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令和4年政府予算案について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

2022.01.19 10:07

 国会にいこっかい!はい、通常国会が始まりました。

昨日は参議院浜田聡議員のお手伝いに上がり、令和4年政府予算案について考えてみました。

 昨年の12月24日に令和4年政府予算案が閣議決定されていました。いよいよ第208回国会が開会しましたので岸田内閣が発足して初めての本予算の審議が本格化します。とはいえ、見どころや目玉政策の見当たらない予算案のような気がします。理由は後述しますが、私の私見としては残念な予算組となりました。大まかなフレームを見てみます。

資料:財務省作成、令和4年度予算政府案

 上記のように前年対比0.9%増の約107兆円の歳出を見込む予算です。岸田総理は自民党の総裁選で新自由主義からの政策転換、金融所得課税の見直しによる成長と分配、所得倍増計画など積極的な経済政策を執ると多くの国民は期待していたと思われます。ところがどうでしょう。聞くとみるとは大違い、まさに朝令暮改な予算案が示されました。岸田総理が手のひらを返したのではなくリーダーシップを発揮するだけの求心力を持っていないということなのだと思います。

 マスメディアの反応を見てみます。

日本経済新聞「政府は22年度予算案を巡り、20日成立した過去最大の21年度補正予算(35.9兆円)と一体で編成した。執行期間から「16カ月予算」と位置づけており、コロナ禍で切れ目ない財政出動を掲げる。だが当初予算の伸びを抑える一方で、各省庁の要求の受け皿として補正予算を膨らませる手法が常態化しており、歳出の膨張に歯止めがかからない。」

 確かにその通りだと思います。政府の手法として補正予算と連動するか、補正予算を見込んだ本予算組が常態化しつつあるように感じます。

読売新聞「国の予算の膨張に歯止めがかからない。本当に必要な予算は何かを精査して効率的な支出に努めなければ、国民の将来不安は増すばかりだ。」

国の予算とは既に入り口から間違った考えです。あくまでも政府の国家運営にあたる政府予算案です。国家の繁栄を期すための政府の発展的な予算執行は当たり前のことであり、予算とは膨張して然りなのです。逆に政府予算の縮減は国家の繁栄の抑止を意図するものと受け取れるのではないかと思います。財政出動は国民にとって期待をさせることはあれど不安が増すという論調は私には理解しがたいことです。

朝日新聞「21年度の当初予算から0.9%(9867億円)増え、10年連続で過去最大を更新した。税収も過去最高を見込み、国の借金である国債の新規発行額は減るが、歳入の3分の1以上を借金に頼る危機的な状況は変わっていない。」

 予算規模が年々増加することは当然のことです。国家予算が年々縮小したりしたら日本国はどうなってしまうのでしょうか。背筋が凍る思いがします。同時に毎年、赤字国債を発行することが借金に頼る危機的状況だと表現しています。政府の負債は国民の資産なのですから危機に陥りようがありません。朝日新聞は現状の日本経済を過度のインフレが進行しているという認識なのかもしれません。そうだとすると益々致命的なことです。

毎日新聞「当初予算案としては2年ぶりに国債の新規発行額を減少させるが、歳出総額の約3割を国債で賄う「借金頼み」の財政運営は変わらない。」

 毎日新聞の論調も同業他社と横並びです。赤字国債の発行に否定的な論調です。今日よりも明日、明日よりも明後日、と前に進む、発展を期すのは当然です。予算が年々増加させるためにも国債の発行は必要な手段です。これが税務省の矢野事務次官が主張するバラマキだというのであれば国家の発展は見込めませんし、日本と日本円の国際的な競争力の低下を招く結果となり得るでしょう。伊藤博文が初代総理大臣に就いた1885年の明治政府発足時から政府の国債残高546倍(実質)になっているのです。それでも財政破綻は起きていません。自国通貨建ての国債のデフォルトは起き得ないことは財務省自体が認めています。

NHK『歳入全体のうち国債で賄う割合、いわゆる「公債依存度」は34.3%と、依然として国債発行に頼る厳しい財政運営が続いています。慶應義塾大学の土居丈朗教授は、「国債など公債への依存度が新型コロナの感染拡大前の水準に戻ったという意味では正常化が進んだが、依然として3分の1以上を借金でまかなっていて、将来世代に負担を回さないためには依存度をもう一段下げていく必要がある。コロナ対策のためにこれまでに相当多くの借金をしてしまったのでこれが今後、重くのしかかってくる。光と影の部分が両方ある予算案で、まだ財政健全化の入り口に立ったばかりだ」として、これからが財政再建を進められるか、重要な局面になるという認識を示しました。』

