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WUNDERKAMMER

申す。

2017.10.29 06:04

これは私が祖母に聞かされた昔話で、母が田舎にいた頃に、母の祖父(曾祖父?)に聞いたお話です。


母は中国地方にある小さな村で生まれ育ったのですが、

その村の裏の山には主(土地神)がいて、村人は年に数回お供えをしていたそうです。

そのお供えには、村の男が二人で向かうのですが、山へ入る前に、

『○○○○(むにゃむにゃ~と母は言ってました)申すか?申さぬか?』

『申す!』

と、おまじない(?)みたいな掛け合いをしていくらしいです。

ちなみに、山の主とは猿の妖怪(老猿?)で、目が合うと襲い掛かってくるそうです。

(普通の猿でも、目が合えば襲い掛かってきそうですがw)

万が一山で主に遭遇した時には、

目を合わせずに『申す!』と言うと、退散していくとの言い伝えがあるそうです。

妖怪は自分の正体がばれると力を失うらしいく、

申(猿)を『申す』に変えて呼んでいたのではないかと、母は言ってました。(お前は猿だ!って意味なのかな)


その村には、別の村から嫁にきた女が一人居ました。

ある日、その女が行方不明になったそうです。

村中でその女を捜索したところ、山のふもとで見つかりました。

女は体中に引っかき傷を負っていて、髪の毛は毟り取られ、

片目は潰れ、もう一方の目もえぐられていたらしいです。

村の老人はそれを見て、山の主さんと目を合わせてしまい、襲われたんだろうと言いました。


村人達は昔から山の恐ろしさを教えられているので、迂闊に山に入ったりはしなかったらしいのですが、

その女は好奇心が勝ってしまったのでしょう。


女はなんとか一命は取り留めたそうですが、

よほど怖かったのか、意識を取り戻した時、うわ言のように「申す…もうす…」と言っていたそうです。


恐怖のあまり気が触れたのか、それ以来、その女の前で山の主の話をすると、

狂ったように「申す!申す!」と繰り返すようになってしまったそうです。

ところが、村の子供達はそれを面白がり、女の旦那が仕事に出ている間にその女のところへ行き、

「やまぬしさん!やまぬしさん!」と、面白がって脅かしていたそうです。

その心労に絶えかねたのか、女はついには首を吊って自殺してしまったそうなのですが…


村に異変が起き始めたのは、それからしばらくした頃だそうです。

村に女の霊が現れるようになったそうで、

驚いて声を出したり物音を立てたりすると、髪をつかまれ、目玉を潰された後に殺される。

静かにしていれば何もしてこないそうなのですが、

両目の潰れた女の霊のあまりの恐ろしさに、発狂してしまう者も居たそうです。


恐れおののいた村人は、女の怒りを鎮める為に、

山の反対側の村はずれに社を建て、村人全員の髪の毛と一緒に祀ったということでした。

この話を聞いた私は、母におまじないを聞こうとしましたが、母の祖父が、

「このまじないを知ってる奴の所にも、女は現れる。

 社のある村の中に居れば、滅多なことは無いが、

 女のお前は、嫁入りして村を出ていくだろうから、知らない方が良い」

と、教えてくれなかったそうです。