【試し読み】銀の河を漂い彷徨う(第一章全文)
私は普段、あまり自分語りはしない。
ツイッターもブログも更新頻度は稀であるし、自己紹介とか突然言われても何を話せばいいかまったくわからない。
好きなものを訊かれても困る。「好きだ」と言えるほどのめり込む対象が極端に少なく、また新しいものや流行りにもあまり飛びつかないので、古い、それほどメジャーでない作品をいつまでも愛でている。雑学も言ってしまえば狭く浅く。芸能界などに至っては興味をもつことすら放棄している状態だ。
若干秘密主義的というか、独占欲的な部分もあるので、好きなものはどちらかというと布教するより隠したい。「好き」を知られたくない、という厄介な性質持ちなのである。
だけどホントは語りたい。一度語り出す(書き出す)と止まらないほどに、火力強めで爆発するだけの情熱や愛情は持ち合わせている。
が、普段自分語りをしないせいか、好きな事柄についてもどう語っていいものやら皆目見当がつかない。好きなように話せばいいのだが、何かこう、もどかしい。全て語り尽くしたいような、やっぱり秘密にしておきたいような。我ながら面倒なことだと思う。
その点、周りの友人たちは自分語りが上手い。あまり興味のない(失礼;)話題でも、飽きずに聞いていられるのだ。自分の「好き」を語る、その生き生きした輝き。正直羨ましい。
そして勿論、その友人らは聞き上手でもある。なかなか「好き」を曝け出さない私の自分語りも、始まればちゃんと聞いてくれるし共感してくれる。
今さら何を語ったところで、引かれるような付き合いでもないだろう。そこは全面的に信頼しているのだが、それでもやはり、放出しきれず燻っている熱を持て余している。
あと、ヒジョーにアレな言い方をすると、話し下手なため、飲み会などでも大概聞き役に回っているが、極稀に「オレにも語らせろ!」もしくは「いいからしばらく黙って聞け!」な気分になることがある。なるだけでどうせ大して盛り上がらないので、結局おとなしくしているのだが。
もうさ、話せないなら、書けばいいんじゃん?
幸い、時折爆発する感情を書き殴ったような日記もどきはそこここに残っているし、好きなものについて語るのは、機会が無いだけで嫌なわけではないのだし。
というわけで、これをエッセイと呼んでいいのか甚だ疑問ではあるが、とりあえず書き進めてみようと思う。ゆるりとお付き合い願いたい。