最高にクールな退職
先日、工場での仕事を辞めました。ネーピアの工場は最初から長く勤めるつもりはなく、車を買うことを目的にしていたのでお金が貯まるまでの3ヶ月間よろしくお願いしますとマネージャーには伝えていました。
俗に言う季節労働*ってやつです。
*季節労働:ひと季節だけ働く仕事のスタイル。英語でも日本語と同じようにSeasonal Jobと言われる。3ヶ月ほどの仕事で主にNZだと農作業、日本では自動車工場を指す
それでも、仕事をやめる時には寂しい気持ちに・・・は全くなりませんでした。というのも職場は工場です、周りの人達は温かい人というより、アウトローな奴らばかり。
休憩中、部屋の扉を閉める時わざと大きな音を立てて、人を驚かせるマーク。
ゴミを捨てる時はスリーポイントシュートの如く遠くから投げて、ミスしたらそのまま放置のケリー。
スマホの音量の調整が出来ない(効かない?)ためいつも大音量のポリー。
旅行に行ってお土産にチョコレートを買ってきては、その大半を自ら消費するチョコレート依存症のトレイシー。
そしてワーカホリックのマネージャー・アリスタとその奥さん・キム。
仕事を始めたばかりの時、日本人の僕には悩みがありました、それは英語の名前を覚えるのが大変だということ。
馴染みのない名前はやたら覚えるのに時間がかかります。僕は、その時一番話しやすいなと思っていたマークにそのことを話しました。
すると彼はこうアドバイスをくれました。
マーク「俺の名前はマーク。これは覚えやすいだろ?な?」
なお「はい」
マーク「あとはケリーにポリー、あ、そうだな、まぁ、ここは女ばっかりだから女はみんな同じ呼び名でいいよ、ビッチって。名前を覚えてきたら名前のあとにビッチを付けて呼んでやれ、すぐに振り向くはずだから」
なお「あはは」
冗談かと思ったその話は、彼にとってはまったく冗談なんかじゃなくって、その日の昼休み、彼は女性たちのいる前で一言。
「なおしがお前らのことを…
ビッチって言ってたぞ」
おい、マークふざけんな!(心の声)
そのあとも、マークからは何度か「女を呼ぶ時はビッチって言え」と後ろからけしかけられ、その通りにさせられます。
後日、女性陣は「マークは変人で差別主義者だから、あいつの言うことは話半分で聞いてるよ」と言われ、無事に誤解は溶けましたが差別主義者のように恍惚としていたことも事実。
まさか目の青いブロンズの女性を目の前に、ビッチと呼ぶ番が自分の人生に巡って来るなんて。
そんな職場の最後の日、握手をして「幸運を祈っているぞ」と言ってくれたのはいつもちょっと早めに退社するマネージャーのアリスタとキムだけ。他の面々は退社時間になると普段通りに早く帰れよというオーラ全開でした。
3ヶ月も働くと、もはやこの関係も気楽に感じ、僕は何も言わずに仕事場から出て、そのあと車に乗り込み、鍵をまわします。
するとラジオから流れてきたのはこの曲でした。
歌詞はこんな感じです。
今までになく最高でクールな退職だなと思い、サングラスをつけて走り出しました。
僕は翌日、ネイピアを離れ次の街タウランガに迎うことにしました。
今回も読んでいただきありがとうございました。