『クライ・マッチョ』
2022.01.15 17:51
泣いてるマッチョなのか、暗いマッチョなのか。原題を見る限り「Cry Macho」なので泣くマッチョらしい。ちなみに映画の中でマッチョは泣かない。鳴きはする。マッチョというのは筋肉のことではなく、ニワトリのことなので。
過去すごいロデオスターだったお爺ちゃんが、父親に頼まれ、メキシコに行って息子を取り戻しに行く。言うなれば、ただそれだけの映画である。
いやいや、そんなことはないだろう。と人は言う。確かに物語としては「主人公が目的のために旅をする」というのは基本的なフォーマットのひとつだ。でも考えてほしい。例えば「主人公が母親を救うためにエジプトに行く」というジョジョの奇妙な冒険第三部は、それだけで説明が終わるだろうか。エジプトに行く道中で、様々な刺客と戦い、仲間と友情を育み、別れを惜しむ。そういう物語がフォーマットの上に飾られて、言うなれば「物語の起伏」が発生するわけじゃないですか。そういうのが全くないのがこの『クライ・マッチョ』なんですよ。
さながらメキシコを舞台にした「のんのんびより」。大きな感情も、大きな起伏も、胸焼けしちゃうから「車が盗まれちゃいました。なので次の街で車を盗みました」とか、「警察にドラッグの運び屋だと疑われました。なので金を渡しました」という小さな起伏ぐらいがちょうどいい。もう豚骨ラーメンは食べられない。もうとんかつは食べられない。白湯を飲んでほっと一息。でもなんかそれが情けないとか老いさらばえてるだとか言われたくない。私は白湯の美味しさを知っているんですよ。ということを見せたい。そんな映画。クライ・マッチョ。でも俺は白湯よりラーメンが食べたいな。