から紅の恋歌 「恋歌 上の句 -1」
恋歌 上の句 1
1:和葉ちゃんは名探偵?
「あれ、平次兄ちゃんは?」
「服部くんは?」
約束の場に到着するなり、蘭ちゃんとコナン
くんは、揃ってそう言うた
「平次?さぁ、どこで遊んでんのやろね」
まぁきっと、エライスタイルのええお姉様達
に、ちやほやされて、鼻の下でも伸ばしてん
のとちゃう?
そう言ってにっこり笑った私に、何故か2人
は飛び退いて、くっついて怯えている
おかしいな、角は隠したはずやねんけど
隠しきれてへんかったんやろか??
一緒に大阪は…出て来たな
新幹線は、…隣に座ってたな
いつものごとく、眠っていた私は、目覚めた
ら、何故かひとりやった
平次は、少し離れた席のお姉様方に取り囲ま
れて、ハーレム状態やってん
隣に居たのは誰かと尋ねられていて、迷う事
なく、「ただの、幼なじみや」と言うて、へ
らへら笑う平次の後に立った私
「せや、単なる顔見知りやなあ?平次💢」
ひっ、と言う声の後、動揺しまくりの平次が
振り返った
「私、ちゃらいオトコ大っ嫌いやねん!💢
アンタらに、のし付けてあげるわ、コレ」
私に掛けられていた平次の上着と帽子を平次
に投げつけて、人混みを平次から逃げ切って
待ち合わせ場所に来た
「だ、大丈夫なの?平次兄ちゃん」
「コナンくんは優しいなぁ💕でもな、平次
は大丈夫や」
平次が要らん事考えても、相手は単なる暇潰
しやから
「どうして?」
コナンくんを抱っこした蘭ちゃんが尋ねた
「あの子ら、せやな、半分以上は彼氏持ちや
もん」
どうしてわかったの?と言うコナンくんに教
えてあげた
右手を広げて薬指を指差した
「みんなここに、指輪しとったからな
殆どが、おそらく、カップルリングや」
みんなバラバラのメーカーの、バラバラのデ
ザインやったから、友達同士で、とかや無い
と教えてあげた
「それだけで?」
「まだあるで」
左手に指輪しとった子も居ったし、持ってる
荷物、最近カップルで持つのが流行ってるバ
ックやった子も居たからな
「でも、決定的なんはな」
こっそり教えてあげた
平次を、本気で好きな子は、決してグループ
で居る時には声、かけへんの、と
「「そうなの??」」
それは、本当
単純に、お知り合いになりたいとか、話して
みたい、とか、話題の人と仲良しな振りをし
たい、とか言う子は、グループで平次に近づ
くんや
それはもう、学校で散々な目に遭ったから、
私も承知してんねん
あのお姉さま方は、その口だろう
隣の私が寝入っていたので、暇そうな平次に
声を掛けたんやろな
で、平次はホイホイと、その誘いに乗った
(平次ホイホイは簡単やな
グラマーなお姉ちゃんと工藤くんを置いてお
けば一発や)
「和葉姉ちゃん、凄いね!平次兄ちゃんより
も探偵っぽいよ!」
キラキラした目で見んといてやコナンくん
きゅん💕としてしまうやないの
ゴメンな、蘭ちゃん
「さ、平次なん放っておいて、遊び行こ」
せっかくの時間、もったいない、と言うと、
いいの?と言う蘭ちゃん
「ええの、ええの」
本気出せば、探せるやろ
捜す気も無いから、ここに来えへんのや
今日、どこ行く約束かも、待ち合わせ場所や
って、平次は全部、知ってんのやから
平次が本気出せば、もうとっくに追いついて
るし、連絡もあるはずの時間はとうに過ぎて
るしな
「な?何も無いやろ?」
着信すらない私の携帯を2人に見せた
困ったような顔で見つめ合う2人は、めっち
ゃ可愛ええ💕
「蘭ちゃんとコナンくん、めっちゃお似合い
やなぁ💕」
可愛ええ💕と言うと、何故か2人共真っ赤に
なった
おかしな事、言うたやろか、私
「まぁ、ええから、楽しんで来ようや!」
私は2人を急かして喫茶店を出る前に、私は
携帯の電源をOFFにした
予定通り、楽しみにしとった探偵映画をみん
なで見に行った
「うわぁ、予約しとって良かったなぁ!めっ
ちゃ混んでるやん」
「本当だね」
僕、今日見に来るの、楽しみにしてたんだと
言うコナンくんを、蘭ちゃんと両側から手を
繋いで歩いた
蘭ちゃんの小さな騎士さん
その正体、私は知ってるけど、知らん振り
それが、一番ええやろと思うてな
探偵もののアニメは、国民的人気で、今回は
特にラブコメとミステリーに特化したとあっ
て、私はとても楽しみにしとったんや
(・・・平次のどあほ💢)
平次との外出も久しぶりで、めっちゃ嬉しか
ったんよ?