 NHKも他の報道機関と同様に国債の発行に否定的です。期せずして今年度予算案では公債依存度は下がっているのですが厳しい財政運営だと断じています。緊縮財政派の専門家を通じて、公債の発行は将来世代への負担であるかのように伝えています。財政健全化だとか財政再建という言葉を用いて財政破綻に対する危惧を煽っている印象を受けます。このような論調に乗せられて緊縮財政を是とすると、日本の国際競争力は低下し、国民の生活水準の維持すら困難になっていくのではないかと思います。当然、安全保障上の問題にも影響を及ぼすと思います。そもそも税務省は国債のデフォルトは起こりえないと明言しています。

 上記のようにマスメディアのほぼすべてが一様に政府の財政危機を煽るような報道を行っています。なぜ多くのメディアがそのような論調に終始するのでしょうか。それは恐らく財務省のレクチャーをそのまま報道していることによるのだと思います。

資料:財務省、日本の財務状況

 上記は財務省が作成したいわゆるワニの口というものです。一般会計歳出と一般会計税収を利用して図を作成しています。一般会計歳出には国債関連費が含まれています。一方、一般会計税収には国債は含まれません。つまり、一般会計歳入ではなく一般会計税収を利用して図を作成することで意図的にワニの口は開くようになるというカラクリです。決算上は歳入と歳出はイコールになります。ちなみに、2020年はコロナ対策の為に巨額の国債を発行していますが、その結果、税収も過去最高を記録しています。つまり、積極的な財政出動によってコロナ禍の厳しい経済環境であっても税収は突出した伸びを示すのだということが証明されたことになります。

資料:財務省、世界の主な国の債務残高

 上記の図も疑問に思う点があります。財務省は日本の国債残高が世界に突出して多いということを言いたいのでしょう。実際にはそのようなことはありません。上記の図では日本の国債残高がGDP比2.56倍に膨れ上がっているように表記されています。しかし、実際にはそうではありません。アメリカやイギリスやカナダは中央銀行(通貨の発行権を持った銀行)との連結した債務残高が計上されています。日本の国債残高のうち、日本銀行が48%を保有していることから他国同様に日本銀行の国債保有残高を連結すると約123%になり、GDP比でイタリアやアメリカ以下の数値になるのです。決して日本の国債残高が世界で突出して多いということはありません。これは財務省が恣意的にそのように国民の危機感を煽っているのだと思います。ただし、上記表の中でイタリアやドイツのように自国通建ての国債ではない国はギリシャのようにデフォルトが起きないという保証はないので注意が必要です。イタリヤやドイツはユーロ建てなので自国通貨ではありません。変動為替相場制の自国通貨建ての国債にデフォルトの可能性はありません。

資料:財務省、マネタリーベースの推移、日本銀行出典

資料:総務省、消費者物価指数の推移

 上記の図より日本銀行は市場より国債を買い取る形で2000年から2019年に至るまでに500兆円以上の市場への通貨供給を行っています。その結果、ハイパーインフレが起こるかと言えばそうではありません。2015年から2020年の間で物価上昇は微増の2.2%に留まっています。

資料:財務省、長期金利の推移、IMF出典

 上記の図より日本の長期金利はゼロ金利からマイナス金利のままです。直近のインフレ率もほぼゼロです。500兆円のマネタリーベースの上昇があっても緊縮財政論者の言うような金利の高騰もなければハイパーインフレも起こりません。何も変わらないのです。何も変わらないということは経済発展もないということです。財政出動がむしろ足りないということではないでしょうか。

 財務省はこのように公式見解を発表しています。「日・米などの先進国の自国通貨建ての国債のデフォルトは考えられない。日本は変動為替制の下で強固な対外バランスもあって国内金融政策の自由度ははるかに大きい。更に、ハイパーインフレの懸念はゼロに等しい」これは税務省が公表した外国格付会社に向けての公式文書です。

 国民に対して財政破綻の危機感を煽るのも財務省ですし、日本政府の国債のデフォルトの可能性が皆無であることを表明しているのも財務省です。要するに財務省は二枚舌を使い分けているということになります。

