第一提案の【疑問について】
第1提案で紹介してもらった3つの異なる設計に関して語られた内容を記したいと思います。設計を提案してもらい、我家族がどのように感じて、何がまだ解らないかを建築家に初めてフィードバックします。光嶋裕介は直ぐに返事を返してくれます。LINEやメールを使って、離れている状態でのやり取り。文章化して伝えることで時間がかかりますが、私としては書くことによって落ち着いて順序良く考えられるし、書きながら新しい発見もあることを感じます。彼の言葉は読み物の様に熱くまとまっているので、それだけで貴重な資料ですね。そして何より、記録として残っているので、こうして時間が経ってから再確認できるのでよかったですね。
光嶋裕介の基本設計図面とツッチーが描いたCGはうちのファイルの中で一年以上何度も開閉していたのでシワシワになってしまいました。)
A案:Holmenkollen/ホルメンコーレン (根津が勝手に命名)
1階面積:55.9㎡ 2階面積:43.6㎡ 延床面積:109.5㎡(33.1坪) デッキ面積:60.8㎡ 建築面積(デッキ含む):116.7㎡
©光嶋裕介建築設計事務所
B案:East Wing (根津が勝手に命名)
1階面積:70.9㎡ 延床面積:70.9㎡(21.5坪) デッキ面積:29.7㎡ 建築面積(デッキ含む):100.6㎡
©光嶋裕介建築設計事務所
C案:ハザ干しの家 (根津が勝手に命名)
1階面積:56.9㎡ 2階面積:30.8㎡ 延床面積:87.7㎡(26.5坪) デッキ面積:14.6㎡ 建築面積(デッキ含む):71.5㎡
©光嶋裕介建築設計事務所
根津修平(緑)から光嶋裕介へLINE. やっと文章として書けた疑問です。
追って裕介からメールが届きました。
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2016/10/3 14:59【疑問について】 光嶋裕介から根津修平へメール
根津さま、こんにちは、光嶋です。
先日は、個展にもお越しいただき、ありがとうございました。
本も買ってもらい、奈奈さんのライブも堪能させてもらいました。
打ち合わせの後、ツッチーも長野での充実した時間を過ごしているようで
何よりです。本当にありがとうございます。
さて、
A案の屋根は、C案のように、屋根(天井)兼壁という意味合いがあります。
しかし、単純に屋根と壁を一体化することでシンボリックな空間を
つくるのではなく、むしろ、傘やテントのように、その屋根が場所によっ て
変形することで、動きのある一体感を家がもつことをイメージしています。
つまり、シンプルではなく、複雑になるのですが、だからこそ、内部空間に
多様なスペース、言葉で呼ぶのは難しいかもしれませんが、特徴的な場所が
家族の居場所となるように育っていってほしい、そんな複雑さを目指しています。
つまり、屋根のめくり方に変化をつけることで、覆われているという感覚を強化したいのです。
B案のウェイングは、鳥の翼のように、真ん中にある家の形、あるいは小屋の形を
した大空間から左右に広がるように、羽根を広げるように空間に動きをつけたかっ たのです。
四角くて、表情のない部屋の連続ではなく、変化に富んだ躍動感のある空間、
それは、本の最終章で書いた「生命力のある建築」を目指しているものかもしれません。
メリット、デメリットと言われると、メリットは、上に書いたようなことで、デメリットは、
やはり、つくるのが難しいために、同じ面積の四角い部屋と比べると高くなってしまうこと。
はい、とにかく、対話を重ねていくデザインが強く、美しいと信じています。
どんどん、気になることは、聞いてください。
それで、もっとも、納得のいくデザインを展開して、第二提案に進みましょう。
時間と しては、今月中になるべくフィードバックをすべてメールしてもらって、
僕がそれを受けて第二提案をまとめていきます。
年内に第二提案ができればいいですね。
(中略)
どうぞ引き続きよろしくお願いします。
光嶋拝
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2016/10/3 23:00 RE:【疑問について】 根津修平から光嶋裕介へのメール
(斜め文字:光嶋裕介の文章を根津が引用)
光嶋さま、 先ほど、写真をアップロードしたGoogleDriveへのアクセス招待メールをだしました。ご確認ください。 第一提案で僕が抱いた疑問についての返答をありがとうございます。 僕は噛み砕くのに時間がかかるみたいで、返信遅くてすみません。
A案の屋根は、C案のように、屋根(天井)兼壁という意味合いがあります。 しかし、単純に屋根と壁を一体化することでシンボリックな空間を つくるのではなく、むしろ、傘やテントのように、その屋根が場所によっ て 変形することで、動きのある一体感を家がもつことをイメージしています。 つまり、シンプルではなく、複雑になるのですが、だからこそ、内部空間に 多様なスペース、言葉で呼ぶのは難しいかもしれませんが、特徴的な場所が 家族の居場所となるように育っていってほしい、そんな複雑さを目指しています。 つまり、屋根のめくり方に変化をつけることで、覆われているという感覚を強化したいのです。
なるほど、屋根壁が作り出す内部の多様な変化を空間として楽しむ、生活に恩恵を頂くということですかね?シュタイナー教育でも室内に子供用の簡易テントを作って子供スペースにするという記事をみたりするけど、こちらの想像力が乏しいせいか、どれほどの特徴的な場所に包まれるか実感が沸かないのが今の正直な気持ちです。テントの屋根でわくわくする!という感覚を覚えたことがないからかな?