誘ってくれたのも、嬉しかったし
昨日は、服やバッグを選びながら、めっちゃ
楽しみにしてたんやもん、私なりに
それやのに
私の隣は、映画が終わるまで、ずっと空席の
ままやった
(一緒に、見たかったな)
明るくなった館内、出入り口に向かう途中で、
私は信じられない光景を目にした
紅葉ちゃんと、平次や
その姿は、まるで恋人同士のようやったし、
2人共、楽しそうにおしゃべりしてた
紅葉ちゃんは、しっかり平次の腕にしがみつ
いてたし平次はそれを嫌がり払う様子も無い
もちろん立ち止まった私のせいで、コナンく
んと蘭ちゃんにもバレてしもうた
どう言うつもりか、映画館の出口で、2人は
誰かを待ってる様子やった
「おぉ、ここや、ここ!」
悪びれもせず、平次は私達に片手を上げて笑
顔を見せたし
紅葉ちゃんは、しっかり平次の腕を掴んで寄
り添って立っていた
カレカノが、友人グループを見つけて声をか
けるのは、こんな感じなんやろか?なんて、
私はぼんやり遠くでそう思うてた
蘭ちゃんの手が、自然とグーになったのに気
がついて、私は慌てて手で制した
(大丈夫や、蘭ちゃん)
コナンくんからも、不穏な空気を察したので、
私は慌ててコナンくんの手を強く握り目で伝
えた
(ええから、黙ってて、な?)
でも、と言う顔をしたコナンくんにも、大丈
夫やから、と笑いかけた
「何してんねん、次、行かな、時間、足らん
やろ?」
平次がどんどんと近づいて来る
紅葉ちゃんは、しっかり腕を絡ませたままつ
いて来た
近づきながら、駅で紅葉と偶然逢って、と言
い、もうオマエら映画館に向かった後やと思
うたから、追いかけて来たんやと言う平次
「そうなんや・・・偶然、ねぇ?」
私は紅葉ちゃんに笑いかけた
抜かりなく完璧に整えられたファッションに、
甘い香水の香り
「せや、偶然、や💕」
そう言うてにっこり笑った顔を見て、私はす
ぐにピンと来た
おそらく、同じ新幹線に乗っていたんやと
この調子やと、多分、帰りの新幹線も同じや
「そうなん?紅葉ちゃん、用事があって来た
んとちゃうの?」
「えぇ、でも、用事の方は、また来ます」
「で、帰りの新幹線は何時やの?」
にっこり笑って聞いてあげた
想定通り、同じ新幹線の、車両違いを言う
「そうなん?行きも帰りもやなんて、物凄い
偶然やねぇ?」
何のこっちゃ、と言う顔をしているのは平次
ただひとり
蘭ちゃんも、コナンくんも、私の質問の意図
をちゃんと把握しとった
「紅葉ちゃん、嘘はついたらアカンよ?素直
に言うたらええやん、平次を追って来たんや
って」
あら、ばれちゃった、と言う顔の紅葉ちゃん
に、え?と言う顔の平次
まだ、腕は解かれては居らん
コナンくんが、物凄い形相で平次を睨みつけ
ていたので、頭をぽんぽんした
気を乱した方の負けやねんで?
