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One HR -Innovation by HR-

副業・兼業は、新しい自分と会社の可能性に出会うための選択肢(イベントレポート:9/4イノベーションのための副業・兼業)

2017.10.09 01:17

9月4日に、One HR主催で「イノベーションのための副業・兼業」をテーマにイベントを行いました。副業・兼業はOne HRでも度々議題に上っていますが、「実際うまくいっている人って、どうやって副業・兼業しているの?」「そもそもどんなメリットがあるの?」「企業、個人にとって、ネックになるのはどんなところ?」。そんな悩みを解決すべく、今回は実際に副業・兼業を行っている登壇者の方々をお呼びしました。

第一部では、パネルディスカッションで登壇者の方々に副業・兼業が産む個人と企業のメリットを語っていただき、第二部では、会社や個人としてどんな取り組みができるのか、グループワークで意見を出し合いました。


<第一部:パネルディスカッション>

■テーマ:イノベーションのための副業・兼業

■モデレーター:

  経済産業省 産業人材政策室 室長補佐  藤岡 雅美 氏

 スピーカー:

  文系フリーランス/フリーランス研究家  黒田 悠介 氏

  (株)キャスター取締役COO、(株)働き方ファーム代表  石倉 秀明 氏

  一般社団法人Work Design Lab代表理事/複業家  石川 貴志 氏


<藤岡 雅美氏>

経済産業省入省後、同省ヘルスケア産業課、国立行政法人 日本医療研究開発機構、「健康経営銘柄」「Japan Healthcare Buisiness Contest」等を 立ち上げる。現在は、産業人材政策室に所属し、「働き方改革」や「人づくり革命」、「子育て政策」などを担当。自身も、世界経済フォーラム・グローバル・シェイパーズ・コミュニティのメンバーや、一般社団法人の理事等として、副業をしている。


<黒田 悠介氏>

ベンチャー企業や起業を経て、日本のキャリアの多様性を高めるために自分自身を実験台にしている文系フリーランス/フリーランス研究家。スタートアップから大企業まで年間30社程度、「ディスカッションパートナー」として新規事業立ち上げを支援。フリーランスに関する情報を発信する「文系フリーランスって食べていけるの?」というメディアを運営し、イベントの登壇実績も多数。フリーランス800人の互助組織「FreelanceNow」発起人。


<石川 貴志氏>

リクルートエージェント(現リクルートキャリア)の事業開発部門のマネージャーを経て、現在大手出版流通企業にて新規事業企画部門にて勤務。本業の傍ら、2013年にWork Design Labを設立し「働き方をリデザインする」をテー マに対話の場づくりや、イントレプレナーコミュニティの運営、企業や行政等と連携したプロジェクトを推進する。現在は、(公財)ひろしま産業振興機構の創業サポー ターや(独)中小機構が運営する TIP*S アンバサダーも務める。三児の父。


<石倉 秀明氏>

株式会社リクルート HR マーケティングにて営業、事業企画などを経験し、当時5名の株式会社リブセンスにて、主力事業であるジョブセンスの事業責任者として入社から2年半で東証マザーズ上場に貢献。その後、DeNAのEC 事業本部で営業責任者、新規事業、採用責任者を歴任。2016年より株式会社キャスター取締役 COOに就任。2016年3月、株式会社働き方ファームを設立し、現在は2社の経営に携わる。自身の人事としての経験や、社員170人全員がリモートワークを行うキャスターでの経験を活かし、企業の採用支援も行う。

副業・兼業者が社内にない視点を持ってくる

・藤岡 雅美氏(以下、藤岡):今、政府としても「兼業・副業」に着目していますが、その背景を最初にお話します。戦後は、人をどれだけの量集められるかで企業の競争力が決まっていましたが、集団雇用の時代からロボットやITツールが出てきて、資本を持つ企業が勝つ時代になってきました。

しかし、第四次産業革命を経て、今はマイナス金利ですし、企業も資本はどうにかすれば集められるようになってきました。今、企業の生き残るポイントは、兼業・副業を含めて「良質な人をどれだけ集められるか」です。だからこそ政府もしっかりと推進していかなければならないと感じています。

では早速ですが、パネルディスカッションに入っていきたいと思います。黒田さんは、企業側がアウトソースした業務を受けることが多いと思うのですが、企業としてはどういうメリットを感じて依頼することが多いんですか?


