神聖ローマ5-マジャールを討伐した聖槍
2017.10.19 13:03
鳥獣王ハインリヒ1世の難題は新たにハンガリー盆地を占拠した遊牧民マジャール人だった、915年にはブレーメンまで侵攻されて略奪を重ねた。ハインリヒ1世は、マジャール人と928年に、9年間の休戦協定を一旦結んで時を稼いだ。その間マジャール人にならって騎兵を強化、マイセンに強固な砦を築く。
鳥獣王は、さらにスラブへ遠征して928年にブランデンブルクをザクセン公国に併合、翌年ボヘミアに東フランクの総主権を認めさせた。そして国力を充実させた王は、933年全諸侯連合軍を率いて対マジャール遠征を行う。実はワグナーの歌劇「ローエングリン」第一幕に出て来るのがこのシーン。
王はリアデの戦いにおいて、マジャール軍を撃破した。そのときにブングルト王国に伝わった「聖槍=ロンギヌスの槍」をかざしたといわれている。この槍は、歴代神聖ローマ皇帝に伝えられ、現在ウィーンに展示されている。なおこの聖槍もワグナーが「パルジファル」で使っている。
ハインリヒ1世は、ドイツの団結を固め、長子相続を定めて領土の分割を防いだ。ドイツ王権の基礎を築いた王といえる。そしてマジャール撃破を見たヴァチカンが「こりゃ使えるワイ」と思うのである。長子オットーを後継者に指名し、936年大好きな狩りの途中、脳卒中で崩御した、本望といえるかもしれない。
下左はリアデの戦いで勝利するハインリヒ1世。右はウィーンホーフブルグ宮殿に保管されている聖槍