漢字を見る通り「広く報じる」ことを大きな目的にしています。企業がビジネスを行うにあたって、自社の商品やサービスを知ってもらうことは欠かせません。より多くの人たちに届けたいものであればあるほど、より広く報じる必要があります。
そこで、広報という役割が生まれました。インターネットが生まれる以前は、広く知ってもらうためにできる方法は限られていました。主な情報発信ツールは、テレビ・ラジオ・新聞などのマスメディアです。また、地域の情報であれば広報誌や回覧板なども広報に含んでいる場合があります。
以前はマスメディアを介して“伝える”ことしかできなかった広報ですが、インターネットの登場で、だんだん企業が自社サイトを持つことが当たり前になり、ブログやメルマガ、SNSの流行など、お客さまやエンドユーザーと相互にコミュニケーションが取れるようになりました。
企業の広報戦略においても、一方的な発信ではなく、コミュニケーションをとりながら商品やサービスを改善したり、ファンづくりをする機会が増えました。近年では、コミュニケーション上手な企業が多くなったため、「自社でもせざるを得なくなった」とさえ感じている担当者の方も多いはずです。
従来の広報という言葉が指し示す範疇を大きく超えて、やるべきことが増えたことからPRという言葉がよく使われるようになりました。
言葉の定義にとらわれず、「何のために、今何をすべきか」に立ち返る
ここでお伝えしている言葉と、その役割の解釈は、あくまでも一例です。あらゆる専門家があらゆる解釈を提言しています。
PRという言葉においては、「何をどうするのがPRである」という明確な定義はありません。なぜなら、PRとは、考え方や行動基盤などを表すものだからです。
また、例えば「広告」という言葉は「広く告げる」と書きます。その意味で、「PRとしてやっていることも、実は広告なのではないか?」などの議論を展開している方々もいます。
さらに、「マーケティングの中にPRがある」という論述もあれば、「PRの一貫としてマーケティングがある」というものもあります。
1つひとつ明確に言葉で理解しようとするよりも、言葉にとらわれずに「今、自社にとって何をするべきか」を優先して戦略を立て、実行していただくことが本質的。
その効果を見極め、本当に届けたい人たちに正しく理解される届け方をするには、今何をするべきなのか?お金や時間のかけどころは?というのを、「真の目的」に立ち返って事業を成長させることが、PRの基本。
PRという考え方・行動概念は、サステナブルな事業発展に欠かせないのです。
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