そう教えてくれたんは、おばちゃんや
「せやかて、どう考えてもおかしいやんか
上京する新幹線も同じ、帰りも同じやって」
用事があって上京したはずやのに、偶然に逢
った平次と映画を見たり、その後も一緒に過
ごす余裕まであるみたいやなんて
まるで最初から今日の私らの行動予定、全部
知ってて現れたみたいやん
「あら、ええやないの、和葉ちゃんはいっつ
も平次くん、ひとりで独占しとるんやから、
たまには私を混ぜてくれたって💕」
つまり、どこからか今日の遊びの予定をしっ
かりと事前に入手しとった、言う事や
さすがに平次も事態を察し、顔色を変えた
あほやね、アンタ
現在の現在まで、紅葉ちゃんの嘘、見破れん
なんて
じっと私が見てるのに、漸く気が付いたんか、
急に慌てて腕を振り解く平次
ホンマに、平次はアホやと思う
そないな態度取ったら、それは自白と一緒や
私が知らんところで、女の子にそうされとっ
た時には、いっつもそう好きにさせてますっ
て認めたんと同じ事やねん💢
タメ息を吐いて、私は紅葉ちゃんを見た
「わかった、ええよ、紅葉ちゃんの好きにし
たらええ」
「え?ホンマにええの?💕」
ぱぁっと嬉しそうな顔をした紅葉ちゃん
平次が、美人、言うてただけの事もあるな
美人やし、スタイルめっちゃええし
段々と、気持ちが沈んで来てしまう
「か、和葉、オマエは何を勝手なコト…」
平次はめっちゃ動揺しとった
きっと今、その賢い頭脳は言い訳を考えるの
にフル稼働中、や
私は、頭を振って気持ちを切り替えた
「ええよ、ホンマに
ほな、後はお二人でご自由に」
さ、蘭ちゃん、コナンくん、行こう?
え、でも、と戸惑う蘭ちゃん
でも、コナンくんは違った
「そうだね、行こう!和葉姉ちゃん💕」
蘭ちゃんと私の手を取ると、バイバイ、平次
兄ちゃん、と言って平次に背を向けてすたす
たと歩き始めた
「こら!く・・・ちゃう、コナン!何をちゃ
っかり和葉の手繋いでん!💢離れや!」
和葉!と叫ぶ声もしたけれど、私はぎゅっと
コナンくんの手を握りその場を後にした
良かった、コナンくんと蘭ちゃんが居て
「和葉ちゃん!本当にいいの?服部くん
せっかく、今日のWデート、楽しみにしてた
んでしょ?」
「ええの、もう」
ホンマは、めっちゃ楽しみにしてたんよ?
さっき、紅葉ちゃんがしてたみたいに、私も
一緒に映画見て、おしゃべりしたかった
腕も、組んで歩いて見たかった
でも
紅葉ちゃんの言う通り、私の方が平次と居る
時間、長いのは、事実やしなぁ
ズルイ、言われたら、言い返せへんし
とは言え、最近は出ずっぱりで、殆どその姿
さえ見るのは稀で
「和葉ちゃん、でも」
「ええの、平次と一生会われへんワケとちゃ
うし、ちょっと一回くらいデートっぽい真似
したかったんが、アカンようになってもうた
だけのことや」
私と蘭ちゃんの会話を、手を繋いで聞いてい
たコナンくんが、くいくいと手を引いてにこ
っと笑った
「どこ行く?和葉姉ちゃん」
和葉姉ちゃんの、好きなところに行こう?と
尋ねる仕草も、めっちゃ可愛ええ💕
キュンキュンしてまうやないの〜💕もうっ
「せやねぇ、どこがええかな」
予定通りに回れば、どこかで平次に遭遇する
やろうし、帰りの新幹線は絶対に、一緒は嫌
