生島尚美さんエッセイ / バリ一代ドタバタ記 (生々流転vol.25より転載)
第12回「観光客じゃないお客さまも、観光のお客さまも両方大事!」
バリ島ウブド、ハノマン通りにある現在の『sisi+nanan』店。
「観光客じゃないお客さまも、観光のお客さまも両方大事!」
元々は「観光地で観光客をターゲットにしてるようなビジネスなんてしちゃダメなんだ」なんて負け惜しみで言っていた私は、人通りがたくさんある通りでお店をたまたますることに
なった瞬間に前言をきれいに撤回してしまいました。
開けたその日からふらりと入って来て下さった日本人はもちろん、色々な国のお客さまがお買い物をして下さるなんて あぁ!
とは言え、このお店は1年ちょっとの間しか借りれなかったもので、すぐに何軒か隣のお店がたまたま空いたのをキッカケにしっかり5年借りることにしました。
当時バリ島ではこういういった物件を借りる時、5年借りるなら5年間分の賃貸代を一括で先払いせねばなりませんでした。ちなみに今でもこういうところは多いですが、交渉次第であったり、月単位で払えるところも。更に5年借りたい! と言ってもどんどん高騰する賃貸料金の状況を知っている大家さんが2年しか借さない、という人も増えています。
ただ、実は私がこの新しい物件を借りようと思っていた2003年頃、私は考えていることがありました。1999年に単独でバリ島ウブドに移住し、何も分からないところから、ひたすらがむしゃらに頑張って走り続けて”sisi”を盛り上げようとして、やっと軌道に乗って余裕も出て来た私。
「ウブド」という街に恋い焦がれていき、そして暮らしていて「幸せ」というのはもちろん変わりないけれど、いつの間にかもともと好きだった「商売」がどんどん面白くなり、憧れの地「ウブド」を「ビジネスの場」の思いが追い越してしまっていました。
ここまでやって来れたのだから、どこまで行けるか試してみたい!という野望。そして、その時の「バリ島という小さな観光の島の中の田舎の街のなか」というフラストレーションが私を「日本に一時的な長期帰国」という選択をさせました。
実はわたし自身が、そんな「島の田舎の街」の中で満足し、そしてほんの少しだけ「天狗」になってしまっている状態に気付いた、というのもありました。
ひとりで知らない土地にやって来て、なんのコネもない、経験もないところからここまで来たのだ! なんて。それを気付いた時に情けないやら、格好わるいやら。が、ゆえにもっともっと可能性を広げ、ちょっとは自分で納得出来るところまで”sisi”を持っていきたかったのです。
2004年に帰国し、4-5年間の間に日本でもショップ兼事務所を作る予定にしていました。元々心配性の私は計画的に物事を進めるようにしているので、この2003年には日本への引っ越しをもちろん念頭に入れていました。
その時点で、バリにはお店が2店舗ありましたので、2カ月に一度ほどは出張でバリには戻って来るつもりにしていました。
この新たに開けるお店に関しては、賃貸の時に友人であり、革とシルバーのお店を立ち上げたばかりの友人にお願いし、一緒にお店をすることにしました。私が家賃を払い、その代わりに私が不在の際に日々の商品やスタッフの管理をお願いする、というのものでした。(ハノマン通りで13年間営業した”sisi+nanan"というお店です。)
やはり、開けたその日から来て下さるお客さま! 一緒にお店を出すことにした友人の素敵なセンスで作り上げられた新しいお店は、お金はたくさんかけなかったものの、本当に素敵なものでした。2000年に立ち上げた最初のお店を作った時に「借りている5年が過ぎたら、その翌日に潰れても良いから」と建てたのが嘘のようでした。
あ、ちなみに先日、この1号店の前を通り過ぎたらリノベーションされていました。今年は2017年、結果的になんと17年ももってしまったんですね!