日本の雇用の常識を知ることは、自社の雇用の思い込みを知ること「若者と労働」人事の代わりに読みました。
今回の人事の代わりに読みましたは、「若者と労働」。
少し古い本ですが、ビッシリ貼られた付箋を見てわかるように、
HR系のビジネスをしている私には非常に勉強なった本でした。
ということで
オススメ度:★★★★☆
著者は元厚生労働省の官僚で、
労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口 桂一朗さん。
運営されているhamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)は、
労働問題界隈では、有名ですね。
最近では、すっかり定着しつつある
「ジョブ型雇用」「メンバーシップ型雇用」という言葉を
使い出した方でもあります。
ちなみに「メンバーシップ型雇用」と「ジョブ型雇用」をすごく乱暴に解説すると、
「メンバーシップ型雇用」は職種に関係なく、
ずっとその会社で頑張ってくれる一員(メンバー)を雇用すること。
まぁ、つまり「新卒一括採用の総合職でジョブローテーションで、
役員へのすごろくスタート!」というなじみのある雇用スタイルです。
で、「ジョブ型雇用」は、明確にやる業務が規定されていて、
それを遂行する上で必要なスキルを持っている人を採用する雇用スタイルです。
家族の一員を採用するのが「メンバーシップ型雇用」で、
機械の歯車を採用するのが「ジョブ型雇用」というと
後者が冷たく聞こえすぎるかもしれませんが。
本書は、当時、社会的な問題としてヒートアップしていた、
若者雇用の問題を日本の「メンバーシップ型雇用」と欧米の「ジョブ型雇用」を
比較しながら日本の雇用システムの特殊性をあぶり出しつつ、
歴史的な経緯とともに、その日本独自の雇用システムが誕生し袋小路に陥った理由と、
それを解決しようとした労働政策がうまく機能しなかった背景と、
その結果としての若者雇用問題を、分かりやすく冷静な議論で解き明かしてくれます。
もちろん欧米の雇用システムの方が、優れているわけではありませんが、
比較対象が生まれることで、客観性が生まれ、
その特殊性が、よりクリアに理解することができます。
日本の採用市場の特殊性や構造を知ることは、
そこで優秀な人事を獲得するための戦い方のヒントをもらうこと。
さらに日本の雇用の常識を知ることは、
私たちが無意識で前提にしてしまっている自社の雇用の常識を、
意識することにつながります。
気づいていなかった固定観念が外れれば、
自社の採用や人事制度に関しても、新しい発想がでやすくなるのではないでしょうか。
「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」と言いますが、
その両方が、一冊でできるのがこの「若者と労働」。おすすめです。
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