やった
立ち止まり考える私の手を、くいくいとコナ
ンくんがまたひっぱった
「僕、大阪行きたい!」
明日、僕も蘭姉ちゃんも学校お休みだし、と
「ええの?」
蘭ちゃんは、突然行って迷惑じゃない?と言
うので、ううん、大歓迎や、と言うた
そんな時、コナンくんの携帯が鳴り出した
「あれ、静華さんだ!」
「おばちゃん??」
コナンくんが電話に出ると、おばちゃんが私
に代われと言ったらしい
「和葉ちゃん?アンタ携帯、OFFしたまんま
やろ?」
「あ!」
「うちのアホ息子が、迷惑かけてしもうたみ
たいで、すまんかったな」
どうやら平次、私の携帯が繋がらんって、慌
てておばちゃんに電話をしたらしいんよ
詳細はわからんけど、大体の想像はつくと言
うて、私に、蘭ちゃんらを連れて帰っていら
っしゃいと言うおばちゃん
「でも・・・」
「心配せんでもええ、平次は一緒にせえへん
から大丈夫や」
「え?」
まぁその事は気にせんと、帰ってらっしゃい
と笑い、コナンくんに電話を代われと言うた
「うん、わかった、じゃぁまた後でね!」
結局、そのすぐ後に蘭ちゃんらと3人、私は
帰阪した
おそらく、紅葉ちゃんと今日はデートしとん
のやろうな、平次
ええなぁ、紅葉ちゃん
私の場合、平次が誘って出掛けるんは、その
殆どが事件の依頼絡みやし
純粋なデートって、実はした事が無いんや
桜巡りだけとちゃうかな
2人で買い物とかはあるけど、途中、友達が
合流したり、おばちゃん一緒やったり、その
出先で平次が事件に没頭したりで、な
イルミネーションの時も結局平次、来られへ
んかった上に、帰りの新幹線で不貞腐れて、
めっちゃ大変やってん
海遊館やらUSJやら行きたい、言うて約束は
何遍もしたけど、結局一度もまともに行けて
へんもん
入口で置き去りにされた事も、水族館の中に
置いていかれた事もある
まして、あんな風に腕組んで、笑いあいなが
ら歩くなんて、した事無い
いっつも、生命の危険に晒された時限定や
「私も、新一と無いよ?」
「蘭ちゃん」
「この間、コナンくんと、初めてデートした
んだ」
ね、コナンくん?💕と笑う蘭ちゃん
初めて、出先で事件も何も起きずに、一緒に
遊園地で遊んで、お茶して買い物して、満喫
したんだ、と嬉しそうな顔
コナンくんが、うっすらと頬を染めてるのを
見て、泣きそうになる
そうやん、コナンくん辛かったやろなって
喜ぶ蘭ちゃんを見るのは嬉しくても
ホンマは、工藤くんとして喜ばしてやりたか
ったやろなって
「ねぇ、どうして平次兄ちゃん、和葉姉ちゃ
んとの約束の時だけ、そんなに遅れたり来な
かったりするの?」
「うん、私も不思議だったんだよね」
「それはな、多分私との約束は、ホンマは無
理やのに、平次が無理矢理、予定空けようと
して失敗しとるからや」
ホンマは無理
でも、私が我がまま言うから、何とかして、
ちょっとだけでも付き合おうてやろってな
「せやから、最近はリベンジはせえへん」
「どうして?」
「ちょっとな、最近面倒なナンパが多くて
平次待ってる間に、警察沙汰になってしもう
たんが数回あって・・・」
さすがに父親が刑事でも、補導されたら誰か
に迎えに来てもらわな帰られへんやろ?