・黒田 悠介氏(以下、黒田):ありふれた話ではありますが、社内にはなかった視点を取り入れられることだと思います。

企業は自分たちのやり方が常識だと思いがちですが、「この業界や企業はこんなやり方しているよ」という色々な業界や企業を経験したからこそ分かるやり方を取り入れられることですかね。


・藤岡:最初は企業もごちゃっとした状態で相談してくることも多いのではないですか?


・黒田:そうですね。家電会社をIoTの会社にしたいとか、M&Aした会社を10年後にこれくらいにしたいんだけど・・・とか、ざっくりした話も多いですが、全然定まっていないところから課題を整理していくところをやっています。


副業者がいると、社外リソースを社内リソースにできる

・藤岡:なるほど。石川さんは企業に所属するなかで、企業側に副業を認めて貰うときに、企業側のメリットなどをどのように説明したのですか?


・石川 貴志氏(以下、石川):そうですね、僕は新規事業に携わっているので、社外のリソースを自社のリソースとして使えるという点ですごくメリットがあると思います。

メンバーが社外とつながっていると、すぐに社外リソースにアクセスできるという点において企業側にメリットがあると思っています。

また異なる組織文化や価値観を持つ社外の方と議論することで社員の学びにもつながると思います。実は数年前に、新規事業とか組織開発の文脈で、「週3くらいで働けないか」と人事に相談してみましたが、その時は早すぎたのか全く理解されませんでした(笑)。

あとから分かったのですが、制度を先に整えるのは色々と課題が多そうだなと。だから会社としてではなく、個人で動き始めたんですよね。

活動から2〜3年くらい経った頃に、逆に今度は人事から連絡があり、そこで初めて対話が始まりました。すでに社外との繋がりの中から人を紹介したり、それがたまたま案件になっているものもあって、「ルール的には問題があるが、だめじゃない」と。そこで一旦、会社とは切り離す形で社外の活動するということになりました。


時間、場所の制約を取っ払うだけで、採用が圧倒的に楽になった

・藤岡:今お聞きしていて、イノベーション系のシナジーが大きいように思うのですが、経営者サイドから言うと、やっぱりイノベーションがキーワードなんでしょうか?


・石倉 秀明氏(以下、石倉):世の中的に言うと、そういう活動が多いですよね。ただ、キャスター社の考え方で言うと、企業側のメリットは圧倒的に採用だと思います。

今って、週5フルタイムで、決まった時間、決まった場所でしか働けない、という働き方は減っているんですよね。優秀な人ほど減っている。そういった制約をひとつ取っ払うだけで、採用がめちゃくちゃ楽になるんです。

キャスターは、オンラインアシスタントというサービスをやっていて、簡単に言うとまずアシスタントを正社員として雇用する。その社員の時間を小さいロットに分けて企業に販売しているので、事業として採用し続けないといけないんですよね。アシスタントの倍率が、100倍くらいで結構厳しいんですが、10万円くらいの求人広告を出して毎月600人くらい応募が来るんですよ。このご時世、そんな会社あんまりないじゃないですか。「どこで働いてもいいよ」としただけなんですよ。

人の調達コストが一気に下がるので、採用がいちばんメリットとして大きいんじゃないかなと思います。



兼務することで時間をほどくことができ、「自分の時間」を使えるようになった

・藤岡:敢えてネガティブな話をすると「コミットメントが少なくなる」というのはないのでしょうか?


