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これからの歯科医療人に求められる摂食嚥下リハビリテーション

2017.10.21 05:22

2017年10月15日に第5回未来院長塾が開催されました。

今回は医療法人 林歯科医院 林宏和先生をグランフロント大阪ナレッジサロンに招き、ご講演いただきました。

未来院長塾が警鐘を鳴らす2025年問題、その解決策の一つである摂食嚥下障害の様々な問題について3時間という限られた時間ではありましたが解決策を教えて頂きました。

受講生の多くは外来で日々診療しているかと思いますが、歯科以外の医療分野で起きている様々な問題について関心が低くなるのは残念ながら仕方がないのかもしれません。

そんな中で、新潟大学医歯学総合病院でキャリアを得られた先生が提案するお話は、今の歯科界において示唆に富んだ内容でした。今回も簡潔ではありますが、講演内容をまとめますので皆さんで共有しましょう。

1.イントロダクション

病院歯科で過ごされた先生は他科、特に医科と共に仕事をされていて、医科歯科連携の重要性、必要性についてお話し頂きました。私の偏見かもしれませんが、歯科の弱点の一つは仕事やプライベート問わず同職種以外と意見交換をしない事だと思います。医科の先生やメディカルスタッフとも交流する事で、歯科の強みや重要性を再確認するだけでなく地域が求める歯科のニーズに気づく事が出来るはずです。勿論そう感じている方は多いかもしれませんが、どのようにしてその繋がりを構築していけば良いかが分からないのが実際のところではないでしょうか。

SNSの時代において地域での病診連携、診診連携、病病連携は見える化しており、参加への敷居はかなり低く、少しの興味と少しの勇気で自分の可能性を広げられる事を先生の実体験を基に教えて頂きました。

知らない事は恥ずべき事ではなく、知ろうとしない事が駄目である事が分かりました。

2.歯科が摂食嚥下リハに取り組むべき理由

超高齢社会における人口動態の変化、疾患の変化、それに伴う外来受療率の変化についてデータを基にご教授頂きました。

摂食嚥下に取り組んでいる耳鼻科の先生はその科においても2%とかなり少なく、またメディカルスタッフでも重要な役割を担っている言語聴覚士の数の限りもある事から、歯科医師、歯科衛生士の今後の取り組み次第では、職域拡大に繋がる可能性を感じる事が出来ました。

3.一般開業医が出会うかもしれない嚥下障害患者の特徴

①訪問診療②外来と大別した場合に想定される問題と解決策についてお話し頂きました。

全身疾患とそのリスク管理は訪問と外来で明確に異なります。残念ながら、訪問診療の場で口腔機能を改善できる割合は低く、現段階で歯科単独での解決は限界があります。ですが、外来という状況では異なります。

フレイルというワードはご存知かと思いますが、フレイルは口腔から生じます。その口腔から始まるフレイルをいち早く見つけるのは我々歯科医の役割であり、これからは当然の責務であると実感できました。フレイルは予防、または改善できるんだと認識し、その気づきの勘所について詳細に教えて頂きました。

4.摂食嚥下リハの算定について

受講後のアンケートでも、外来で摂食嚥下障害の保険診療が可能である事を知らない方が多数見受けられました。

それもそのはず、日々の診療で摂食嚥下障害を疑う事が少なかった表れでもあるからです。

疾患への気づき、スクリーニング、客観的な機能評価、予知性のあるリハビリ計画立案の流れについて分かりやすく教えて頂きました。

また、ICTを用いた継続的な学びの場や交流の場を設けて頂きました。

今回参加できなかった先生もご興味あれば未来院長塾宛にご連絡ください。

5.内視鏡で観察する健常者の解剖と摂食嚥下動態モデル

異常を知る上で一番効果的な学びは何でしょうか。それは、健常な状態を知る事です。

学生時代、解剖学や生理学に対して辛い思い出があるのは私だけではないはずです。

今回内視鏡を用いたライブデモで私自身が被験者となり、実際の機能する健常像を皆さんにご覧いただく事で理解を深める事が出来たかと思います。

液体と固形物に対する生体の反応の違いがダイナミックに伝わったかと思います。

来年は企業の協賛を得て内視鏡を用いたハンズオンセミナーも企画しますので、ご興味ある方はご参加ください。

6.嚥下障害の体験

ライブデモを通じて健常像の把握、それに対して異常像を把握する事で、摂食嚥下障害といえど一括りにできない程様相の違いがある事が分かり、動態モデルに応じた障害の見極めが肝心である事が分かりました。

このタームでは、受講生が各自動態モデルごとに疾患を抱えている体験を実習を通じて学びました。

先行期、準備期、口腔期、咽頭期と各状態に応じて手持ちの水を用いる事で、疾患を追体験しました。

7.スクリーニングテスト及び症例

外来でフレイルを疑う患者に出会った場合に、実際に疾患が生じているか否かを見極める必要があります。レントゲンやプローブでは嚥下障害があるかどうか見極められない場合に非常に役立つスクリーニングテストの方法を実習を通じて学びました。

また、林先生が取り組まれてた症例を発表して頂きました。

症例を通じて機能評価の重要性、行うタイミングの重要性について理解を深めました。

外来を主とする受講生にとって、先生のお話は敷居が高く感じたと同時に、摂食嚥下障害という疾患がとても身近に感じられたかと思います。今回の講演が明日からの皆さんの診療にとって役立つ内容になれば幸いで、また各地域で困っている人にとって改善のきっかけとなれば主催者として大変うれしく思います。

次回は今年度最後の未来院長塾です。より多くの方が参加されることを願い、今回のレポートを終了します。

新井 是英