ウェンディゴ憑き
ウェンディゴとは。
カナダ南部からアメリカ北部のインディアンたちに伝わる精霊の名前であり、地方によって様々な名前がある。
通常は人に害を加えることは無いが、自然を壊そうとすると怒り狂い、人間に害を加える他に人間を食べてしまうという。
一人旅をしている人の背後に忍び寄り、気配を漂わせる。
暫くすると、ウェンディゴはボソボソとした声で話しかけてくる。
何と言っているかはわからないがボソボソ、ボソボソと不安を煽るかのように背後から声がする。振り向いても誰もいない。
これが旅人が不気味さに耐えられなくなるまで続くそう。
また、文化依存症候群で「ウェンディゴ症候群」というものがある。
北アメリカのオジブワ族やアルゴンキン部族系インディアンなど、ごく限定された部族に見られる症状で、ウェンディゴ神話では夢の中でウェンディゴに取り憑かれるというものがある。
そして人間の肉を食べてしまうが最後、その人は新たなるウェンディゴになってしまう。
ウェンディゴに取りつかれた人の特徴はまず、気分の落ち込み、食欲低下という鬱のような初期症状があり、当人は「自分はウェンディゴに憑りつかれた」という思いが頭を占めるようになり、次第に「自分はウェンディゴになってしまう」という恐怖と不安に苛まれ、
普段食べていた物を一切受け付けなくなり、会話や身だしなみと言った人間らしさが失われ、元始的野性味が現れる。
そして最終的に「人が変わったかのように暴力的、人肉に惹かれる」
といった症状が現れる。
当人的には内側から凍えるような感覚と、気分の変化が激しくなるそう。
こうなるともはや治すことは出来なくなり、同じ部族の人に処刑してもらうか、自殺をするか、はたまたウェンディゴになり彷徨うか。
一応この症状には理由があり、寒い時期にビタミンが不足して精神状態が変調し、それに付け加え「ウェンディゴ」という深層心理が働いたためになったと言われている。
治療法として「体を温める、熱した熊の脂肪を食べさせる、アルコールを飲ませる」
これはウェンディゴの心臓は氷でできていると言い伝えられ、それを溶かす為だという。
実際、動物の脂肪にはこの時期足りなくなっていたであろうビタミンが豊富に入っているため、治るのは必然とも言える。
しかもコップ一杯の脂肪で治る。
またカナダでは実際スウィフト・ランナーという人が、「自分はウェンディゴに取り憑かれた」と言い、実際に母親と弟を食べたという。
その時も冬であり、食糧難だった。
1879年12月20日に絞首刑を執行された。
しかしなぜ、ウェンディゴという存在をしらない旅人にも影響するのかは解らない。
もしかしたら嘘から出た真ではないが、イマジナリーなフレンドとして想像妄想の枠を飛び越えてしまったのかも。