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下関・Jazz Inn Band Wagon(バンドワゴン) の思い出:17/10

2017.10.25 11:30

2019年6月8日(土)のセッションをもって、11年7ヶ月の歴史に幕を降ろされた下関・Jazz Inn Band Wagonさんの思い出の記事です。

【参考:他の記事】

 ②17/12訪問記  ③19/05【ご閉店情報】  ④19/08【TV情報】


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今回は九州文化圏?の下関、福岡から関門橋を渡ってすぐある下関ICを降りて約10分。旧下関英国領事館近くの商店街の中、店の前に置かれた特徴的なネオンが目印のJazz Inn Band Wagon(バンドワゴン)さんに行ってきました。

いざ、2階にあるバンドワゴンさんへ!

営業は木曜・金曜の19時~のみ、両日共にライブ、ということは認識していて、ライブが始まっているのもわかっていたのですが。。。

曲間を待って入ったにもかかわらず、お店の二重扉を開けたら目の前にベーシストがいて、たくさんのお客さんの視線を集めるなんて、全くの想定外。。。そのベーシストの脇をすり抜け空いていたカウンターの端の席に座り、マスターにオーダーして、ホッと一息。

5~6人座れるカウンターとその前の長テーブル2つが常連さんでほぼ満席、大したものだなぁ、でも、こんな状況だとマスターのお話を伺うのも難しいなぁ等と思いながら演奏を聴いていたら、来た時間が遅かったようで、あっさり前半の演奏が終了。。。ここで、このお店の面白い趣向の一つ、演奏者によるチップ回収タイム!

まぁ、この後もジャム・セッションを聴かせてもらうんだし、と周りの方と同じようにチップを用意したものの。。。逆に気を遣っていただいてか、私の方には来ていただけず、どうしよう?と少し戸惑ったその瞬間、「こっちもあるよ!」と後ろから笑顔のマスター。

いやいや、本当に何がどう幸いするかわからない。。。これをキッカケにマスターから色々お話を伺うことが出来ました。

今年60歳のマスターはベーシストで、その芸名はディジー吉本。噂には聞いていたのですが、やっぱりスゴい方。病気で右耳が8年前、左耳が3年前に聞こえなくなり、1年前から両耳とも人工内耳に。。。後半のジャム・セッションでは独特な味わい深い歌をアンコールも含めて2曲ご披露されたのですが、実はまともな音は聞こえていないのだそうです。

ネットで調べてみたところ、人工内耳とはマイクで拾った音を電気信号に変換、内耳に送信し聴神経を刺激、この刺激が脳で音声として認識されるという画期的な補助器具ですが、①声の区別がつかない、②たくさんの音を同時に理解できない、③音の方向・距離がつかめない等の問題もあるようです。実際、会話している時にマスターがおっしゃったのですが、私の声自体は3割聞こえているかどうかぐらいで、後は私の口の動き等から理解しているとのこと。会話も歌もほとんど健常者と変わらないだけに、驚きでした。

あと、とても印象的だったのが、聞こえにくくなって良かったこともある、と明るくおっしゃったこと。。。曰く、ベースを演奏する時、自信を持って自分を全面に打ち出すしかないから、だそうですが、このポジティブな捉え方にはただただ感心するばかり。

常連さんにお聞きしたのですが、マスターは両耳人工内耳のベーシストとして世界的にも評価され始めたようで、何とこの数週間前にロシアで公演してこられたばかり。。。サンクトペテルブルグの音楽祭でロシアのジャズピアニストと共演、その夜は市内のジャズクラブでメインで演奏、しかも、それに日本語学校での交流の様子等も併せてロシア国営放送でTV放映。下の写真はその模様の一部ですが、まぁ、カッコいいこと!