「もしかして・・・」
「うん、お父ちゃんら、みんな知ってんねん
せやから、もう諦めって言われてん」
「平次兄ちゃん、その事、知ってんの?」
「平次?知らんよ」
「「ええ!どうして??」」
「事件追うてる平次の邪魔、したく無いし
おばちゃんらに頭下げて、平次にだけは言わ
んといてって言うたんや」
おばちゃんは、もちろんめっちゃ怒った
ちゃんと言わなアカン事やって言うて
でも、言うたんや
そもそも、無理な約束させたんは私やし、来
なかったら待つな、って言われてんのにしつ
こう待ってたんは私の方やからって
せやから、叶えられんかった約束は、もうせ
えへんって決めたんよ
平次は何でやって言うて、あれこれ別の提案
してくれるけど、どれもこれも無理やって思
うもんばっかりやねん
「何かされたりとか、ケガしたりとか、無か
ったの?和葉姉ちゃん」
「うーん、まぁ擦り傷とか切り傷ちょっとと
かはあったけど、ギリギリのところで通行人
の人がおまわりさん呼んでくれたし、大丈夫
やったよ?」
平次にも、気付かれんかったしな、と笑うと
コナンくんは、複雑な顔をした
ええんやで?工藤くんがそんな顔せんでも
「私な、やっぱりアホみたいやねん
平次には、ちゃんと事件、追ってて欲しい
んよ」
そら、楽しみにしとった予定が流れるのは哀
しいし、淋しいな、思う時もあるけど、でも
それで誰かが助かるならええかなって
また、別の機会に、って楽しみを貯金しとっ
たらええんかなって思うようにしてんの
「和葉ちゃん…」
あぁ、もうこんな辛気臭い話はおしまいや
さ、せっかくの遠出やもん、美味しいもん、
食べようや!
そうだね、と言う蘭ちゃんらと新大阪に到着
すると、おばちゃんが待っててくれた
ほな揃いましたな、行きましょかと言うおば
ちゃんに連れられて、まずはみんなでご飯を
食べた
そこは、服部家の行き着けで、お祝い事とか
がある時によう来る場所やねん
おばちゃんがめっちゃおしゃべりして、蘭ち
ゃんやコナンくんも楽しそうやった
私も、負けじとしゃべったけど、せっかくの
ご馳走、半分も味がわからんかった
そのまま服部邸に行くんかと思うたら、おば
ちゃん、涼しい顔して言うたんよ
家出したから、家には帰らんって
「「「はい???」」」
まぁ、詳しい話は到着してからや、と言うと
おばちゃんの実家の方の運転手さんがハイヤ
ーで迎えに来て、私達を神戸の別荘へ連れて
行ってくれた
小さな頃、呼ばれては年に数回、遊びに来て
いた場所やねん
「ここに来るの、めっちゃ久しぶりや💕」
中庭が好きで、よう平次と遊び回った場所
「いやいやいやいや!そうやないって
おばちゃん、家出って、一体何なん?」
大した事やないわ、と涼しい顔で笑う様子に
蘭ちゃんも、コナンくんも唖然
「平蔵さんに、ちゃんと家出するって手紙、
府警に置いて来ましたし、平次の捜索願も出
して来ましたし?」
「「「捜索願???」」」
ええ、捜索願、や
当たり前やろ?一緒に東京行かせたはずやの
に、和葉ちゃん放してどっか行ったなんて、
あり得んやろ?なぁ、コナンくん
あはは、と、さすがのコナンくんも引き攣っ
た笑い声
「平蔵さんに言うてあったんですわ
平次、あの事件後どうも浮わついてるみたい
やから、少し締めたって下さいって」
父親として、それくらいはして下さいねって
言うたんを、あの人、せえへんかったんよ💢
荒稽古のひとつやふたつやみっつ、やって当
然やと思うんやけど
「せやから、平蔵さんに、私のお願いも聞い
て貰えへんのやったら、もう知らんわ
後はアンタがあんじょう甘やかして、平次、
ひとりで育てたらよろしいわって」
ついでにな、と言うと、おばちゃんは妖艶な
笑みを浮かべて言う
「そんなヘタレな息子は、私の愛息子とちゃ
いますから、私の息子と言うだけであの子が
手にしとるもんは全て、取り上げます
その手続きも、然るべき先生にお願いします
からって💕」
ええ先生に、相談済みや、と笑う
ま、まさか、ね
「おばちゃん、もしかして、妃弁護士に頼ん
だん??」
「あら、和葉ちゃん、さすがやねぇ💕その通
りや、法廷のクイーン、負け知らずやもん、
平次が何を言っても、無駄や」
「「ええっ!」」
優雅にお茶を飲むおばちゃんに、蘭ちゃんと
コナンくんは飛び退いてくっついてる
あ〜、アカン、やばい
私は落ち込んでる場合やない
おばちゃん、ガチで怒ってるやんか〜
困った、いっつも仲裁してくれるお父ちゃん
は今、海外出張中やねん
常に本気の人やからなぁ、おばちゃんは
でも、平次、浮わついてたって何なんやろ?