 財務省の公式見解と裏腹の内容を意図する論文を矢野政務次官がなぜ発表したのでしょうか。その答えは案外簡単なものだと思います。旧大蔵省から財務省に綿々として受け継がれるイデオロギーのようなものがそうさせているに違いないと思います。税収を向上させて歳出を減らすことが是とされてきたのでしょう。歳出を少なくした者が評価されて来たし、税収を増やしてきた者が評価されて来たのです。矢野政務次官の誕生はその結果に過ぎないのです。

 そもそも税とは国家運営の財源ではありません。税の役割は景気の調整弁です。市場が過熱しすぎると税をもって冷却を図ります。市場が冷え込むと積極的な財政出動と共に税の軽減で景気を喚起します。税収を主とした歳入によって政府予算が組成されるということではないのです。支出に適った財源を税などの歳入で充てるという発想は管理通貨制度には必要はありません。歳出に必要な概念はインフラリスクの調整なのです。

 政府は日本銀行に国債に応じた利息の支払いを行っています。しかし、日本銀行は決算後に国庫に受け取った利息分を返納しています。併せて、政府は日本銀行に国債の原本の償還を行っていますが、償還と同時に同額の借り換えも行っています。実質的に利払いも元金の償還もしていない状況です。それにも関わらず財政破綻論者が唱えるようなハイパーインフレも金利上昇の兆しもうかがえません。何も起こっていないのです。

 政府の負債は国民の資産です。B/Sはコインの裏表です。政府の負債を削減することは国民の資産を奪うことにもなるのです。プライマリーバランスの黒字化というのは国民の財産の赤字化ということに外なりません。大平内閣以降のグローバリズムに徐々に起こされて来た結果が共同体意識の希薄化に至ったのでしょう。グローバリズムは緊縮財政を進めることで国富を削いでしまっているのです。その行き着いた先の目標がプライマリーバランスの黒字化目標ということのような気がします。

 国家は変動為替制の下で国際バランスを念頭に着実なインフレによる経済発展を図らないといけません。それには需要の器の拡大を図り、積極的な財政出動によってデフレ脱却を早期に達成しないといけません。政府の予算の組成の役割の一つは重要の拡大と適正な通貨の供給です。そして、税の役割はその調整弁でしかありません。

 さて、取り留めもなくなりましたが、令和4年政府案に対する私見としてまとめたいと思います。岸田首相は新自由主義からの転換を主張していましたので緊縮財政から積極財政に転ずるものと期待していました。政府案は残念なことにこれまでの緊縮財政を踏襲する形になっていると思います。日本の経済成長率は1.5%です。中国は7.6%、韓国は2.9%、カナダは2%、アメリカは1.7%です。岸田政権には積極的な財政出動で世界の経済成長に追いついていかなければいけないと思います。GDP世界第三位というのも束の間、このままではあっという間に主要先進国から置いてきぼりになります。隣国、中国の経済成長が目覚ましく、アメリカ一強の時代の終焉を迎えています。中国・ロシアの脅威に脅かされないように国力の強化に岸田政権は取り組まなければなりません。その為には類を見ない積極財政に転じることが必要不可欠だと考えていましたので令和4年政府予算案には随分と残念な印象を抱きました。

 日本が中国の属国にならないようにプライマリーバランスの黒字化目標の破棄、緊縮財政の転換、消費税の廃止などの政策が必要だと思います。債務は貨幣発行、貨幣想像であることは財務省も認めていることです。将来世代へのつけまわしでは決してありません。

 一昨年に政府は13兆円の国債を発行して国民に特別給付金を支給しました。この政府の負債によって国民の財産は減ったでしょうか。減っていないどころか給付金を受け取った国民の財産は増えたのです。政府の負債は国民の資産なのです。未だに政府が国民の財産を借りることを政府の負債だと言う人がいます。その誤解に引っ張られて、負債を抑制するために緊縮財政をとることとなってきたのです。岸田首相は積極財政に転じるような期待を持たせましたが、プライマリーバランスの黒字化目標を容認する意向のようです。そうであれば小泉政権以来の新自由主義路線の転換は期待できません。小泉政権自身がプライマリーバランス黒字化目標を設定したのですから。日本が世界の主要国の経済発展から落ちこぼれてしまわない為にも早々に路線転換を図らないといけません。

 最後に余談ですが、緊縮財政の余波はあちらこちら表面化しています。水道管などの老朽化や橋梁の耐震化の遅れや道路整備や維持の不足、新幹線網の整備の遅れなど国民生活に不利益をもたらしています。緊縮財政が国民の共有財産を棄損しつつあると言えるのかもしれません。


以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。