マスターがご自身のFBに書かれておられましたが、人生、どこでどうなるかわからないものですね。。。

さてここで、そんなマスターのCDをご紹介。まずは「LET ME ENTERTAIN YOU」。このアルバムはこれまで出した録音のベスト盤で、お店の名前にもなっているミュージカル映画バンドワゴンからのナンバーで始まりますが、お人柄同様、明るくパワフルで聴いていて元気になれる曲、しんみり美しい曲等々、バラエティに富んでいて楽しいです。

そして2枚目は「人工内耳のジャズの世界」と題された全曲ディジー吉本オリジナルのアルバム。フリージャズっぽいおどろおどろした出だしでどうなるかと思いましたが、スピード感があってノリのいい曲あり、スローで聴かせる曲ありで、あっという間に7曲目、メインの人工内耳のセレナーデまで聴いてしまいます。

人が何かに感動する一つのパターンとしてもの凄い苦難を乗り切った人物の成功があると思うですが、マスターはもはや演奏されているだけでそのレベルにあるのだと思います。そしてこのCDでは、マスターが響かせるベースの音にプラス・アルファの何かが乗っかっているように聴こえて仕方がありませんでした。

逆境にも負けることなく、明るく前向きに生きること、やりたいことに向けて人並み外れた努力をすること。わかってはいてもなかなか出来ないことですが、それを実際にやっている人が目の前にいる。お会い出来て良かった。その温かい手と握手することが出来て良かった。そんな感動を与えてもらえる素晴らしいお店でした。


それでは、ここからこのお店等に関する豆知識コーナー。

1.マスターの歌。。。ジャム・セッションでマスターがベースを演奏されることはあっても、歌われることはほとんどなかったようで、常連の皆さんも感心しておられました。口の悪い常連さんに至っては、本当は聴こえてるんじゃない?きっとあの作曲家のS氏と同じだよ。苦笑

2.ジャム・セッション。。。私のように聴くだけの客にとって、ですが、このお店のそれと他の多くのお店のそれとの違いは、チャージ制ではないこと(チップ制。支払うかどうかは本人の意思なので、納得出来ます。笑)、そして、ジャズとは無縁だった人でも歌わせて一緒に盛り上がる温かさがあること、でしょうか?そして、聴いていて楽しいかどうかは演奏レベルで決まるものではなく、お店の雰囲気によるのだと改めて思わされました。。。このお店にいた皆さん、全員仲間で、これなら私でも無邪気に楽しめます。

3.九州ジャズロード(初版)。。。マスターが私のボロボロになったその本を見た瞬間、嬉しそうにおっしゃいました。「うちの店、その初版には掲載されてるけど、改訂版には載ってないんだよ!」

というのも、その頃には同じ田代俊一郎さんの次の著作「山陰山陽ジャズロード」が発売されており、そちらに移されたから。。。ただ、この「九州ジャズロード」、このお店と門司の六曜館GIGさんとの関門交流の話から始まっているので、著者としては本当は九州側にも残したかったのでは?と邪推しますが、やはり下関は九州ではなかったんですね。笑

4.山陰山陽ジャズロード。。。先日、いつもの福岡のJABさんに行って、その本を確認して驚きました。初版の「九州ジャズロード」では両耳共問題なかったマスターが紹介されていますが、この本ではちゃんと記事が差し替えられていて、耳が不自由になられた後のマスターが紹介されています。またそこで初めて知ったのですが、耳を悪くされて以来、いつもめまいがするので、マスターの芸名ディジー=Dizzyの意味は「めまい」なのだそうです。

5.常連さんからの情報。。。山口には豚骨ならぬ牛骨ラーメンなるものがあるそうで、下関にもお店が出来たとのこと。早速帰りに寄って来ましたが、テールスープにラーメンが入っているといった感じで、実に不思議な味わいでした。


6.お店の近くにある関門汽船の船着き場。。。やけにお洒落で、デートにはもってこいのいい感じでした。


7.ちなみに。。。あの!アントニオ猪木がマサ斎藤と闘った(そっちか?!笑)巌流島にもここから行けるそうです。

それにしても、本当に楽しい夜でした。マスター、色々とお気遣いいただき、どうもありがとうございました。この九州ジャズ・ロード巡りが一段落したら、また伺います。

【駐車場:無(近隣にコインパーキング多数有)、喫煙:可】


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