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7th heaven side B

から紅の恋歌「揺れる季節に、巡る想いを2」

2017.09.30 14:45

揺れる季節に、巡る想いを2


オカンの退院後、オレは変わらず忙しく飛び

回っていた

不思議なくらい、全く依頼が途切れへんのや


おまけに、その行く先々に、何故か紅葉が現

れた


剣道の練習試合にも、紅葉は現れるようにな

って、オレがうっかり、紅葉と呼んでしまい

アイツがオレを下の名前で呼んだものやから

学校で、どえらい大騒ぎになったんや


オレの浮気や、とか

オレの彼女や、とか


紅葉も、自分は婚約者やと言うたもんやから

事態は最悪の方向に向かって転がり始めた


和葉に告白するやつらも、一気に増えたんや

もう、虫除けなんオレには一切出来んかった

オマエに、そんな権利は無いと一蹴されてな


和葉は何をどんなに言われても、じっとしと

ったし、ひたすら耐えていた

それは、オレでもわかってた


晃にも、翠にも、ええ加減にしろ、言われた

けど、オレには和葉に弁明する時間も無い


怪しいと思うても、事件やと言われると万が

一と言う事もあり、駆け付けないワケにも行

かず

予想通り、事件後になるとさり気なく現れる

紅葉にあれこれ誘われるけど、断るオレも、

さすがに、何かがおかしい、と思い始めた


大体あの秋の事件以降、全く途切れない依頼

が、そもそもおかしいねん

それに、不自然や無い絶妙なタイミングで現

れる紅葉と執事も絶対におかしい


もしかして、と思うた

依頼人にオレを紹介しとんのや無いかって


オレのスケジュール、把握しとるみたいやし

不思議と、試験や試合の時は依頼が無い


依頼人は口止めされとるらしく、のらりくら

りしたけれど、オレがカマをかけたら簡単に

ひっかかった


オレは単身、事件終わりに珍しく姿を見せへ

んかった紅葉を訪ねた


それも、数日置いて


姿を見せへんかった理由が、かるたの大会が

近いからやろ、と推測出来たからや

オレのせいで集中力欠いたと言われるのも嫌

やったんで、大会が終わったのを確認してか

ら、オレは京都の紅葉を訪ねたんや


「旦那さんの仕事、手伝うのは当たり前や

無いですか?」

それの、どこがダメなんです?

むしろ、和葉ちゃんはそんな事もせえへんの

ですか?


当然、と言わんばかりに、無邪気にそう言う

紅葉に、オレはイラっとした気持ちを隠せへ

んかった


「オマエがしたんは、手伝いやない

オレの事、侮辱して、邪魔しただけや💢」


探偵は、オレが信念を持ってやってる事や

全部、自分でやるから、ええんや

他人に、お膳立てされてやっても、ちっとも

面白くないし、バカにされとるとしか、思え

へんわ💢


「そんなんされて、喜ぶとでも思うたんか?

オレん事、よう知らんクセに、勝手な真似、

すんなや!」


二度と余計な真似はしてくれるな、と言うて

オレは屋敷を後にした

執事が追いかけて来て、全ては自分の一存で

やった事で、お嬢様には関係が無いと言うた

けど、オレは一切、謝罪を受け付けんかった


「大阪にも、オレの学校にも、和葉の前にも

現れるな」


そう言い捨ててバイクを飛ばして帰阪したオ

レは、真っ先に和葉に逢いに行った


口惜しかったんや

めっちゃ、めっちゃくちゃ、口惜しかった


オレなりに一生懸命、事件に向き合うてた

んや、自分の時間、全部削って


和葉に、ちゃんと詫びに連れて行かな、と

か言う気持ちも、何もかも、全部置いて

全身全霊で事件と向き合うたんに


ある事無い事、言いたい放題言われた和葉や

って、静かな学校生活、めっちゃくちゃにさ

れたんや


そうやって色んな事、犠牲にして、対峙した

事件やったのに


遠山家に居ると言う和葉を訪ねた


「平次?どないしたん?」


今日はお父ちゃん帰らん、言うたから、これ

からアンタん家、行くとこやったんよ?

そう言うて柔らかな笑みを浮かべた和葉は紙

みたいに真っ白やった


悪いけど、ちょっとだけ、こうしとって、と

和葉に縋りついたのは、座り込んだリビング

の床の上

脚の間に和葉を抱えて、その肩口に頭を預け

たオレは、

途切れなかった依頼の謎をぶちまけて、その

口惜しかった気持ちをぶちまけた


腕の中におさまってた和葉が、オレの身体に

そっと腕を回す

いつも、バイクに乗る時とは反対の拘束


でもな、平次

アンタがした事は、全然ムダや無いよ?と言

う和葉の声がした


「事件自体は全部、嘘や無かったんやろ?