・石倉:これは企業側の問題だと思います。企業側が「この社員は副業だから」と遠慮してたら暇になり、コミットメントが少なくなる。

実は、オンライン勤務にすると、2倍くらいにタスクが増えても大体処理できるんです。だから企業としては、副業や兼業をしている社員にも遠慮しないで、きちんと仕事を与えるというスタンスが大事だと思いますね。


・石川:僕は社外活動を始める前、昼夜構わず働いていて、すごく忙しかったんですよね。外の仕事ができるようになったのは、自分の働く時間を少しほどくことができたからなんです。

そのために会社員であれば「部署を兼務する」というのはおススメです。今3つくらい兼務をしてるんですが、兼務をするとそれぞれの成果は求められますが、自分の時間を自由に使えるようになりました。使い方が固定されている時間をほどかないと新しい働き方は無理だなあと思っています。


・藤岡:黒田さんにお聞きしたかったのですが、文系フリーランスのお仕事というのは、イノベーション関係なんでしょうか?それとも業務の効率化というところなんですか?


・黒田:2つありますね。タスクを細かくして、下請け的な感じでタスクを受ける。効率化ですね。そうすると、どんどん安くなっていくんですけど、もうひとつはプロジェクト型。プロジェクトの仲間として一緒に入ってきてよ、という話もあります。

なので、タスクにするか、プロジェクトにするか、会社の文化によっても変わってくると思います。僕の場合はプロジェクト型がほとんどですね。コンサルティングをしながら新規事業の立ち上げをサポートしています。


兼業することで、複数の報酬を手にする「仕事の選択肢」が増える

・黒田:フリーランスって金銭的な報酬にフォーカスされがちなんですが、報酬といっても複数あると思うんです。金銭的な報酬、喜び、貢献、自己理解、信頼…。皆さん自身が重視されている報酬を最適化できることがいいなあと思います。

こっちの仕事ではお金を稼いで、こっちの仕事では他の人に貢献をして、こっちの仕事では自分の技術を磨いて…というようにポートフォリオを組んで働けるのは副業・兼業の良いところだと思いますね。


・藤岡:仕事を選べるようになると色々できますけど、やはり最初は苦労されたのでは?


・黒田:そうですね。最初は2つ3つくらいしか回せなかったんですけど、こっちの仕事で学んだことはこっちに活きるなとか、自分を多面的に見られるようになりました。横展開がしやすくなりましたね。


・藤岡:イメージとしては、自分の専門スキルが更に磨かれてエッジが立っていくのか、専門スキルが意外と応用可能性があるよねとポータル化できていくのか、どちらなんでしょう?


・黒田:スキルによって違いますが、どちらもあると思います。エンジニアとかクリエイティブな仕事はスキルが磨かれて専門性を高めていきますし、文系の仕事は横に広がって越境人材になっていくのが良いと思います。ポジションによって変わってくるのではないですかね。


副業のメリットは「内なる声」に気づけること

・藤岡:石川さんはいかがでしょうか?ご人脈を活用されたり、業務効率化をしたりと、会社員としては副業のメリットを見せていくために、大変なことも多いように思うのですが。


・石川:そうですね、副業とか兼業って、会社員にとってはやらないほうが良いことも多いと思います。プロジェクトによっては、何でこれやっているんだろうと思うこともあります。でもそうすると、自分はこれが好きなんだなと気付くんですよね。内なる声が聞こえ始めるというか。だから、メリットというところでいうと、スキルも大きいと思うんですが、やりたいことや好きなことに気付くというのがメリットだと思います。

あとは、「実践する」というのが大事。自分自身でやってみることで、言っていることに説得力が増して、クライアントに対して価値も発揮できるというのが良いところだと思います。


・藤岡さん:僕もそう思いますね。あと面白いのは、一旦できた人脈は、その後使いやすい。

人脈を作っているときは開拓コストがかかるんですが、今こういうことやっていると発信すると、「友達がこんなことやってるよ」と紹介してもらえたり、情報が集まるようになりますよね。

石倉さんとしては、個人側のメリットはどうお考えですか?


