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「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 頼りないが人望があるという「源頼朝像」をうまく演じる大泉洋さんの演技力

2022.01.18 22:00

「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 頼りないが人望があるという「源頼朝像」をうまく演じる大泉洋さんの演技力



毎週水曜日は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とその時代について、私なりの考察をしている。ちなみに、私自身歴史小説を書いているものの、実際のところ、鎌倉時代や源平合戦に関する小説は全く書いていない。そのために、この時代に関しては「小説家特有」というような感覚の内容をご披露することはできないのであるが、それでも、今年の大河ドラマがこのようになっているので、やはり大河ドラマをフォローしておこうと思う。

今回の内容の特徴は、後に源頼朝を支える北条義時が、頼朝と出会うところから始めている。それも、出会いの時の印象は良くない。頼朝に熱を上げているのは兄の北条宗時であり、そして姉の北条政子である。この宗時と政子に引きずられるように頼朝煮仕えることになる。

脚本家、三谷幸喜の解釈では「頼朝」という人物は「正体を明かさない、心の内を見せない。表面上は情けない男でありながら、内心はしっかりとして真の通った人物というような感覚で描かれている。さすがに三谷幸喜の脚本だけあって、常にテンポが良く、なおかつ笑いが隠れている作りになっているが、その中に、様々な当時の様相や残酷性、そしてその厳しい世の中の中だからこそ「笑い」を重要視するということがあるのではないか。

今回の前半の悲劇のヒロインが、新垣結衣さん演じる「八重」であろう。一応曽我物語などでは、伊東祐親の娘でありながら源頼朝との間で子供を作り、そしてその子供を八重の父である伊東祐親に殺されてしまう。そのうえ、源頼朝に見捨てられるというものである。

今回、頼朝の口から「後ろ盾がなければならない」ということを言い、伊東祐親が自分を殺そうとしたということから、伊東は頼れないとして、八重を捨てたということになる。頼朝のような「流人」にしてみれば「自分の感情に流されることなく、冷静に、自分の後ろ盾になる一族を探す」ということであり、その後ろ盾となることの証拠が子供であるということになる。そのような冷徹さを持ち合わせたことから、源頼朝は、幕府を作ることができたのであろう。

それにしても、八重にしても、小池栄子さん演じる北条政子にしても、この平治の乱で負けた源氏の後継者であり、なおかつ、時の権力者である平清盛に目を付けられている人物でありながら、良く好きになるものである。逆に言えば、源頼朝というのはそれだけ魅力のある人ブルであったのであろう。少なくとも三谷幸喜さんにはそのように映ったのではないか。

鎌倉殿の13人:大泉洋“頼朝”が「人たらし」発動! 小栗旬“義時”も完落ちの「ははっ!」

 俳優の小栗旬さんが北条義時役で主演を務める2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(総合、日曜午後8時ほか)第2回「佐殿の腹」が1月16日に放送された。同回の終盤、頼朝(大泉洋さん)が義時(小栗さん)に、清盛(松平健さん)を倒し、後白河法皇(西田敏行さん)の支えとなった世を正す、大望を明かすシーンが描かれた。

 そのために、義時の姉・政子(小池栄子さん)と北条の力が必要と説く頼朝は、義時に向けても「お前だけには話す」「お前はわしの頼りになる弟じゃ」と“殺し文句”。それまでは頼朝に振り回されて、うんざり気味だった義時も、思わず「ははっ!」と服従の態度を見せる……という展開だった。

 SNSでは「義時、承服してしまう」「義時、攻略される」「義時、取り込まれ完了」「義時、完落ち」などと視聴者は反応。また「頼朝の人たらしっぷりたるや!」「頼朝、すごい人たらし」「頼朝は天性の人たらしやな」「佐殿の人たらしっぷりに感動」「最初、頼朝と大泉洋さんのイメージがピンとこなかったけど、人たらしの才能という方面でガッチリつながった」といった感想が次々と書き込まれた。

