「旅の絵本 X」安野光雅
私は見聞をひろめるためではなく
迷うために旅へ出たのでした
そう書く安野さんと、いつまでも、何度でも、本を通して旅をすることができる、安野光雅さんの名作『旅の絵本』シリーズの完結編『旅の絵本 X』が発売になりました。
完結編はオランダ。原画は、安野さんの逝去後にアトリエから見つかったものです。
安野さんが残されたものを手がかりに、生前の安野さんが目指していた形に近づけるように編集し、1冊の本となったとのこと。
安野光雅さんが亡くなってから、もう1年経つのですね。
人は生まれた時に一枚の絵を持っていて…、と最近は、そんな事を考えているのですけれど。生きているうちに、その絵が増えたり減ったり、色が変わったり。
本を読むことは、その絵を豊かにすることです。
安野さんの本を読むといつも思うのは、本当に、豊かな本だな、という事でした。
本に教えられ、そして楽しませてくれる。教育的な側面と、芸術的な側面がどの本でも見事に高いレベルで融和しています。
自分は、こどもが生まれる前には絵本の「教育的な側面」というものをあまり重要視していなかったのですが、こどもが生まれ、一緒に絵本を読む様になってからは大分考えが変わりました。
こどもに何を与えたいのか、教えたいのか。
この世界の良き部分を、どのように伝え、理解してもらえば良いのか。
そもそも歴史的にも、絵本と教育とは切っても切れないものですよね。『世界図絵』(1658年)しかり、『もじゃもじゃペーター』(1845年)しかり。
まだ1年で言うには早すぎますけれど、今でも変わらずに安野さんの本は読まれ続けていますし、これからもずっと、読まれていくはずだと思うのは、絵本が本来的に持つそうした重要な部分を、その作品の中に明確に刻んでいるからなのだと思います。
この「旅の絵本」シリーズもそうでした。
「読むことは旅をすること」と書いたのは長田弘さんでしたが、「旅の絵本」は読むものの目を開かせ、現実と地続きの空想の旅へと誘い出してくれます。
絵の中の異国で迷い、わたしはその絵の中に描かれたひとりになってしまう…。
ここではない何処かへの憧れは、他者への理解とも繋がるはずです。
異国の絵を自分の中に持っていれば、その地への親しみも、きっと違うはずですよね。
まだまだ自分の子どもたちと読めていない安野さんの本、これから長い時間を掛けて、一緒に、たくさん読むのが、楽しみです。
『旅の絵本 X』は当店店頭でも、オンラインストアからでもご注文出来ます。ぜひ御覧ください。
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