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【LIVE REPORT】Vol.6 夏川りみ

2017.10.25 12:00

American Express presents InterFM897×COTTON CLUB

THE ROOTS OF MUSIC Vol.6 夏川りみ

2017.10.1 sun. @COTTON CLUB


<LIVE REPORT>

よく晴れた日曜の夕方、東京駅丸の内南口から5分程のCOTTON CLUBへの道、外を吹く風がとても気持ち良かった。

会場に入ると、既に満員で、オーディエンスは開演迄の時間をお酒と美味しい食事を楽しみながら待っている。BGMは今夜の主役、夏川りみの故郷・沖縄の民謡。衆議院の突然の解散で慌ただしい世の中だが、ここだけは、悠久の、そして優雅な時が流れている。

そして、波の音のSEが流れ、夏川りみがメンバーを連れて登場。今回はピアノ+中国古筝という、とてもシンプルな編成だ。

改めて書くと、この「THE ROOTS OF MUSIC」というのはそのアーティストのルーツとなる曲達のカヴァーが聴けるというスペシャルなライヴだ。

そんなライヴの1曲目、夏川は「Amazing Grace」を歌い出した。祈りにも近い、温かくも深い夏川の声が奏でる「Amazing Grace」が会場を包みこむ。歌が2番に入ると、会場の空気が少し変わった。それまで英語だった歌詞が2番、3番はウチナーグチ(沖縄弁)となり、歌の深淵さに光が差し込み、会場の温度が上がって行く。

2曲目は地元沖縄の子守唄。曲の説明をする沖縄弁の夏川のMCで会場の空気が更にほどけて行く。夏川は三線を持ち、その沖縄の子守唄「童神~ヤマトグチ~」を披露してくれた。

続いての3曲目でなんと中島みゆきの「糸」を披露。この「糸」を皮切りにこのライヴならではの夏川のルーツミュージックのカヴァーが続いた。

その極めつけが次の4曲目。その前に長めのMCを挟む……。夏川が初めて人前で歌ったのは4歳の時だそうだ。曲は石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」だったという。そして小学校2年で地元石垣島のケーブルテレビの、ちびっこのど自慢番組に初出演を果たし、しかも優勝をしたという夏川。その時に歌ったのは川中美幸の「ふたり酒」。小学校2年でこの選曲というのはなんともませた歌娘だったわけだが、夏川は小さい頃、人前でこうした演歌を歌い大人達の拍手喝さいを浴び、歌で生きて行く道を踏み固めていった。でも何故演歌なのか?夏川は幼い頃、歌の基礎として演歌・歌謡曲を教わっていた。それ故、夏川は子供の頃、出場したカラオケ大会では演歌ばかり歌っていたというわけだ。そんなエピソードを披露した後、森昌子の「越冬つばめ」を歌い出した。演歌・歌謡曲で培ったスキルと、長い歌手生活で培ったスキルに支えられた夏川の「越冬つばめ」がCOTTON CLUBを浸す。これが本当に素晴らしく、言葉の一つ一つが心に届いてきた。

その後、英語の「’S Wonderful」、同郷・BEGIN島袋優が作曲した「海の声」のカヴァーを挟み「涙そうそう」へ。

夏川自身も「この唄がなかったら、今の自分はないーさねー」と言っていたが、まさに歌手・夏川りみの礎となる曲で、この曲の大ヒットを機に、夏川は02年から4年連続で紅白歌合戦に出場した。その4回全ての紅白でこの「涙そうそう」を歌っている。タイトルの意味はウチナーグチで「涙がとめどなく溢れる」の意味で、作詞を担当した森山良子が急逝した兄のことを想い紡いだ詞だ。悲しい歌ではあるけれど、心に詰まった何かを流してくれる浄化の様な歌だ。そして耳馴染むこの歌を誰に強制されるでもなく、会場のみんなが口ずさむ。なんと素敵な瞬間なんだろうと思った。と、同時に最近はこうした類の流行歌がないことに気づく。そんな時代に夏川の存在は極めて大切だし、そういう歌い手のルーツに迫るこのイベントもとても大事な役割を担っているんだなぁと思った。

「涙そうそう」に続きBEGINの「島人ぬ宝」で会場を盛り上げると、ライヴ本編のラストは「安里屋ユンタ」「豊年音頭」の沖縄民謡を2曲立て続けに披露。歌に入る前、沖縄民謡には欠かせない〝カチャーシー″(両手を挙げて、手首を左右に振る踊り)を観客に教え、みんなで〝カチャーシー″も楽しみながら本編は終了した。

そしてそのままアンコール。

先ずは元THE BOOMの宮沢和史に作ってもらったという新曲「あしたの子守唄」を披露。この唄は〝未来が明るく、楽しいものであるように……″そんな内容だ。

自らのルーツ(原点・礎・故郷)=過去を巡った今回のライヴであったが、気が付けば、未来を歌い、その歌が琴線に触れる。そういうことなのかと腑に落ちた。

言葉にするとおしつけがましいが、ルーツを探るというのは実は未来に向かっている行為なのもしれないんだなぁと。

そして、いよいよ最後の曲。

喜納昌吉のカヴァーであり夏川自身も歌い続けてきた「花」。

先ずはアカペラ、マイク1本で歌い出す。

そしてマイクも避けて地の声で続きを歌う夏川。

声が、歌が、言霊が、会場に木霊する。

やがて楽器が重なり、マイクを通し歌は続いた。

その歌は、会場の外の世界にも届いているように思えた。

そして、歌い終わった夏川にオーディエンスは惜しみない拍手を送り続け、その拍手と共にこのスペシャルなライヴは幕を閉じた。

(文:ジョー横溝 写真:高田 梓)