 第2回では、罪人・源頼朝を処断しようと兵を率いて迫る伊東祐親(浅野和之さん)。しかし、義時の父・時政(坂東彌十郎さん)が頼朝をかばって対立。両勢力が一触即発の状態となる中、平清盛(松平健さん)を後ろ盾に、相模の武士団を束ねる大庭景親(國村隼さん)が現れる。

 一方、目まぐるしい展開に振り回される義時は、姉・政子(小池栄子さん)らの助けを受けて頼朝と富士の山すそにいた。だがそれもつかの間、弓矢が放たれ緊張が走る……。

「鎌倉殿の13人」は61作目の大河ドラマ。脚本は、2004年の「新選組!」、2016年の「真田丸」に続き3度目の大河ドラマ執筆となる三谷幸喜さんで、野心とは無縁だった若者が、いかにして武家の頂点に上り詰めたのかを描く、予測不能のエンターテインメント作だ。

2022年01月16日 MANTANWEB

https://mantan-web.jp/article/20220116dog00m200023000c.html

 さて、当時の関東には、多分平清盛に反発する者が少なくなかったと思われる。もともと、関東は平家の勢力が多く、平国香などが現在の千葉県や茨城県のあたりを治めていて、そこに平家から派遣されたのが平将門であった。そこから平家の勢力が少なくなり藤原系列が入り、その後、前九年後三年の役から源頼義・義家を中心にした源氏の勢力が根を張る。その頃から藤原が東北(平泉)・源氏が関東・平家が西国というようなすみわけになっていたのである。しかし、元が平国香などの「平家」があったことから、伊東祐親・北条時政・大庭景親(國村隼)いずれも「平家系」の豪族である。ここまで出てきた中で比企能員(佐藤次郎)と比企尼(草笛光子)が藤原秀郷の系列ということになる。

 このような状態であったので、平清盛に対して「自分たちの方が古い」というような感覚を持っている人は少なくなく、清盛に恩がある人と、反発する元から地元にいる坂東武者が色分けされる。もちろん、そのような感情を持っていてもそれほど表立って反発はしない。しかし、そのような感情があるから、源頼朝は生きてこれたということになろう。しかし、それでは平清盛を討つ、つまり、頼朝にとって父や一族の復讐をし、そして源氏を再興するということはできない。

 この平清盛に対する不満をしっかりと集結し、その旗頭になるということが重要なのである。そのための力が「女性と子供」であったということになろう。そのしたたかさ、というよりは「人の心」特に「女性の心」をうまく利用するということを、三谷幸喜は絶妙間合いで書いている。そして、そのような「人たらし」が、他の武将たちという「男」にも通用するということを見せたのが、北条義時であったのではないか。

 そして、今回の最終場面でその「人たらし」をしっかりと描いている。

 そのために、義時の姉・政子(小池栄子さん)と北条の力が必要と説く頼朝は、義時に向けても「お前だけには話す」「お前はわしの頼りになる弟じゃ」と“殺し文句”。それまでは頼朝に振り回されて、うんざり気味だった義時も、思わず「ははっ!」と服従の態度を見せる……という展開だった。<上記より抜粋>

 「お前だけに話す」というのは、今では「ここだけの話はどこでもみんな知っている」と揶揄されるような内容であろう。しかし、現在でも普段「掴み所のない単なるダメ男」が、急に真剣な表情をして、大志を抱いていることを話せば、誰も見直すことになる。昭和の文豪、太宰治が「人間失格」の中で、普段ダメな人を尊敬にも似た眼差しで見るのは、まさにそのようなものなのかもしれない。単純に、人間というのは、一瞬見せる鋭さにやられた場合、宗教的な威力で相手を心服させてしまうものである。それをうまく見せている。

 小説家・脚本家というのは、よほど「人間」を観察している者でなければできない。義時のような人物が、どうして頼朝に一生仕えると考えたのか。そのような人物とはどのような人なのか。それこそが、三谷幸喜の筆の力なのではないだろうか。そして、それを演じる大泉洋さんの演技力も素晴らしいといえるのかもしれない。