ずっと事件、事件で、学校もギリギリやった
し、部活も先生にめっちゃ怒られてたんや
このままやったら、大将から外すし、部活も
出禁にするって
浮わついてるような時間、一切無かったと思
うんやけど
「で、蘭ちゃん、コナンくん、東京で一体、
何があったんか、説明してくれます?」
あ〜アカンって!言うたらアカン!!火に油
全力で注いでまうって!
蘭ちゃんは困惑した顔
コナンくんは、一瞬、どうしようかな、と言
う顔をした後、
全部、話してしもうたんや
アカン、終わった、と思うた
生まれて初めて見たと思うくらい、おばちゃ
んの背後に見たらアカン、ヤバいオーラが見
えたから
「わかりました
コナンくん、和葉ちゃんをちゃんと連れ帰っ
てくれて、おおきに」
ヘタレの後始末は、平蔵さんがやらんのやっ
たら、私が責任を持って始末します、と言う
「始末って、おばちゃん」
「仁義っちゅう絶対譲れんものがあります
それを違えるような男は、野放しにしたら、
絶対に、あきません」
私も、蘭ちゃんも、あの手この手でおばちゃ
んを宥めたんやけど、全く聞いてはもらえへ
んかった
どないしようと思うてる間に、おっちゃんが
現れてん
「和葉、すまんかったな」
おっちゃんはそう言うて私に謝った
おっちゃんに謝られるような事は、何も無か
ったで?と言うたんやけど、私の頭をぽん、
と叩いておばちゃん連れて、別の部屋に行っ
てしもうた
「どないしよう、平次、きっととんでも無い
事になってまう!」
「和葉ちゃん」
「大丈夫だよ、和葉姉ちゃん」
え?
「この程度の事、ちゃんと出来ないようだっ
たら、平次兄ちゃんは探偵、潔く辞めた方が
いいし」
コナンくんは真顔やった
「人の気持ちを察して、行動出来なかったら
ダメなんだ」
事件は、人の業、修羅の場が多いからね、そ
んな時、色々な人の気持ちを察して行動出来
なければ
「助けられる人を、殺してしまう事もあるっ
て、新一兄ちゃんが言ってたんだ」
コナンくんの瞳は、酷く哀しそうだった
「大丈夫、多分静華さん達は、その危険性を
よくわかってるから、あんな無茶苦茶な行動
に出たんだ」
平次兄ちゃんに、ちゃんと自覚させるために
ね、と笑う
自分が哀しい思いをした事など吹っ飛ぶくら
い、平次に課されるであろう超ド級の難問が
何になるんか、私は不安で一杯になった
「和葉ちゃん、大丈夫だよ!
服部くんは、新一のライバルだし、きっと、
ちゃんと自分で乗り越えるよ」
今までだって、絶体絶命のピンチ、何度もあ
ったでしょ?
その度に、どうやったらそんな力出るのって
言うくらいの力で、和葉ちゃんの事、護って
来たじゃない?
ね、コナンくん?
「うん、蘭姉ちゃんの言う通りだよ!まぁ、
ちょっと最近、浮かれてたのは事実みたい
だから、僕達も見守ろうよ」
「工藤くんから、何か聞いてるの?」
「新一兄ちゃんとの約束だから、詳しい事
は言えないんだ、ごめんね、和葉姉ちゃん」
でもね、和葉姉ちゃんを、泣かすような事
じゃないから、安心して?
にこっと笑うコナンくんに、きゅんとして
しまうけど、不思議と安心出来た
わかった、コナンくん信じて待ってみるな
平次なら、きっと大丈夫や
おっちゃんとおばちゃんが部屋に戻って来
て、みんなで夕飯を食べた
心なしかおっちゃん、ほっとしてる??
何があったんかは聴いてへんけど、とりあ
えず、大好きなおばちゃんと逢えて、良か
ったな、おっちゃん
私はこの場に居らん平次が、どうしてるん
か気になっていた
「恋歌 上の句2」へ
to be continued