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ビットコインに分裂バブル 11月に第4の新通貨

2017.10.28 14:05

代表的な仮想通貨であるビットコインが次々と分裂している。24日に新通貨「ビットコインゴールド」の分裂作業が始まり、11月中旬には中国勢を中心に新たな通貨を誕生させる構想がある。初の分裂で8月に生まれた「ビットコインキャッシュ」と合わせると4種類に増える可能性が高い。新通貨を得ようとする投機マネーの流入で、本家ビットコインは大幅な価格上昇が続く。世界的なカネ余りが生み出すビットコインの急騰劇は「分裂バブル」の様相も呈してきた。

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 「ビットコインゴールドの詳細がまだ分かりません。取り扱うかどうかを判断するには時間が必要です」。分裂予定日が1週間後に迫った17日、仮想通貨取引所などが集まる業界団体の日本仮想通貨事業者協会(JCBA)の幹部は金融庁に出向き、こう訴えた。

 懸念されるのがその安全性だ。「リプレイアタック」と呼ぶ不正アクセスへの対策が不十分で、利用者のビットコインが盗み取られる恐れがあるという。JCBAの奥山泰全会長は「そもそも取引所で価値がつかない可能性もあり、取引所が扱うべきか判断するのに1カ月はかかる」と話す。


ビットフライヤー(東京・港)やリミックスポイント傘下のビットポイントジャパン(東京・目黒)は24日時点のビットコイン保有者にビットコインゴールドを付与する方針を示したものの、安全性の確保をその前提条件にした。ビットバンク(東京・品川)やQUOINE(コイン、東京・千代田)はすぐには付与しない方針で、今後の状況を見極めたい考えだ。

 だがそんなことなどお構いなしに投機マネーは新通貨の誕生に浮足立っている。8月のビットコインキャッシュの分裂時にビットコイン保有者は同数のビットコインキャッシュをタダで受け取り、その後ビットコインキャッシュは一時1000ドル超の値がついたからだ。これを取引所で売却した人は「棚ぼた」で利益を得ることができた。

 ビットコインキャッシュが分裂した後の本家ビットコインも値下がりするどころか価格は2倍以上に値上がりし、21日には一時6000ドルを突破して最高値を更新した。「二匹目のドジョウ」を得ようと、個人などがビットコインを買い上がっていったからだ。

 理屈では、分裂前の価値と分裂後の2つを足した価値は同じはず。それでも値上がり期待の投機マネーの流入で価格が上昇していく様子は、2000年代前半に旧ライブドアが繰り返した株式分割を材料に同社株が急騰した「株式分割バブル」をほうふつとさせる。

 一連の分裂を主導しているのは、「ブロック」と呼ぶ電子台帳に取引データを記録することで報酬のビットコインを得る「マイナー(採掘者)」と呼ばれる専門業者だ。

 なぜマイナーは分裂を主導しているのか。ビットコインの設計図である「ソフトコード」はネット上で一般に公開されており、コードをコピーして手を加えれば簡単に新通貨を作れる。分裂させれば競合するマイナーが減るため、報酬を多く得られる可能性が高まる。

 8月のビットコインキャッシュ分裂時は保有者たちの資産価値を保護するため金融庁が取引所に新通貨の取り扱いを推奨した。海外では顧客に新通貨を付与しなかった取引所が訴えられた例もあり、取引所は新通貨を扱わざるをえないのが実情だ。これに味をしめたマイナー主導で分裂計画が相次いでいる面もある。

 24日に始まったビットコインゴールドの分裂を主導しているのは「ライトニングASIC」という香港に拠点を置くマイナーだ。分裂前にあらかじめ自社でマイニング(採掘)を実施して大量のビットコインゴールドを保有しているとされ、「あまり筋が良くない」(ある仮想通貨取引所の幹部)との見方もある。

 9月には中国や韓国が仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)を相次いで禁止した。詐欺師が実態のないビジネスで個人を呼び込み、資金調達する懸念が拭えないからだ。「ICOを封じられた詐欺集団が今度はビットコインの『分裂ビジネス』に手をつけるのではないか」と警戒する声も出ている。

11月中旬には中国本土のマイナー主導で新通貨「セグウィット2x(仮称)」の分裂が予定されている。仮想通貨ブームでビットコインの取引量が世界で爆発的に増えており、取引の承認・記録作業が遅延している。この解決策として新通貨ではブロックの記録容量を2倍に引き上げる計画といい、ビットコインはこの段階で4種類になる。

 困るのは取引所だ。利用者に新通貨を付与し、入出金に対応するためには「システム改修の負担が大きい」(ビットバンクの広末紀之社長)。システム改修を最小限に抑えるため、ビットコインゴールドについては相当分の日本円配布を検討している取引所もある。

 ビットコインは「サトシ・ナカモト」と称する現在も正体が明らかになっていない人物が2008年にネット上で発表した論文から誕生した。不特定多数の世界の参加者(マイナー)が複雑な暗号を解くことで取引を記録・承認。その作業の報酬として発行するビットコインをマイナーに付与していく、中央銀行に頼らない仮想通貨の基本的な仕組みを考案した。

 この際、サトシ・ナカモトは発行上限を2100万ビットコインと定めた。当時はリーマン・ショックによる景気の急激な悪化を受け、世界の中銀が大規模な金融緩和に踏み切ったタイミング。発行に上限があるビットコインは中銀が発行量を自由に増やすことができる法定通貨と違って、インフレで価値が減らないのが利点とされてきた。

 だが実際はサトシ・ナカモトの狙いに反して分裂が相次いでおり、ビットコインの発行量はなし崩し的に増える一方だ。皮肉なことに、その増殖を支えているのは金融緩和が生んだ値上がりのみを狙う投機マネーだ。カネ余りが支える「分裂バブル」は、ビットコインが寄って立つ土台そのものを危うくしている。(花田幸典)