B案のウェイングは、鳥の翼のように、真ん中にある家の形、あるいは小屋の形を した大空間から左右に広がるように、羽根を広げるように空間に動きをつけたかっ たのです。 四角くて、表情のない部屋の連続ではなく、変化に富んだ躍動感のある空間、 それは、本の最終章で書いた「生命力のある建築」を目指しているものかもしれません。
変化に富んだ躍動感のある空間とはわくわくする響きですね!そういう家に住みたい。スカッと飛び立つ翼の屋根の下で光と風を気持ちよく感じながら過ごせたらさぞかし気持ちいいことでしょう。 最終章も読みました。なにを生き生きしている空間と捉えるかが自分の(各個人の)身体感覚でし感じ取れないとすると設計段階で判断するのは結構大変な事業だね?!記憶に残ったいい経験は前にも伝えた、信じられいほど良く眠れたAaltoのKoetaloや、声や光の通るアトリエ兼自邸。南仏アンティーブのピカソ美術館は、「ここで過ごしていたら制作意欲が高まるだろうな!」と感じた。海と天候のおかげかもしれない。 経験と悪い経験だけは覚えているね。川崎市中原区にあるマンションの実家は冬場に足が冷えちゃってだめ。その家に入ると冷えちゃう。ほかの人はそうでもないみたいだけど。身体が冷えてしまうような家はまず活力が萎えちゃうよね。やる気がなくなっちゃう。
メリット、デメリットと言われると、メリットは、上に書いたようなことで、デメリットは、 やはり、つくるのが難しいために、同じ面積の四角い部屋と比べると高くなってしまうこと。
コスト面をどうやって上手く解決していくかも話し合って行きたいところです。大枠の玄人にしか出来ない仕事はもちろんのことお願いして、一方、土壁塗りや、土間たたきなど素人でも人が集まることが大事な仕事はボランティアを集められるからコストは抑えられるだろうし、いろんな人が携わることで結果的にワクワクする家になるかとも考えてます。 屋根のデメリット的には「落ち葉対応」もあるかもしれません。森の中だもんで、地域の人が口を揃えて、「屋根に落ちた落ち葉はやっかいやで〜」と。
はい、とにかく、対話を重ねていくデザインが強く、美しいと信じています。 どんどん、気になることは、聞いてください。 それで、もっとも、納得のいくデザインを展開して、第二提案に進みましょう。 時間と しては、今月中になるべくフィードバックをすべてメールしてもらって、 僕がそれを受けて第二提案をまとめていきます。 年内に第二提案ができればいいですね。
対話重視ということで、こちらもバシバシと心を伝えられるようにしてみようと思います。 奈奈の意見もまとめたところ、やはりC案が、あの敷地に合うだろう、拡張性豊か、低コストなのも現実的だろう〜という考えになってきてます。C案をベースにリクエストを箇条書きさえてもらうと、 ・2階の圧迫感が気になる。 ->高さを上げる(でっかくする)アイディアはいかが? ・冬場の温かい空気が生活しない鋭角尖り屋根に上がって降りてこないのはもったいない。 ・第一提案から90度角度を変え、南北に横長にしてはどうか?! ・その場合、採光、東側ビューの為の開口(窓)設置はできるか? ・地元杉材(安値)を屋根壁材としてふんだんに使うことはどうか?(坂茂、八ヶ岳風) ・西側の電車や道路から見て、特徴的で自然とマッチする外観はなにか? ->草を生やす?竹を使う? ・増築する場合は直線に伸ばすだけ?それ以外の可能性は? より、実験的に、機能や素材がゆえに出来る斬新なアイディアが聞きたい!!
(中略) よろしくお願いします。
根津修平
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この様なやり取りが光嶋裕介が言うところの「対話」でしょうかね。私はちょっと誤解していました。作家さんである建築家は自ら描いたスケッチ、線や図面をとやかく意見される事を嫌がるものだと思っていました。もちろん言い方に寄っては嫌な印象を与えてしまうので、こちらも極力気を使った言い回しをする様にフィードバックをしているつもりです。光嶋裕介の求める「対話」はそういうところを超えて、「どう感じたか、ぶっちゃけ言ってなー」という関西人的なストレートな気持ちを求めている。クライアントが投げかけたら、その言葉をしっかり受けて、さらに、直ぐ、新しい線や面を図面に書く仕事に移ります。今回はその工程を初めて経験しました。そしてこれから何度も何度もこういったやり取りを繰り返すのであります、、、。契約後のちょっと落ち着いた現在もやり取り継続中なのです。