Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

近代とキリスト教4-アルスの司祭ヴィアネー

2022.01.15 11:26

1815年「アルスの司祭」として尊敬されることになるヴィアネー神父は司祭に叙階された。彼は平民の生まれで、ラテン語もろくに読めなかったが、革命のあと聖職者不足だったのだ。その3年後、32歳になったヴィアネーは、リヨンの北の田舎アルスに赴任した。ここも革命の影響で荒れ果てていた。

赴任したとき「ここに入りきらぬほどの人がやってくる」と彼の心に啓示があったという。彼は聖フランチェスコのように教会を修繕し、余分な家具は皆貧者に与え、自分は粗末な身なりでマットレスに寝た。司祭はエライ人だと思っていた村人はびっくりだった。やがて思い出した人がミサにやってくる。

そして彼の超能力が開花した。コミュニケーション能力がすごいのだ。人の心を読み、適切なアドバイスをする。夫が自殺したことで悩んでいた夫人は、言う前から「安心しなさい、自殺した夫は救われましたよ」と言われた。地方一帯に噂が広がり、司祭は一日に10時間も告解をきくようになったという。

面白いことに司祭はいつも悪魔の誘惑を受けていて、何回も司祭を辞めてひきこもるよう言われていた。しかし出発しようとすると村人に泣いて止められた。ナポレオン3世からレジオン・ドヌールを受け、1859年73歳で帰天した。最後の言葉は「来世がなくったって私は十分幸せだった」。1924年に彼は列聖された。