せやから、ムダなんかとちゃうよ

助かった人やって、おるよ、ちゃんと」


アンタは、間違うてなんか無い

だから、大丈夫や

お疲れさん、平次

ちょっとは、休めたらええね


そう言うた和葉を、深く抱え込んだ

ホンマに、おおきに、と思いながら


抱き締めた和葉の身体が温いと言うか、少し

温過ぎやと思うた

するり、と身体に回された腕が落ちた時には

もう、和葉はぐったりしとって

オレは起こさんようにして、静に和葉を背負

って、遠山家の戸締りをしてから、自宅へと

和葉を連れて帰った


オカンと2人、客間に寝かせた和葉を交代で

看病した


「ずっと気を張ってて、疲れてしもうたん

やろねぇ」


オカンはそう言うて、可哀そうや、と言う


かるたの稽古やら、合気道やら家事やらで痛

めてしもうてる和葉の手を、オカンと左右か

ら手当しながら、依頼の件と和葉に言われた

事を話した


「実際に、困っていた人がいたんやから、

その人達は助かったんやからええやん、か」


そらまた和葉ちゃんらしい応えやなぁ

私やったら、平蔵さんぶん殴ってるかもしれ

へんわ

アンタ、どこ見て仕事してんねんって


そう言うて、和葉を見てそっと笑うオカン

小さい頃から可愛ええ、ええ子やったけど、

まっすぐ大きくなりましたなぁ、と笑う


「もうすぐクリスマスやって言うのに、こ

ない風邪ひいてもうて」

ちゃんと治さなご馳走も食べられへんやない

の、と言うて、オカンは台所へと向かった


せやなぁ、後少しで年内最終登校日やし、

確かに、クリスマスも近い

イベント好きの和葉が、一番浮かれる季節や

と言うのに、今年はそう言えば静かやったな

と思うオレ


病みあがりの和葉と迎えるであろうクリス

マスを、どうしようかと悩むオレの元に、

紅葉から連絡が入った


詫びがしたい、どうしても、逢いたい、と

こんこんと眠り続ける和葉の寝顔を眺めなが

ら、オレは考えた


眠る和葉の小さな手を握り、オレは覚悟を決

めて、ある人に電話をした


快く承諾してくれた人に、いくつか無理なお

願いをして、電話を終えると、紅葉に、これ

が最後や、と約束するなら、一度だけ会うと

返信した


工藤には、騒動がもうバレてて、姉ちゃんも

めっちゃ怒ってるし、オレも怒ってると言わ

れ、一連の問題が解決するまでは、もう連絡

もしてくれるな、とされとるんや


温厚な晃でさえも、このままやったらもうア

カンかも、と言うてて

親友も何もかも失う一歩手前やねん、オレ


でも、何もかも失うても、これだけは絶対に

手放したくない


眠る和葉の額にキスをして、布団をしっかり

引き上げてやって、部屋を出た


紅葉が指定したのは、超高級ホテルの一室


でもオレはそれを拒否して、執事の同伴も拒

否した


待ち合わせ場所に高級車で現れた紅葉は、え

らい気合いの入った格好

街はもう、クリスマス一色やった


オレは、腕を組もうとする紅葉を制した

照れる事ないのに、と優雅に笑う顔に、チク

リと胸が痛んだけど


普段、和葉と一緒に行く店に、連れて行った

飾らない、気取らない店ばかりで、どこへ行

っても、今日は和葉ちゃん一緒や無いんか?

残念や、と言われた 


「すまんな、アイツ風邪拗らせて寝てんねん

元気になったら、また一緒に寄らせてもらう

わ」


そう言うオレに、和葉ちゃんに持って行きと

か何とか、色々渡す店主達

紅葉には、ひとつひとつの店での和葉との思

い出を話した


「平次くん、私はそれくらいの事や諦めたり

はせえへんよ」


そう言うて笑う紅葉に言うた

オレには、オレの気持ちがある、と


たとえ、幼なじみの恋愛ゴッコ、言われたと

しても、絶対に譲れん想いがある、と


自分やったら、オレの将来の役にも立てるし、

苦労もさせへん、と言う紅葉

オレは、オマエのその考え方の方がよっぽど

恋愛ゴッコに見えるで?と返した


「将来の役にって、オレの仕事にオマエの家

の力で人事に口出しするんか?