・石倉さん:選択肢が広がることですね。例えば、ひとつの仕事で600万円で、家族がいて年収が下げられません、と。でも、やりたい仕事は400万円しか出ません。こういうことってよくあるんですよね。ただ、300万円と300万円でふたつ仕事をしている人が、ひとつ転職したいというときは意外と動きやすいんです。

僕は採用の仕事をしていて、大手の人がベンチャーに転職したいけど年収が下がるからどうしよう、と相談されることが多いんです。よく世の中的に、年収を上げるのが良い転職と言われがちですが、僕はそれは間違いだと思っていて、年収は上げすぎると選択肢が極端に減るんですよね。だから、働く側のメリットとしては、選択肢の圧倒的な多さだと思います。


・藤岡:会社の寿命って、23〜24年。人の人生よりずっと短いんですよね。終身雇用でずっと会社で面倒見てくれるかというとそうではないですよね。だから、個人の人生設計という視点でも考える必要がありますね。


<第二部:グループワーク>

■テーマ:副業・兼業を実現できる世界を創るには

グループワークでは、登壇者も含めて5〜6人×5つのグループに分かれ、以下の内容について意見を出し合いました。


①企業側の目線で:副業・兼業において今どんなボトルネックがあるか

②個人側の目線で:副業・兼業において今どんなボトルネックがあるか

③企業側の目線で:はじめの一歩の踏み出し方

④個人側の目線で:はじめの一歩の踏み出し方

最後にグループごとに代表者が発表しましたが、経験談や知識から、


①企業側の目線で:副業・兼業において今どんなボトルネックがあるか

・制度上はOKだが申請が必要。

・利害関係のある企業での副業がNG。だが、どの企業が利害関係者だか分かりづらい。

・マネジメント管理層が、働き方や成果に対して責任を追いきれるのか不安がある。

・コミュニケーション上のハードルがある。パソコンがあると制限されるなど。

・仕事の振り分け方、切り出し方が副業に対応できていない。

・アウトプットをきちんと出せるのか。

・兼業をしている人の人事的な処理が面倒。


②個人側の目線で:副業・兼業において今どんなボトルネックがあるか

・副業をしようと思っても、受け入れ先がない。

・何をしたら良いか分からない。

・同僚など、周囲の目線が心配。

・(副業・リモートワークなどで)会社からの「信頼性」をどのように担保するか。


③企業側の目線で:はじめの一歩の踏み出し方

・いきなり制度を変えるのは難しいので、条件をつけるなど、最初から完璧な制度を求めず「ゆるやかに」始める。

・企業同士がパートナーシップを組んで、こっちの企業で週○日、こっちの企業で週○日、というように週2〜3日くらいで業務を分担する。

・責任の管理など、労務管理が難しいのであれば、企業同士がパートナーシップを組む。

・人事とか経営層が自らやってみるなど、事例・実績を作る。

・会社のパソコンを使わなくても仕事ができるようにする。

・アウトプットをはかりやすくする。

・人材育成の観点で、外に出して経験させる。若手に経験させることを制度化する。

・属人的でなく、企業がプロジェクトベースで仕事をまわすようにする。


④個人側の目線で:はじめの一歩の踏み出し方

・空いている個人の時間をどこかのコミュニティに入ってみるなどの自己投資をする。

・「就業」をどう捉えるか、考える機会を作る。

・助走期間として、1時間あたりの仕事や、単価の小さい仕事から始める。

・やりたいことを周囲に話し続けてみる。


<分科会を終えて>

パネルディスカッションの熱量そのままに、ワークショップも大変な盛り上がりを見せました。それだけ、人事の方や個人の方双方が「副業・兼業が良いのはなんとなく分かっていながらも、企業・個人両方のハードルがあり踏み出せていない」というモヤモヤ感があるように感じました。

私としては、これからは企業も個人も、いかに日常の仕事や生活の中にゆらぎを創るかが重要になってくると思っています。通常とは違う出逢いや会話、知見に触れることで、石川さんのおっしゃるような「内なる声」が聞こえてきたり、企業にとってはそれまでにない発想が取り込まれるのだと感じています。

「ゆらぎを創る」という曖昧なものを実践するというのは、成果が見えない反面、肩に力を入れずに取り組めてなんだか楽しそう。そんなふとしたワクワク感と一歩の積み重ねが、いつか副業・兼業に繋がり、新たな報酬や喜びにつながっていくのだと信じています。(One HR共同代表 島崎)