ONE

アスリートの捻挫の治療

2017.10.19 16:04

現病歴

【患者】バスケット選手

練習で負傷。右足首の外側で胆経と胃経の間が痛む。触ると腫れている。


基盤作り

■Tポイントを中野式柳下てい鍼で補う。

■脈会を中野式柳下てい鍼で補う。


診察診断

【経絡腹診】腎が最も虚。肺が次いで虚。脾が最も実。心が次いで実。肝は平。

【奇経腹診】帯脉か陽維脉。

【脉状診】浮・数・虚。

【比較脉診】腎が最も虚。肺が次いで虚。脾が最も実。心が次いで実。肝は平。

【証決定】総合的に判断して腎虚証とした。

【適応側】患側が右足首なので左側。


治療

【本治法】

左陰谷と左尺沢に補法。検脉すると左関上胆の脉位に実邪が浮いてきたので患側の右胆経を切経して邪が客している懸鐘に浮実に応じる瀉法。

この段階で腫れ痛みがましになる。

【補助療法】

宮脇奇経治療。臨泣-外関と外関-臨泣にテスターを貼って底背屈してもらうと臨泣-外関でさらにましになるとのことなので、金銀粒を貼付して自宅でドライヤー灸でのセルフケアを指示。

さらに右足竅陰から刺絡→さらに痛みが和らぐ。

【標治法】患部の最圧痛点に八卦皮内鍼法。

八方向に向けて順番に仮止めし、足を動かしてもらい最も痛みが和らぐ方向を調べます。

上下・左右・斜め。

最も痛みが和らぐ方向を検出したら皮内鍼を固定します。

経過

数日で治癒。

練習を再開。


スポーツ障害も、雑病と同じく本治法で生命力を高めて、病体に応じた補助療法や標治法を適宜選び施すことで、安心安全に早期回復に導くことができます。


今回は補助療法は奇経と刺絡を、標治法は皮内鍼を選択しましたが、子午やムノ治療もよく効きます。


しかし何といっても、やっぱり本治法が一番影響力があります。

病因病理を解決するからです。

ケガや事故の病因ですが、実は内傷七情の乱れが関係しています。

特に怒傷肝によるものが多いです。

怒れば気が上がるとありますが、頭に気が集中して足元が手薄になればケガをしやすくなるのは当然です。

俗に言うとさかに上るというやつです。

本症例の場合は肝火によって腎精がやられたのでしょう。

難経流に言うと七十五難型の病理状態です。


肝火は陽気を亢進させます。

体内で陽気が動じると風が発生します。

病的に発生した風ですから風邪です。

肝風内動ですね。

風が巻き起こると動揺現象が起きます。

上焦が動揺すると目が回り頭が眩みます。

中焦が動揺すると不安にかられます。

そして下焦が動揺すると仙腸関節がズレます。

なぜか?

仙腸関節には肝胆の経筋が巡っていますが何よりも小腸兪があります。

小腸は肝と子午陰陽関係に当たります。

なので肝が変動すると小腸兪に影響して仙腸関節がズレます。

ここがズレると腰下肢に脆弱性が及びますのでケガをしやすくなります。

骨盤が歪む要因は、もちろん姿勢や環境もありますが、風で揺らされているからだということを知っておいてください。

風邪は邪熱から生じ、邪熱は気滞・湿痰・お血から生じます。

これらの本体はストレスや不摂生です。


ですから三清浄(みっつのすまし)を心がけると共に、普段から小腸兪を調整して仙腸関節に安定感を与えておくことは予防につながります。

色々な方法がありますが、僕は打鍼でやります。

特に沢田流小腸兪に打鍼を一閃すると瞬時に仙腸関節が矯正されます。

ということで、いかなる病も証を立て証に従って治療すべきです。

臨床的には証には2つの意味が込められています。

脉がこうだから舌がこうだからという狭いものではなく、病因病理とそれに対する治療法の指南が証です。