苦労もさせへんって、じゃぶじゃぶ金をくれ

る言うんか?」


そんなん、オレにオマエのヒモになれ、言う

てんのと同じやで?

次、恋愛する時は、絶対口にせえへん方がえ

えで


自分の夢は、自分で掴む

自分の金は、自分で稼ぐし

約束された成功なんてオレは一切興味無い


「オレは、オマエが思うような男やない」


それにきっと、オマエにはオマエに似合うよ

うなオトコがきっと居る

・・・ええオンナやしな


「え?」

「自分の得意分野で喧嘩ふっかけたんはいた

だけないけど、勝負に一切手を抜かんかった

やろ?」


あぁ、と言う顔をした紅葉


「もし、和葉ちゃんと私、立場が逆やったら

良かったのに」

「そら無いな」


「それでも、答えは一緒なん?」

「あぁ、変わらん

人間の本質は育った環境なんかでそうそう変

わるもんや無いと思う」


どんな形であれ、和葉は、和葉や

真っ直ぐで、頑固で、意地っ張りで

世話焼きでウルサイオンナやと思うで?

多分、な


でも、どんな時でも絶対に卑怯な真似はせえ

へん

たとえそれが自分にどれだけ不利な状況やっ

たとしても、な


「うらやましいな、和葉ちゃん

そこまで想われとって」

「でも、まだ何も言うてへんから、アイツは

何も知らんで?」


大体オレ、あの勝負にかかってたもうひとつ

のモノ、知らんかったし


「え?和葉ちゃん、言わんかったん?」


勝手な真似されたら困る

オレが自分で言うために、あれこれ準備しと

ったんや

和葉に先に言われてしもうたら元も子も無い


またいずれ、と言うた紅葉に、2人っきりで

会うのはこれが最後や、と告げて、オレは別

れた


「ただいまー」


帰宅して、オカンに仰山もろうた店主達か

らの和葉への見舞いを渡して、オレは風呂

に入った


「和葉は?」

「ん、漸く熱が下がったんやけどなぁ」


オカンはクスクス笑っていた

??


「あ、お帰りなさい、平次」


ぶっ、と、思わず吹き出した


マスクを2重につけられた和葉は、もの凄い

ハスキーボイスやねん

オマエは一体、誰やっちゅーくらいにな


大口開けて、ぶたまんに齧りつく元気はある

ようで、もぐもぐしとったけど、さすがに全

部は無理やと言うて、オレとオカンも参戦し

て、食べた


「美味しいなぁ」


嬉しそうに笑う顔は、まだ真っ白やけど、少

しずつ元気になってる様子に安堵して、その

変なハスキーボイスに笑いを堪えるのが大変

やった


やっぱり、和葉は、和葉や


翌日、オレが無理を言うてた人から、完成し

たと連絡が入ったので、オレはそれを受け取

りに行った


残念ながら、クリスマスに外出は無理そうな

様子の和葉


外出は断念する、言う事は、結局、あれだけ

場所捜してて、家か、と思うオレ


でも仕方無い、漸く治りかけてんのやし、こ

のまま、年末年始も寝込まれたらそれこそ、

どこにも行けんようになってまうからなぁ


オカンも、今年は和葉は外出は無理やと言う

まだ、熱が下がり切ったとも言えんし、あの

声やし、と


どないしようかな、と思うオレに、オカンが

ニヤリと笑った


アンタがちゃんとケジメをつける言うなら、

オカアハン、協力してやってもええで?と


仕方が無い、和葉を連れ出せへん以上、この

人の協力が無かったら上手い事いかへん


オレは、用意した「証拠」をオカンに見せた


「アンタにしては、上出来やと思うで?」


結構なお値段したやろ、と笑うオカンに、そ

うでもない、とカラクリを教えた

以前、事件絡みで知り合うた人に頼んだんや

と言うと、なるほどね、と苦笑した


「ほな、よろしゅう」

「わかりました」


居間のソファで眠り込んでいる和葉を見て、

ふっと頬が緩む


オレの気持ちなん、全く気が付いてへんから

めっちゃびびるやろな、和葉のやつ


相変わらず微熱がおさまらず、変な声も治ら

ん和葉は、身体はキツそうやけど、少しずつ

だが元気になって来た


「揺れる季節に、巡る想いを3」へ

to be continued